英語リーディングにおける予測力を鍛えて読解速度と正答率を上げる 帰納的推論による文脈予測トレーニング

英語の長文を読んでいると、文章の流れが追えず、止まってしまう経験はありませんか。単語の意味を一つ一つ追いかけても、内容が頭に入ってこない。その原因の多くは、文脈を予測する力、つまり「次に何が来るか」を推測する脳の働きが十分に鍛えられていないことにあります。流暢な読解とは、単語の羅列を順番に処理する作業ではなく、頭の中で絶えず情報を推測し、それを後の文章で検証し、修正していく連続的なプロセスです。このセクションでは、その核となる「帰納的推論」という思考プロセスにスポットを当て、なぜ文脈予測がリーディングの鍵となるのかを明らかにしていきます。

目次

なぜ文脈予測がリーディングの鍵を握るのか?帰納的推論が生み出す流暢な読解体験

流暢な読者は 次を予測しながら 読んでいる。点ではなく線で読む、帰納的推論が鍵、詰まりの原因は予測不足

流暢な読者とそうでない読者の決定的な違いは、文章を「点」で読むか、「線」で読むかです。文脈予測力が高い読者は、目の前の単語や文だけでなく、それらが指し示す全体像や、次に展開されるであろう内容を絶えず推測しながら読み進めます。この「次を予測する力」が、理解のスピードと深さを劇的に向上させるカギです。

あなたが無意識に行っている「次を予測する力」の正体

例えば、次の日本語の文章を読んでみてください。「彼は昨日、買ったばかりのスマートフォンを…」。多くの人は、ここで「落とした」「壊した」「忘れた」といったネガティブな出来事を瞬時に想像するでしょう。これは、これまでの人生経験や知識から、「新しいものを買った直後」という文脈が「何か良くないことが起こりやすい」というパターンを無意識に学習し、適用しているからです。

英語のリーディングでも全く同じことが起きています。接続詞 “However” を見れば、その後に続くのは前の文と対立する内容だと予測できます。段落の冒頭で “There are several advantages to…” と書かれていれば、その後に利点が列挙されると予想できます。このように、部分的な情報から全体像や次の展開を推測する脳の働きを「帰納的推論」と呼びます。リーディングにおける予測力の正体は、この帰納的推論のスキルです。

帰納的推論と演繹的推論:リーディングで使われる2つの思考

読解中に働く思考プロセスは、主に2つのタイプに分けられます。

  • 帰納的推論:具体的な事例や部分的な情報から、一般的な規則や結論を導き出す思考。リーディングでは、既に読んだ文章の内容、単語の使われ方、文の構造から、次に来る内容や筆者の主張を推測するために使われます。
  • 演繹的推論:一般的な規則や前提から、特定の事例についての結論を導き出す思考。リーディングでは、文法規則や既知の知識を適用して文の構造を解析したり、論理の整合性を確認したりするために使われます。

多くの英語学習者は、演繹的推論(文法解析)に多くのエネルギーを費やしますが、長文をスムーズに理解するためには、帰納的推論による文脈予測が不可欠です。予測があることで、脳は次に来る情報に対する準備ができ、処理が格段に速くなります。

予測力が低いと起こる「読解の詰まり」とその症状

帰納的推論による予測力が不十分だと、読解中にさまざまな「詰まり」が発生します。これは、文章を「点」の連なりとしてしか捉えられず、情報が断片化してしまう状態です。

以下のような経験に心当たりはありませんか。

読解の詰まり具体例
  • 一文一文は訳せるのに、段落や文章全体で何が言いたいのか分からない。
  • 知らない単語が出てくるたびに思考が完全に停止し、先に進めなくなる。
  • 後ろの文を読むうちに、前に読んだ内容を忘れてしまい、何度も戻って読み直す。
  • TOEICや英検の長文問題で、時間が足りなくなる。

これらの症状は全て、文脈からの予測が働かず、目の前の単語や文だけに集中せざるを得ない状態で起こります。脳のワーキングメモリ(作業領域)が、断片化した情報でいっぱいになり、処理速度が落ち、理解も浅くなってしまうのです。

では、この「詰まり」を解消し、流れるような読解を実現するにはどうすればよいのでしょうか。鍵は、帰納的推論を意識的に鍛えるトレーニングにあります。次のセクションでは、その具体的な方法を詳しく見ていきましょう。

帰納的推論による文脈予測の3つのレベル:単語から論理展開まで

単語から結論まで 3段階で予測する。次に来る単語、内容の方向性、段落の結論

文脈予測は、単なる単語の推測を超え、文章の構造全体を捉える高度なスキルです。このプロセスを効果的に身につけるためには、予測を「レベル」に分けて考えることが有効です。大きく分けて、単語の共起関係に基づくレベル1から、文章全体の主張を推測するレベル3まで、段階的な思考の深まりがあります。それぞれのレベルを意識しながら読むことで、どこでつまずいているのかを自己分析でき、トレーニングの焦点を絞ることができます。

レベル1:語彙・コロケーション予測(次に来る単語を推測する)

最も基礎的な予測のレベルです。これは、単語同士の結びつきのパターン(コロケーション)に基づいて、次に来る可能性の高い単語を推測する作業です。母語話者は無意識に行っていますが、英語学習者にとっては意識的に鍛える必要があります。

例を見てみましょう。「make a」の直後には、「decision」「mistake」「difference」といった名詞が高い確率で続きます。「strong」という形容詞の後には、「coffee」「argument」「feeling」などが自然です。この予測が働くと、実際の単語を「ゼロから解読する」のではなく、「候補の中から確認する」という能動的な読み方が可能になります。結果、読解速度が飛躍的に向上します。

このレベルの予測力を高めるには、単語を単体で覚えるのではなく、頻出のフレーズやコロケーションとして学ぶ習慣が鍵となります。

レベル2:文脈・内容予測(次に来る内容の方向性を推測する)

次に、単語の次元を超えて、文章の流れや内容の方向性を予測するレベルです。ここでは、これまでに読んだ情報を基に、「次に筆者がどのようなことを言いそうか」を推論します。

例えば、「The experiment yielded unexpected results.」という文の後では、その「予想外の結果」の具体的な内容や、それが何を意味するのかについての説明が続く可能性が高いと推測できます。また、「On the one hand, technology has made our lives more convenient.」という文を読んだら、「On the other hand」で始まる逆の視点が次に来ると予測できるでしょう。

このレベルの予測は、接続詞やディスコースマーカー(however, therefore, for exampleなど)への敏感さ、そして一般的な論理展開のパターン(具体例から一般化、問題提起から解決策など)の知識が支えになります。

レベル3:論理展開・結論予測(段落や議論の帰結を推測する)

最も高度なレベルが、段落全体や文章全体の主張や結論を先回りして推測することです。これは、筆者の意図や議論の骨格を理解しながら読むことに他なりません。

段落の最初の文(トピックセンテンス)を読んだ時点で、その段落が何を主張しようとしているのかの大枠を捉えます。複数の根拠や具体例が提示されている時は、それらが最終的にどの一点に収束していくのかを考えながら読み進めます。例えば、環境問題に関する記事で、汚染の現状、原因、各国の取り組みが列挙されていたら、最終的には「国際的な協力の必要性」や「個人の意識改革の重要性」といった結論に至ると予測することができます。

このレベルの予測ができる読者は、細部に捕らわれずに文章の核心を素早く把握できるため、TOEICの長文読解や学術論文の読解で特に強みを発揮します。

予測レベル対象思考の焦点主なスキル
レベル1
語彙・コロケーション
単語・フレーズ「次に来る単語は何か」コロケーション知識、語彙力
レベル2
文脈・内容
文・内容の方向性「次に来る内容はどんな方向か」接続詞理解、論理展開パターンの知識
レベル3
論理展開・結論
段落・文章全体の主張「筆者は最終的に何を言いたいのか」要約力、筆者の意図の読み取り
知っておきたいこと

3つのレベルは独立しているのではなく、常に連動しています。レベル1の予測が積み重なり、レベル2、レベル3へと発展していくのです。初心者はレベル1から意識的に始め、中級者以上はレベル3を目指して読む習慣をつけると、リーディング力が深まります。

このように、文脈予測は単なるテクニックではなく、文章を能動的・構造的に理解するための思考の枠組みです。次のセクションでは、これらのレベルごとに具体的なトレーニング方法を紹介していきます。

実践トレーニング1:クローズテストから始める語彙・コロケーション予測力向上法

帰納的推論による文脈予測の効果を高めるには、実際に文章に触れて手を動かすことが欠かせません。ここでは基礎的なトレーニングとして、クローズテストを用いた練習法を具体的に解説します。この方法は単語を補うだけの穴埋め問題ではなく、次に来る語の種類を推測する力を養うことに特化しています。

単語を隠して『次』を推測する:文章クローズの正しい活用

一般的なクローズテストでは、一定間隔でランダムに単語が隠されます。しかし文脈予測力を鍛えるためには、文法的・意味的に重要な箇所を意図的に選んで隠すことが重要です。目的は正解を当てることではなく、空欄の前後の情報から「何が来そうか」を論理的に考えるプロセスを強化することにあります。

クローズテストの狙い

空欄の単語を特定すること自体が目的ではありません。手がかりから「名詞か動詞か」「肯定的な意味か否定的な意味か」といった単語のカテゴリーや意味の範疇を推測する習慣をつけることが、読解中の無意識の予測力を高めます。

例えば、次の短い文章の空欄を考えてみましょう。

“The company announced a new ______ to reduce its environmental impact.”

この場合、「a new」があるので空欄は名詞であると推測できます。さらに「environmental impact(環境への影響)を減らす」という目的があるので、その内容は「政策」「計画」「技術」「イニシアチブ」といったポジティブな意味の名詞が来ると予想できます。「a new problem」などは文脈に反します。このように、単語そのものではなく、その属性を推測する訓練が核心です。

コロケーションに着目する:動詞の後には何が来る?名詞を修飾するものは?

予測力を高める上で、「コロケーション」(単語の慣用的な結びつき)の知識は強力な武器になります。よく使われる動詞や名詞の後に、どのような単語が頻繁に共起するかを知っていると、推測の精度とスピードが格段に向上します。

STEP
動詞の目的語を推測する

動詞の直後の目的語は強く結びつく傾向があります。例:「make a decision(決定する)」「conduct research(調査を行う)」「raise a question(質問を提起する)」。空欄の前の動詞から、その目的語としてふさわしい名詞の種類を考えます。

STEP
名詞を修飾する語句を推測する

名詞の前後に来る形容詞や前置詞句も予測の手がかりです。例:「a sharp increase(急激な増加)」「the key to success(成功への鍵)」「concerns about privacy(プライバシーに関する懸念)」。名詞が何を表しているかに注目し、それをどのような観点から説明する語が来るかを考えます。

STEP
間違った推測から分析する

推測が外れた場合、なぜその推測に至ったのかを振り返ります。手がかりの解釈を間違えたのか、コロケーションの知識が不足していたのか。この分析こそが、あなたの思考プロセスを改善し、次回の予測をより確かなものにします。

トレーニングでは、次のような例文で実際に推測してみましょう。まずは空欄の品詞と意味の範疇を考え、その後で具体的な単語を推測します。

  • “She has a remarkable ______ for learning languages.” (「〜の才能」を表す名詞が来ると推測)
  • “The government is under increasing ______ to take action on climate change.” (「圧力」や「要求」を表す名詞が来ると推測)
  • “The results of the experiment were highly ______.” (結果を修飾する形容詞。文脈次第で「encouraging(励みになる)」や「significant(重要な)」などが推測可能)

トレーニング素材の選び方と、効果を最大化する復習のコツ

効果的なトレーニングには、適切な素材と継続的な復習が欠かせません。自分に合ったレベルの文章から始め、徐々に難易度を上げていくことが長続きの秘訣です。

まずは、既に内容をよく知っている教材や、興味のある分野の平易な記事から始めることをおすすめします。未知の単語が多すぎると、推測以前に読解が難しくなり、挫折の原因になります。

素材を選んだら、以下の手順でトレーニングを進めます。

  • 適切な箇所を選んで隠す:前置詞の目的語、動詞の目的語、主語や目的語を修飾する形容詞など、文の骨格に関わる重要な単語を意図的に隠します。冠詞や助動詞などは最初は隠さなくて構いません。
  • タイマーを使って制限時間を設ける:推測に時間をかけすぎないよう、1空欄あたり10〜30秒程度を目安にします。読解の現場では、ゆっくり考えている時間はないからです。
  • 答え合わせと分析:正解を確認した後、自分の推測が正しかったか、外れたかをチェックします。特に外れた場合は、なぜその推測になったのか、正解の単語と文脈はどのように結びついているのかを、声に出して説明してみましょう。
復習のコツ

一度解いた問題を、数日から一週間後に再挑戦します。この時、前回間違えた箇所や悩んだ箇所に特に注目してください。同じ文脈で正しい単語がすっと浮かぶようになっていれば、そのコロケーションや文脈パターンが定着しつつある証拠です。この「間隔を空けた反復」が、知識を長期記憶に移し、無意識の予測力へと転化させる鍵となります。

このトレーニングを継続することで、長文を読んでいる最中に「この後は否定的な内容が来そうだ」「ここで具体例が示されるはずだ」といった、より高次の文脈予測にも自然につながる基礎体力が養われていきます。

実践トレーニング2:文と文の『つなぎ言葉』を追う文脈予測力強化法

つなぎ言葉が 次の展開を 教えてくれる。マーカーは方向のヒント、具体的内容をイメージ、予測→確認の習慣化

単語やコロケーションの予測を身につけたら、次は文章の論理の流れを先読みする力にステップアップします。ここで鍵になるのは、文章の流れを示すディスコースマーカーと、代名詞・言い換え表現への着目です。これらを追跡することで、筆者の意図を能動的に推測しながら読み進める習慣が身につき、読解速度と内容理解度が格段に向上します。

ディスコースマーカーは予測の最強のヒント

ディスコースマーカーとは、文と文、段落と段落の論理的な関係を示す接続詞や副詞のことです。これらを「つなぎ言葉」として認識するのではなく、次の文章の方向性を示す強力なシグナルと捉えることがトレーニングの核心です。

例えば、文頭に「However」や「On the other hand」が出てきた瞬間、「これから反対の主張や、別の視点が提示されるな」と予測できます。同様に「For example」を目にしたら、間違いなく具体例や事例が続きます。この予測を意識的に行うことで、脳は受動的に情報を受け取るのではなく、能動的に文脈を構築するモードに切り替わります。

  • 逆説 (However, But, Nevertheless) → 次は反対の意見・予想外の結果
  • 追加 (Moreover, Furthermore, In addition) → 次は同方向の補足情報・別の理由
  • 例示 (For example, For instance, Such as) → 次は具体的な事例・説明
  • 因果 (Therefore, Thus, As a result) → 次は結論・結果
  • 対照 (On the other hand, In contrast) → 次は比較対象・別の側面

この一覧を暗記するのではなく、実際の文章を読む際に「このマーカーは何を予告しているか」と自問する習慣をつけましょう。

逆説・追加・例示の後に来る内容を具体的にイメージする

マーカーを認識したら、次のステップとして、具体的にどんな内容が来るかを頭の中でイメージしてみることが有効です。これは単なる抽象的な予測ではなく、可能ならば単語レベルまで推測を試みるトレーニングです。

文脈予測の実践例

「Many people believe that remote work decreases productivity. However,…」という文があったとします。「However」を読んだ瞬間、次に来る内容を予測します。「生産性がむしろ向上したという研究結果だな」や「コミュニケーションコストの問題が指摘されるかもしれない」など、具体的な展開をいくつか思い浮かべます。そして実際に次の文を読み、自分の予測がどの程度当たっていたかを確認するのです。

この「予測→確認」のサイクルを繰り返すことで、英語の論理展開のパターンに自然と慣れ、読解が格段に速くなります。間違えた予測も貴重な学習材料です。なぜその展開を選んだのか、文脈のどの部分を見落としていたのかを振り返ることで、推論の精度が上がっていきます。

マーカーがない場合のつながりを読む:代名詞・言い換え表現への着目

すべての文が明示的なディスコースマーカーで始まるわけではありません。多くの場合、代名詞や言い換え表現によって文脈は滑らかに維持されます。ここでの予測力は、「it」「they」「this」「these」が何を指すかを即座に特定する力、そして同じ概念が別の言葉で言い換えられていないかを追跡する力です。

代名詞が指すもの(先行詞)を見失うと、文章の流れが完全に断絶します。逆に、これを正確に追えるようになると、長く複雑な文章も一本の線で理解できるようになります。

トレーニング方法はシンプルです。代名詞(特に文頭のThisやThese)に出会ったら、読み進める前に一呼吸置き、それが直前のどの名詞、あるいはどの文全体の内容を指しているのかを確認します。同様に、ある専門用語がその後「the phenomenon」「such a view」「the approach」などと言い換えられて登場する場合、それが同一の概念であることを認識しながら読み進めます。

STEP
代名詞・言い換え追跡トレーニング

中〜上級者向けの英文記事の一段落を選び、紙に印刷するか、テキストエディタにコピーします。

STEP
マーカーと代名詞に印をつける
  • ディスコースマーカー(However, Thereforeなど)には四角で囲みます。
  • 代名詞(it, they, this, that, these, those)には丸で囲みます。
  • 明らかな言い換え表現には下線を引きます。
STEP
関係性を追跡し要約する

印をつけた要素同士がどうつながっているかを矢印で結んだり、余白にメモを取ったりします。最終的に、その段落の主張を一言で要約できるか確認します。

このトレーニングを継続すると、文章の「接着剤」となっている要素に自然と目が行くようになります。その結果、ディスコースマーカーがなくても筆者の論理の流れを追えるようになり、リーディングにおける「迷子」になる感覚が大幅に減ります。文と文のつながりを能動的に追跡する習慣は、長文読解だけでなく、リスニングやライティングの論理構成力の向上にも大きく寄与するのです。

実践トレーニング3:段落全体から結論を先読みする論理展開予測力の鍛え方

段落の結論を 先に言ってみる。トピック文から仮説、具体例は主張の証拠、自分の結論と照合

文と文のつながりを追えるようになれば、最後の難関は段落全体の論理構造を一望し、主張の着地点を早く正確に予測することです。これは、文章を「上から見下ろす」ような視点を養うトレーニングです。結論を先に推測し、その予測が正しいかどうかを検証しながら読むことで、受動的な情報収集から能動的な分析へと読解の質が変わります。

トピックセンテンスが示す『地図』を読む

英語の論説文では、多くの場合、段落の最初の一文(トピックセンテンス)がその段落全体の主題と方向性を示します。この一文を読み、脳内で「この段落は最終的に何を言いたいのだろう?」と仮説を立てることが第一歩です。

トピックセンテンスが「リモートワークは生産性を向上させる可能性がある」なら、この段落は「なぜ生産性が上がるのか」という理由を述べるか、「可能性がある」という条件を詳しく説明する段落だと予測できます。

思考プロセス例

トピックセンテンス: 「ある調査によれば、週3日以上のリモートワークは従業員の定着率に明確な影響を与える。」
この段落は、おそらく「影響」の具体的な内容(定着率がどう変化したか)と、その理由をデータや具体例で示し、「だから週3日以上のリモートワークが有効だ」という結論に導くでしょう。

具体例やデータは、どの主張を支えているのか?

トピックセンテンスの後に続く具体例、データ、引用はすべて、最初の主張を補強するための「証拠」です。ここで重要なのは、各詳細情報を読む際に、常に「これは何の証拠か?」と上位の主張と結びつけて理解する習慣です。

STEP
証拠と主張を結びつける

文中に「例えば、満足度調査で80パーセントの従業員が…」と出てきたら、すぐに「これは『定着率向上』という主張の理由の一つ(満足度向上)をサポートする証拠だ」と認識します。

STEP
論理の流れを追跡する

「さらに、通勤時間の削減は…」という文が続けば、それは別の理由(時間的余裕の創出)を追加し、主張をさらに強固にしていると理解します。

このように、詳細情報をバラバラに記憶するのではなく、主張を支える「柱」として構造化して理解することで、段落全体の論理が一目で把握できるようになります。

段落の最後の一文を読む前に、自分で結論を言ってみる

これが予測力トレーニングの核心です。段落の最後の一文(コンクルーディングセンテンス)を読む直前に、読み進めてきた内容を基に、自分なりの結論を口に出してみましょう。

「トピックセンテンスはAと言い、その理由としてBとCの具体例が出た。だから、この段落の結論はおそらく『したがって、Aは正しい』または『AにはBとCの点でメリットがある』だろう」

フィードバックの重要性

自分の予測と実際の結論が一致すれば、論理展開を正しく追えている証拠です。もしズレがあれば、それは貴重なフィードバックです。「なぜ自分の予測は外れたのか?筆者は別の視点を持っていたのか?それとも自分が見落とした論点があったのか?」と振り返ることで、英語の論理パターンへの理解が深まります。

このトレーニングを繰り返すと、文章を読む速度が上がるだけではありません。筆者の主張を能動的に「探りながら」読むため、内容の理解度と記憶への定着率が格段に向上します。試験の長文読解では、正答率を上げるための決定的なスキルとなるでしょう。

予測力をTOEICや英検の長文読解で活かす:時間内に正答にたどり着く技術

これまでのトレーニングで論理展開の予測力を鍛えてきました。その力を試験の長文読解で確実に得点に結びつけるには、独特の戦略とリズムが必要です。試験では制限時間があり、すべての単語を丁寧に読む余裕はありません。ここでは、読む前に「何を探すか」を決めて能動的に情報を探しに行く読み方と、選択肢を素早く処理する技術を解説します。

選択肢を先読みするのか、本文を先に予測するのか?

多くの受験者が迷うポイントです。理想的な手順は、設問と選択肢のキーワードから本文の内容を先に推測し、その予測を検証しながら本文を読むことです。これにより、漫然と読み始めるのではなく、目的を持った「探し読み」が可能になります。

STEP
設問と選択肢を先にスキャンする

本文を読む前に、設問文と各選択肢に目を通します。固有名詞、数値、否定語、比較表現などの具体的なキーワードを拾います。

STEP
キーワードから本文の内容を予測する

例えば、「Why did the company change its policy?」という設問と、選択肢に「cost reduction」「customer complaints」「new regulations」があれば、本文では「会社が方針を変えた理由」が説明されていると予測できます。

STEP
予測を検証しながら本文を読む

予測した内容に沿って本文を読み進めます。「理由の説明はここだろう」と見当をつけ、該当箇所を見つけたら精読します。無関係な部分は速読で飛ばします。

本文の流れとずれる選択肢(ディストラクター)を見抜く

試験問題では、正答を迷わせるため、本文に出てくる単語を使いながら論理的に誤っている「ディストラクター」が用意されています。予測力は、この罠を見破る強力な武器です。

本文の論理展開を予測しながら読む習慣があると、「筆者はここでAと言いたいはずだ」という感覚が磨かれます。その感覚と明らかに矛盾する選択肢は、たとえ知っている単語が含まれていても、早期に候補から外すことができます。

  • 部分一致の罠:本文の一部の単語だけを切り取って作られた選択肢。文脈全体の意味とは異なります。
  • 過度な一般化の罠:本文で述べられている特定の事例を、無関係な事柄まで広げて主張する選択肢です。
  • 時系列・因果関係の逆転:原因と結果、または出来事の順序が本文と逆になっている選択肢です。
模擬問題への応用例

設問:What is the main purpose of the memo?
選択肢:(A) To announce a new product launch. (B) To explain changes in the meeting schedule. (C) To request feedback on a recent project.

メモの冒頭に「Due to the unexpected absence of the manager, the weekly team meeting originally scheduled for Friday…」とあれば、その後の展開は「日程変更の詳細」であると強く予測できます。(B)が最も可能性が高く、(A)や(C)はメモの主題から外れていると早期判断できます。

制限時間内に予測力を発揮するためのリーディングリズム

予測に基づく能動的読解を、時間制限のある試験で持続させるには、一定のリズムを作ることが有効です。全体の時間配分を管理しながら、各パッセージに対して同じ手順を繰り返します。

  • 時間配分の決定:試験開始時に、大問ごとに使える時間を大まかに決めます。長文読解セクション全体で、1パッセージあたりにかけられる時間を把握しておきます。
  • 設問先読みの時間を確保する:本文に飛びつく前に、30秒から1分程度、設問と選択肢に目を通す時間を必ず取ります。この投資が、その後の読解速度を劇的に上げます。
  • 「スキャン→精読」の切り替え:キーワードに基づいて該当箇所を探すときはスキャン(速読)、答えの根拠となる部分を見つけたら精読、と読み方を明確に切り替えます。
  • 迷ったら先送り:一つの問題に固執しすぎると、予測のリズムが崩れ、時間が足りなくなります。答えに確信が持てない問題は印をつけて一旦飛ばし、全て解き終わってから戻ります。

試験での予測力は、単なる推測ではなく、設問が求める情報を能動的に探しに行く「情報検索スキル」です。本文を「読まされる」受動的な姿勢から、「読みに行く」能動的な姿勢に変えることが、時間内での正答率向上のカギとなります。

著者プロフィール

大学受験・英語資格試験塾講師。大学時代にアメリカへ1年間留学。卒業後は海外書籍を取り扱う出版社で編集職に6年間従事した後、英語教育の現場へ転身。大学受験生向けや、社会人の英語資格試験対策の講義を担当し、実践的で分かりやすい解説に定評がある。出版社時代に様々なジャンルの英語書籍を担当した経験から、法律から工学まで業界特有の英語表現やビジネス英語に関する幅広い知識を持つ。また、二児の母という立場から、実体験に基づいた子どもの英語教育に関する発信も行っている。

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