ビジネス英会話の「質」を上げる!プロが実践する交渉・説得の論理構造と英語表現

「交渉で英語がうまく伝わらなかった」「説得しようとしたら、相手に誤解されてしまった」――ビジネス英会話の場面で、このような経験はありませんか?多くの学習者は、フレーズ集や単語帳で表現を覚えることに力を入れますが、それだけでは本当に相手を動かす「質の高い」コミュニケーションには至りません。この記事では、単なる「伝わる英語」を超えて、相手を「納得させ、行動を促す」ための、プロが実践する論理構造と英語表現の核心に迫ります。

目次

なぜフレーズ集だけではダメなのか?ビジネス英会話の「質」とは

「値下げをお願いしたいのですが」と言うフレーズは覚えていても、なぜ値下げが必要なのか、その背景と具体的な理由を筋道立てて説明できない。これは多くの学習者が直面する壁です。フレーズ集は確かに便利なツールですが、それらはあくまで「部品」に過ぎません。ビジネスの現場、特に交渉や説得の場面では、これらの部品を「なぜ」「どのように」組み立てるかが全てです。

「伝わった」と「納得してもらった」の決定的な違い

ビジネス英会話、特に交渉や説得の目的は、単に情報を「伝える」ことではありません。最終的なゴールは、相手との合意形成や、相手の行動変容を促すことにあります。

  • 「伝わった」コミュニケーション: 自分の言いたいことが相手に理解された状態。例:「I think we need a discount.(値引きが必要だと思います)」→ 相手は「この人は値引きを求めている」と理解する。
  • 「納得してもらった」コミュニケーション: 自分の主張の背景にある「理由」や「論理」を理解し、同意や行動につながった状態。例:「Given the increased order volume and our long-term partnership, we believe a 5% discount is justified.(注文量の増加と長期的なパートナーシップを考慮し、5%の値引きは妥当であると考えます)」→ 相手は「なぜ値引きが必要なのか」を理解し、検討する材料を得る。

質の高いビジネス英会話は、相手の頭の中に浮かぶ「なぜ?」「どうして?」に、事前に答えを用意し、論理的に提示するコミュニケーションです。

交渉・説得に求められるコミュニケーションの3層構造

効果的な説得や交渉は、単一の要素で成り立つものではありません。成功するコミュニケーションは、以下の3つの層が重なり合って構成されています。

  • 第1層:論理(Logic)
    主張の根拠となる事実、データ、具体的な理由。筋道の通った説明がここに該当します。「Because…(なぜなら)」で始まる部分がこの層を構成します。
  • 第2層:感情(Emotion)
    言葉の裏側にある感情や、相手の感情に訴えかける要素。共感(「I understand your concern…」)、ビジョンの共有(「This will lead to a win-win situation…」)などが含まれます。
  • 第3層:信頼(Credibility)
    話し手自体に対する信頼感。専門性、誠実さ、一貫性などから構築され、これがなければ論理も感情も響きません。
知っておきたいこと

フレーズ集だけに頼った会話は、主に「第1層:論理」の表面をなぞるだけになりがちです。しかし、相手を真に動かすには、この3層すべてを意識して言葉を組み立てる必要があります。次のセクションからは、この「3層構造」を英語でどう具体化するのか、その論理パターンと表現を詳しく見ていきましょう。

説得の基本構造:PREP法を英語で使いこなす

相手を動かす説得には、明確な「構造」が必要です。日本語では結論を最後に持ってくる「起承転結」が好まれることもありますが、英語のビジネスシーンでは「結論ファースト」が鉄則。まず結論を提示し、その後に理由と根拠を積み上げるPREP法は、この原則を体現した最も実践的な論理構造です。ここでは、この構造を英語で自然に組み立てるための表現をマスターしていきましょう。

英語ネイティブも無意識に使う「結論ファースト」の文化

英語圏のビジネス環境では、結論や要点を最初に述べることが効率的で礼儀正しいとされます。時間を尊重し、相手の理解を助けるためです。PREP法はこの「結論ファースト」の文化を、誰でも再現できるシンプルなフレームワークに落とし込んだものと言えます。

PREP法とは?

Point(結論)→ Reason(理由)→ Example(具体例)→ Point(結論の再提示)の頭文字を取った、シンプルで強力な論理展開の型です。この順番で話を組み立てることで、相手に伝わりやすく、説得力のある主張が可能になります。

この型を知っているだけで、会議での発言やメールでの提案が格段に明確になります。次に、各ステップで使える具体的な英語表現を見ていきましょう。

PREP法の各要素を英語で表現する核となる動詞・接続詞

PREP法の流れをスムーズに英語でつなげるには、各ステップを導く「つなぎ言葉」が鍵となります。以下に、実践で使える表現をまとめました。

STEP
Point:結論を述べる

会話や議論の冒頭で、自分の主張を明確に述べます。

  • I propose that we extend the project deadline by one week. (プロジェクトの締め切りを1週間延長することを提案します)
  • My recommendation is to adopt the new software. (新しいソフトウェアを採用することをお勧めします)
  • I believe a price adjustment is necessary. (価格調整が必要だと確信しています)
  • The key takeaway is that we need to focus on customer feedback. (重要な結論は、顧客フィードバックに集中する必要があるということです)
STEP
Reason:理由を説明する

結論の後には、必ず「なぜなら」と理由を付け加えましょう。根拠を示すことで説得力を高めます。

  • This is because the current timeline is too tight for quality assurance. (これは、現在のタイムラインでは品質保証に十分な時間が取れないためです)
  • The reason is that it will significantly improve our workflow efficiency. (その理由は、ワークフローの効率が大幅に向上するからです)
  • There are two main reasons for this. First,… Second,… (これには主に2つの理由があります。1つ目は…、2つ目は…)
STEP
Example:具体例・データを示す

抽象的な理由だけでは弱いので、具体例や数字で補強します。「例えば」の一言が説得力を決定づけます。

  • For instance, our competitor saw a 20% increase in productivity after implementation. (例えば、競合他社は導入後に生産性が20%向上しました)
  • To give you a concrete example, last quarter, similar delays led to a 15% drop in customer satisfaction. (具体的な例を挙げると、前四半期、同様の遅延により顧客満足度が15%低下しました)
  • A case in point is the recent pilot project, which was completed ahead of schedule. (良い例が最近のパイロットプロジェクトで、予定より早く完了しました)
STEP
Point:結論を再提示する

最後に、説明した理由と具体例を踏まえて、最初の結論を再度、明確に述べます。これにより、主張が完全に相手に定着します。

  • Therefore, I strongly recommend extending the deadline. (したがって、締め切り延長を強くお勧めします)
  • For these reasons, moving forward with the new system is our best option. (これらの理由から、新システムへの移行が最善の選択肢です)
  • In conclusion, a strategic price adjustment is essential for our market positioning. (結論として、市場でのポジショニングのためには戦略的な価格調整が不可欠です)

PREP法の練習は、初めは紙に書いてから話すと効果的です。頭の中で「Point→Reason→Example→Point」の流れを意識するだけで、発言の説得力が劇的に向上します。

さらに深く:交渉を有利に進める「問題解決型」論理構成

PREP法が「自分の主張を効果的に伝える」ための基本構造だとすれば、より高度な交渉の場面では、「相手の立場に立った問題解決」を提案する姿勢が決定的な差を生みます。一方的に「私はこうしたい」と主張するのではなく、「私たちが共に直面している課題はこれで、それを解決するにはこれが最善です」と導く論理構成を身につけましょう。このアプローチは、Win-Winの関係構築に不可欠です。

この問題解決型の思考を、英語で体系的に表現するための強力なフレームワークが「SCQA」です。これは、コンサルティングの現場などで広く使われる論理展開の型で、相手を自然にあなたの提案へと誘導します。

SCQAフレームワークとは?

論理的な提案や問題解決のストーリーを構築するための4ステップモデルです。状況を共有し、問題を明確にし、課題(問い)を設定し、最後に答え(提案)を示す流れは、相手の理解と納得を深めます。

「相手の課題」から話を始める心理的効果

交渉の冒頭でいきなり自分の提案をぶつけると、相手は防御態勢に入ってしまいます。これに対し、「私たち双方が認識している現状」や「共通して抱えている問題」から話を始めることで、あなたは「敵」ではなく「共通の課題を解決するパートナー」として認識されます。このわずかな心理的ポジショニングの違いが、その後の話し合いの雰囲気と結果を大きく左右するのです。

「値下げをお願いしたい」ではなく、「コスト削減という共通の目標を達成するため、供給体制の効率化についてご提案があります」という切り出し方。

SCQA(状況・問題・課題・答え)フレームワークの英語実装

それでは、SCQAの各ステップを、実際のビジネス英会話でどのように英語で組み立てていくのか、具体的な表現とともに見ていきましょう。

STEP
Situation (状況) – 現状認識の共有

まず、相手と前提を共有します。対立点ではなく、合意できる事実から始めることがポイントです。

  • As we both see, the market has become increasingly competitive. (ご存知の通り、市場の競争は激化しています。)
  • We are aligned on the goal of improving customer satisfaction. (顧客満足度の向上という目標では、私たちの認識は一致しています。)
  • Based on our current agreement, we have been collaborating for the past two years. (現在の契約に基づき、私たちは2年間協業してきました。)
STEP
Complication (問題) – 障壁・問題点の指摘

次に、その現状の中で生じている具体的な問題や障害を明確にします。これは「誰かのせい」ではなく、客観的な事実として提示します。

  • However, the challenge we face is that our production costs have risen by 15%. (しかしながら、私たちが直面している課題は、生産コストが15%上昇したことです。)
  • The complication here is the delay in the supply chain, which affects both of us. (ここでの問題点は、サプライチェーンの遅延であり、これは双方に影響を及ぼしています。)
  • This has led to an issue where we are struggling to maintain our current profit margins. (この結果、現在の利益率を維持するのに苦労しているという問題が生じています。)
STEP
Question (課題) – 解決すべき核心的な問いの設定

状況と問題から、自然と導き出される「では、どうするべきか?」という核心的な問いを投げかけます。これにより、次の「答え」への期待を高めます。

  • So the question becomes: how can we address this cost issue while continuing our partnership? (そこで課題はこうなります:パートナーシップを継続しつつ、このコスト問題にどう対処するか?)
  • That raises a key question: what is the most sustainable solution for both parties? (これにより重要な問いが浮上します:双方にとって最も持続可能な解決策は何か?)
  • The real issue we need to solve is how to improve efficiency without compromising quality. (私たちが解決すべき真の課題は、品質を損なうことなく効率をどう改善するかです。)
STEP
Answer (答え) – 具体的な提案の提示

最後に、設定した問いに対するあなたの答え(提案)を提示します。ここで初めて自分の主張を前面に出しますが、それはS→C→Qの流れによって必然性を持ったものとして受け止められます。

  • That’s why I suggest we explore a revised pricing model based on annual volume. (だからこそ、年間の取引量に基づいた改訂された価格モデルの検討を提案します。)
  • My proposed solution is to implement a new logistics system that reduces lead time by 20%. (私の提案する解決策は、リードタイムを20%短縮する新しい物流システムを導入することです。)
  • Based on this analysis, the best way forward would be to extend the contract term in exchange for cost stabilization. (この分析に基づけば、最善の道は、コスト安定化と引き換えに契約期間を延長することでしょう。)

このSCQAの流れを、一つの具体的なシナリオに当てはめてみましょう。取引先との定期協議で、単価の見直しを提案する場面です。

サンプルダイアログ:契約更新交渉

あなた: (Situation) Thank you for meeting today. First, I’d like to acknowledge the successful collaboration we’ve had over the past two years. (Complication) However, as you know, raw material costs have surged globally, which has put significant pressure on our manufacturing margins. (Question) So, the key question for us is how to navigate this cost environment while ensuring the long-term stability and quality of our supply to you. (Answer) That’s why I suggest we discuss a modest price adjustment of 5%, coupled with a commitment from our side to invest in process automation that will benefit both of us in the coming year.

(訳) 本日はお時間ありがとうございます。まず、過去2年間の実りある協業に感謝したいと思います。しかしながら、ご存知の通り、原材料費が世界的に高騰しており、当社の製造マージンに大きな圧力がかかっています。ですから、私たちにとっての核心的な問いは、貴社への供給の長期的な安定性と品質を確保しつつ、このコスト環境をどう乗り切るかです。だからこそ提案したいのは、5%の小幅な価格調整について話し合うこと、そしてその代わりに当社側として、来年度に双方に利益をもたらす工程自動化への投資を約束することです。

SCQAの最大の利点は、あなたの提案が「独りよがりな主張」ではなく、「共通の課題に対する論理的な解決策」として相手に伝わることです。この構造を頭に入れておくだけで、交渉や難しい会話での説得力が格段に向上します。

反論や異論を恐れない:建設的議論を促す英語表現

効果的な交渉や議論の場では、相手の意見に異論を唱えたり、異なる視点を提示したりすることは避けて通れません。しかし、単なる否定は相手の心を閉ざし、議論を不毛な対立に陥れてしまいます。ここでは、相手を尊重しながら自説を主張し、議論を前に進めるための英語表現を学びます。大切なのは「対立」ではなく「建設的対話」を生み出す姿勢です。

「同意できない」を建設的に伝える3ステップ

「I disagree.」と一刀両断するのではなく、相手の意見を一旦受け止め、その上で自分の視点を提示する「3ステップ」のアプローチが効果的です。このステップを踏むことで、あなたの反論は「ただの否定」から「協力的な提案」へと昇華します。

STEP
理解を示す

まずは相手の意見を理解していること、または価値を認めていることを示します。これにより、敵対関係ではなく、同じ問題に取り組むパートナーであるという姿勢を築きます。

  • I understand where you’re coming from. (あなたの言いたいことは理解できます。)
  • That’s a valid point. (それはもっともなご意見です。)
  • I see your point about [topic]. ([トピック]についてのあなたのご指摘は理解しました。)
STEP
論点をずらす・別視点を提示する

「しかし」をストレートに言うのではなく、視点や焦点を変える表現で、新たな角度から問題を捉えることを提案します。

  • However, from a different perspective, … (しかし、別の視点から見ると…)
  • That said, I’d like to look at it from the angle of [different aspect]. (とはいえ、[別の側面]の観点から見てみたいと思います。)
  • What if we approached it this way…? (もし、こういうアプローチを取ったらどうでしょうか…?)※仮定法を用いて、異なるシナリオを提案する柔らかい表現。
STEP
共通の目標に立ち戻る

議論が平行線になりそうなときは、当初の共通目標を再確認し、その達成のために最善の道は何かを問いかけます。これにより、個人の主張ではなく、チームとしての目的に焦点を合わせ直します。

  • Going back to our shared objective of [goal], I believe this alternative might serve us better. ([目標]という私たちの共通目的に立ち戻ると、この代替案の方がより役立つと信じています。)
  • Ultimately, we both want [desired outcome]. Given that, I suggest we consider… (結局のところ、私たちは両方とも[望ましい結果]を望んでいます。それを考えると、…を検討することを提案します。)

相手の意見を取り込みながら自説を強化する「Yes, and…」テクニック

インプロビゼーション(即興劇)で使われる「Yes, and…」は、ビジネスの議論でも強力な武器になります。相手の発言を否定せずに受け入れ(Yes)、その上に自分のアイデアを積み上げる(and)ことで、創造的で協調的な対話の流れを作り出します

例えば、相手が「This marketing strategy focuses on young adults.(このマーケティング戦略は若年層に焦点を当てています。)」と言ったとします。

NGな反応:「But we should also target middle-aged consumers.(でも、中年層もターゲットにすべきです。)」→「But」で始めると、相手の提案を切り捨てた印象を与えます。

「Yes, and…」を使った反応:「Yes, targeting young adults is crucial for brand growth, and to build long-term loyalty, we could simultaneously develop a complementary campaign for established professionals.(はい、若年層をターゲットにすることはブランド成長に不可欠です、そして、長期的なロイヤルティを構築するために、確立されたプロフェッショナル向けの補完的なキャンペーンを同時に展開することもできるでしょう。)」

「Yes, and…」のポイント

このテクニックの核心は、相手の意見の「土台」を承認し、それを「より高く、広くする」材料として活用することです。議論をゼロから競わせるのではなく、既にあるアイデアを共同で発展させる姿勢を示します。これは、特にブレインストーミングや創造的な問題解決の場面で威力を発揮します。

建設的議論のためには、単語一つ、接続詞一つが重要な意味を持ちます。以下の表で、避けるべき表現と推奨表現を比較してみましょう。

NG表現(対立的)推奨表現(建設的)効果・ニュアンス
You’re wrong.
(あなたは間違っている。)
I see it a bit differently.
(少し違った見方をしています。)
人格や意見そのものを否定せず、視点の違いとして表現。
But, …
(しかし、…)
At the same time, … / Having said that, …
(同時に、… / そうは言うものの、…)
「But」より柔らかく、前の意見を完全に否定しない流れを作る。
That won’t work.
(それはうまくいかない。)
I’m concerned about the feasibility because…
(…という理由で実現可能性が気がかかります。)
断定を避け、懸念事項を理由とともに具体的に提示。
No, we should do this.
(いいえ、私たちはこれをすべきです。)
Building on your idea, what if we also…
(あなたのアイデアを発展させて、もし私たちが…も加えたらどうでしょう?)
「Yes, and…」の精神。協業と創造性を促す。

反論は議論を深め、より優れた結論に導くための「栄養分」です。それを恐れる必要はありません。適切な英語表現と、相手を尊重する姿勢さえあれば、異論はあなたの信頼性とリーダーシップを高める強力なツールとなります。

実践ワーク:ケーススタディで論理構成を組み立ててみよう

これまで学んだPREP法やSCQAなどの論理構成と、その英語表現は、実際のビジネスシーンでこそ真価を発揮します。ここでは、よくある二つのシナリオを例に、「日本語で論理を組み立てる」→「適切な英語表現を当てはめる」という一連の流れを実践してみましょう。想定される反論への対応策も一緒に考えます。

ワークの進め方
  • 与えられたシナリオを読み、PREP法またはSCQAで論理構成を考えます。
  • 各ステップに対応する英語表現を選択・組み合わせ、英文を作成します。
  • 想定される反論と、それに対する応答も準備します。

ケース1: 予算削減の中で新プロジェクトを通す

シナリオ: 部門全体でコスト削減が求められていますが、あなたは顧客満足度向上と長期的な収益拡大につながる新規ツールの導入プロジェクトを提案したいと考えています。上司の承認を得る必要があります。

まずは日本語で論理の骨子を考えましょう。今回は「問題解決型」のSCQAを活用します。

  • S (状況): 現在、部門全体でコスト削減が進められており、新規投資は難しい状況です。
  • C (問題): しかし、既存の顧客対応プロセスには非効率な手作業が多く、スタッフの負担が大きく、顧客からの問い合わせ対応にも時間がかかっています。このままでは、長期的な顧客満足度の低下と、スタッフのモチベーション低下が懸念されます。
  • Q (課題): では、限られた予算の中で、これらの根本的な課題をどのように解決すべきでしょうか。
  • A (答え): その解決策として、顧客対応を自動化・効率化する「○○ツール」の導入プロジェクトを提案します。初期投資は必要ですが、長期的には人件費の削減、顧客満足度の向上、そして新しいビジネス機会の創出につながり、投資対効果は高いと考えています。
STEP
日本語の論理を英語表現に置き換える

各パートに対応する英語表現を選び、繋ぎ合わせます。

  • S (状況): I understand that we are under pressure to reduce costs across the department.
  • C (問題): However, our current customer service process involves a significant amount of manual work, which is not only inefficient but also leads to longer response times.
  • Q (課題): The key question is, how can we address these underlying issues within our current budget constraints?
  • A (答え): I believe the proposed implementation of the [Tool Name] project offers a viable solution. While it requires an upfront investment, it will significantly reduce labor costs, improve customer satisfaction in the long run, and create new revenue opportunities, resulting in a strong return on investment.

想定される反論と応答を考えよう

反論: 「今はコスト削減の時期だ。新規プロジェクトの予算はない。」

応答の論点: 短期的な支出と長期的な節約・収益のトレードオフを強調する。
英語表現例: I see your point about the immediate budget. To put it in perspective, the initial cost would be offset within [X time frame] through the reduction in manual labor hours. This is not just an expense, but an investment in our operational efficiency and future growth.

ケース2: 納期遅れのクライアントに追加費用を了承してもらう

シナリオ: クライアント側の仕様変更の連絡が遅れたため、プロジェクトの納期に間に合わせるには、チームの残業が必要となり、追加費用が発生します。この費用負担を了承してもらうための交渉です。

今回は、明確に主張を伝えるPREP法が適しています。

  • P (結論): 仕様変更に伴う追加作業に対し、追加費用のご負担をお願いしたい。
  • R (理由): 変更のご連絡を頂いた時点では、当初のスケジュールに基づく作業は完了しており、納期を遵守するためには、チームの緊急の残業(時間外労働)が必要となります。
  • E (具体例/証拠): 具体的には、[具体的な変更点] に関する[作業内容]に、想定より[時間数]多くを要します。これに伴う人件費が追加費用の内訳です。
  • P (結論の繰り返し): このため、当初の契約範囲を超える作業に対し、追加費用[金額]のご承認をいただければ幸いです。
STEP
日本語の論理を英語表現に置き換える

事実を淡々と、かつ明確に伝える表現を選択します。

  1. P (結論): Regarding the recent change in specifications, we need to request additional fees to accommodate the extra work required.
  2. R (理由): The reason is that the change request was received after we had completed the work according to the original schedule. To meet the agreed deadline, our team will need to work overtime.
  3. E (具体例): For example, the modifications to [specific feature] will require an additional [number] hours of development and testing work. The additional cost of [amount] covers these extra labor hours.
  4. P (結論): Therefore, we would appreciate your approval for this additional charge to proceed without compromising the project timeline.

想定される反論と応答を考えよう

反論: 「変更は些細なものだ。追加費用は想定外だ。」

応答の論点: 変更がプロジェクトの作業範囲とスケジュールに与えた客観的影響を示す。
英語表現例: I understand it may seem minor from your perspective. However, from a development standpoint, even a small change at this stage requires us to re-test multiple related components to ensure overall quality, which consumes significant resources. Our cost estimate is based on the actual hours needed to implement this change properly while keeping the deadline.

反論: 「では、納期を延ばせばいいのではないか。」

応答の論点: 納期延長がクライアント側にもたらす不利益を指摘しつつ、選択肢を提示する(Win-Winの姿勢)。
英語表現例: Extending the deadline is certainly an option we can consider. However, that would delay the launch of your project, which I assume has its own business implications. The alternative we are proposing allows us to stick to the original timeline by allocating extra resources. Which option would better align with your business goals?

練習のポイント

これらのケーススタディはあくまで一例です。実際には、相手の反応を見ながら柔軟に論点を組み立てる必要があります。大切なのは、「主張→理由→具体例」という一貫した流れを崩さず、かつ相手の懸念に耳を傾ける姿勢を英語で表現できることです。自分が直面しそうなシナリオで、同様の練習を繰り返してみてください。

日常から始める論理的英語コミュニケーションの鍛え方

交渉やプレゼンといった「特別な場面」だけでなく、論理的な英語コミュニケーション力は、日々の小さな積み重ねで鍛えられます。ここでは、忙しい日常業務や学習時間の中で、無理なく「論理の型」を体に染み込ませる二つのアプローチをご紹介します。

メールと短い報告から「型」を意識する

まずは、最も身近なビジネス文書であるメールと口頭報告から始めましょう。ここでの目標は、「結論ファースト」と「PREP法」を習慣化することです。大がかりな準備は不要です。今日から実践できる小さなステップを踏みましょう。

  1. 業務メールで「結論を最初の一文」に込める
    英文メールを書く際、最初の一文(Subject Lineの直後)に、そのメールの最も重要な結論や要望を簡潔に書く練習をします。詳細な背景説明はその後に続けます。
  2. 短い口頭報告をPREP法で行う
    例えば、短い会議の後や、上司に進捗を伝える際に、以下の順序で30秒程度のサマリーを英語(または日本語で論理を組み立ててから英語で)伝える練習をします。
    Point(結論):「The project is on track.」
    Reason(理由):「Because we have resolved the technical issue.」
    Example(具体例):「For instance, the new software patch was successfully applied yesterday.」
    Point(結論の繰り返し):「So, we are confident about the deadline.」
実践のコツ

最初は完璧な英語でなくても構いません。重要なのは「型」を意識することです。日本語で論理構成を組み立て、それをシンプルな英語に置き換えることから始めましょう。このプロセス自体が、あなたの論理的思考力を高めます。

独り言で「自己対話」のトレーニング

相手がいないと練習できないと思っていませんか?実は、一人でできる効果的なトレーニング方法があります。それは、「自己対話」と「要約」を組み合わせた学習法です。

STEP
ニュース記事を選ぶ

興味のある分野の短い英語ニュース記事(オンラインニュースサイト等)を一つ選びます。最初は3〜4段落程度の短い記事がおすすめです。

STEP
SCQAで要約する

記事の内容を、SCQA(Situation, Complication, Question, Answer)の構造に当てはめて、英語で独り言を言ってみます。

  • Situation(状況): 「Many companies are trying to reduce their environmental impact.」
  • Complication(問題・複雑化): 「However, switching to sustainable materials often increases costs.」
  • Question(問題提起): 「So, how can they balance sustainability and profitability?」
  • Answer(答え): 「This article suggests that long-term investment in green technology can lead to cost savings eventually.」
STEP
自分の意見を加える

要約ができたら、次は自分の意見や感想をPREP法で付け加えてみます。「I think… Because… For example… Therefore…」の流れで考えを整理します。声に出さず、頭の中で組み立てるだけでも効果的です。

この「一人トレーニング」の最大のメリットは、プレッシャーがなく、何度でも失敗できることです。論理の流れがおかしいと感じたら、すぐに組み立て直せます。この繰り返しが、本番での瞬発力につながります。

特別な時間を取らなくても、通勤中や休憩時間などのスキマ時間に実践できます。日々の小さな習慣が、いざという時の「説得力のある英語」の土台を築いていくのです。

まとめ:論理構造と英語表現でビジネス英会話の質を高める

この記事では、単なるフレーズ集を超えて、相手を納得させ、行動を促すための「論理構造」と「英語表現」をセットで学んできました。PREP法による明確な主張、SCQAによる問題解決型の提案、そして建設的な議論を促す表現は、ビジネスのあらゆる場面で応用可能な強力な武器です。

本記事のポイント
  • 質の高い英会話は、論理・感情・信頼の3層構造を意識したコミュニケーションである。
  • 英語のビジネスシーンでは「結論ファースト」が基本。PREP法を使って明確に主張を伝える。
  • 高度な交渉では、相手の課題から始めるSCQAフレームワークでWin-Winの解決策を提案する。
  • 反論は「Yes, and…」や3ステップのアプローチで建設的に行い、議論を前に進める。
  • 日々のメールや報告、一人での要約練習で論理の型を習慣化し、実践力を鍛える。

これらのスキルは一夜にして身につくものではありませんが、意識して練習を重ねることで、確実にあなたのビジネス英会話の「質」を引き上げることができます。まずは今日から、短い報告やメールで「結論ファースト」を意識してみることから始めてみてください。

よくある質問(FAQ)

PREP法とSCQAは、どのように使い分ければいいですか?

基本的には、PREP法は「自分の主張を明確に伝えたい時」SCQAは「相手と共に問題を解決する提案をしたい時」に適しています。例えば、会議での意見表明はPREP法、取引先との難しい交渉や新規提案はSCQAが効果的です。状況に応じて柔軟に使い分け、組み合わせることも可能です。

論理的に話そうとすると、英語のスピードが遅くなってしまいます。どうすればいいですか?

これは自然な過程です。まずは、日本語で論理構成を組み立て、それをシンプルな英語で表現する練習から始めましょう。頭の中で「Point→Reason→Example」の流れを思い浮かべるだけでも効果があります。スピードは、型に慣れることで次第に上がっていきます。正確で説得力のある内容を、ゆっくりでも伝える方が、速くても支離滅裂な内容を話すよりはるかに好印象です。

「Yes, and…」のテクニックは、相手の明らかに間違った意見にも使うべきですか?

「Yes, and…」の「Yes」は「あなたの意見に100%同意します」という意味ではなく、「あなたの発言を認識しました」「その視点は理解しました」という受け止めの姿勢を示すものです。間違った事実に基づく意見であれば、「I hear what you’re saying about X, and I’d like to share some additional data we have on that point.(Xについてのお話は承りました。そして、その点に関して当方で持っている追加データを共有したいと思います)」のように、事実を丁寧に補足する形で「and」以下を続けることができます。

論理的な英語を話せるようになるまで、どれくらいの練習期間が目安ですか?

個人差はありますが、日常業務で意識して実践すれば、数週間で変化を実感できるでしょう。メールや短い報告で型を使いこなせるようになるのが第一段階です。複雑な交渉やプレゼンで自在に使いこなすには、数ヶ月から半年程度の継続的な練習が必要かもしれません。重要なのは「完璧」を目指すのではなく、「今日は結論を最初に言ってみよう」など、小さな目標を設定して継続することです。

TOEICのスコアは高いのですが、実際の交渉でうまく話せません。何から始めるべきですか?

まずは、ご自身の強みである語彙力や文法知識を「論理の型」という器に注ぎ込むイメージを持ちましょう。具体的には、この記事で紹介したケーススタディを参考に、自分が直面しそうなシナリオで英文を書く・声に出す練習から始めることをお勧めします。TOEICで培った英語力の土台は十分にあるので、あとはビジネスシーン特有の「話の組み立て方」を学び、実践で試すことで、劇的にコミュニケーション力が向上するはずです。

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