英語で『M&A交渉・デューデリジェンス』を制する!買収提案・LOI・DDレポートで使う金融英語フレーズ完全実務ガイド

M&Aの交渉現場では、英語のドキュメントや専門用語が次々と飛び交います。「LOIって何?」「DDとSPAはどう違う?」と戸惑ったまま会議に臨むのは非常に危険です。取引フロー全体を英語キータームとともに把握しておくことが、M&A英語習得の絶対的な出発点です。このセクションでは、NDAからクロージングまでの6フェーズを一気に整理し、この記事全体のロードマップとして活用できるよう解説します。

目次

M&Aの取引フローと英語キータームを一気に整理する

ディールの全体像:6つのフェーズと主要ドキュメント

M&Aのディールは、大きく6つのフェーズに分かれています。各フェーズには固有のドキュメントと英語表現があり、どのフェーズにいるかによって使うべき言葉が変わります。まずは全体の流れをステップで確認しましょう。

STEP
Phase 1: NDA(秘密保持契約)

Non-Disclosure Agreement。売り手・買い手双方が情報を共有する前に締結する守秘義務契約。”Mutual NDA” と “One-way NDA” の2種類がある。

STEP
Phase 2: ティーザー・IM(情報提供資料)

Teaser(匿名の概要資料)と Information Memorandum(IM、詳細情報資料)を売り手側が作成し、潜在的買い手に配布する。

STEP
Phase 3: LOI(意向表明書)

Letter of Intent。買い手が取引条件の概要を示す書面。Indicative Offer(非拘束的提案)として提出されることが多い。

STEP
Phase 4: DD(デューデリジェンス)

Due Diligence。財務・法務・税務・ビジネス面から対象会社を精査するプロセス。Virtual Data Room(VDR)を通じて資料が共有される。

STEP
Phase 5: SPA(株式譲渡契約)

Share Purchase Agreement(または Stock Purchase Agreement)。DDの結果を踏まえ、最終的な取引条件を確定させる拘束力のある契約書。Binding Offer を経て締結される。

STEP
Phase 6: クロージング(Closing)

Closing Conditions(前提条件)が充足された後、株式・代金の授受が行われ取引が完了する。規制当局の承認(Regulatory Approval)が必要な場合もある。

フェーズ別・必須英語キーワード早見表

特に混同しやすい用語を中心に、定義とともに整理しておきましょう。

英語キーターム日本語ポイント
Indicative Offer非拘束的提案価格等の概算を示すが法的拘束力なし
Binding Offer拘束的提案DD後に提出。撤回には違約リスクあり
Exclusivity独占交渉権一定期間、他の買い手との交渉を禁止する条項
LOI / MOU意向表明書/覚書LOIは買い手主導、MOUは双方合意の形式が多い
Representations & Warranties表明保証SPAに含まれる事実の正確性に関する宣言
MAC Clause重大な悪影響条項Material Adverse Change。クロージング前の契約解除条件

バイサイド・セルサイドで変わる視点と使う英語

M&Aでは、Buy-side(買い手側)とSell-side(売り手側)では、同じフェーズでも使う英語表現や交渉スタンスが大きく異なります。自分がどちらの立場にいるかを常に意識することが、英語コミュニケーションの精度を高める鍵です。

  • Buy-side:「We are interested in acquiring…」「Our valuation is based on…」など、提案・条件提示の表現が中心
  • Sell-side:「We are seeking a strategic partner…」「The process is managed by…」など、プロセス管理・情報開示の表現が中心
  • Advisor(FA):「We are running a structured process…」「Bids are due by…」など、手続きの進行管理に関する表現が多い
この記事の使い方

この記事は上記6フェーズに対応した構成になっています。自分が担当するフェーズの見出しに直接ジャンプして、実務で必要なフレーズをすぐに確認できます。全フェーズを通読すれば、ディール全体を英語で俯瞰できる力が身につきます。

フェーズ1:NDA締結・初期接触で使う英語フレーズ

M&Aのプロセスは、情報管理から始まります。売り手・買い手ともに、最初のステップは秘密保持契約の締結です。NDAを英語で正確に読み、適切なフレーズで返答できるかどうかが、交渉相手からの信頼を左右します。このフェーズの英語表現をしっかり押さえておきましょう。

秘密保持契約(NDA/CA)の主要条項と英語表現

NDA(Non-Disclosure Agreement)とCA(Confidentiality Agreement)は、どちらも秘密保持契約を指す言葉で、実務上はほぼ同義として扱われます。NDAは「開示しない義務」に焦点を当てた呼称、CAは「情報の機密性を保つ義務」全般を指す呼称と理解しておけば十分です。

契約書に頻出する重要条項の英語表現を以下にまとめます。

英語表現意味・解説
Confidential Information秘密情報。開示された情報のうち、保護対象となる範囲を定義する条項
Permitted Purpose許可された目的。情報を使用できる目的を限定する
Standstill Clauseスタンドスティル条項。一定期間、相手企業の株式取得などを禁じる
Residuals Clause残留情報条項。記憶に残った情報の使用を一定範囲で許容する
Non-Solicitation Clause引き抜き禁止条項。相手方の従業員へのアプローチを禁じる
Term and Termination契約期間と終了条件。NDAの有効期限を規定する
NDA条項の英語例文

“Each party agrees to keep confidential all Confidential Information received from the other party and to use such information solely for the Permitted Purpose.”

(各当事者は、相手方から受領した秘密情報を機密として保持し、許可された目的のみに使用することに同意する。)

ティーザー・CIMへの問い合わせメールの書き方

ティーザー(Teaser)は、売り手の概要を匿名で記載した1〜2ページの資料です。一方、CIM(Confidential Information Memorandum)はNDA締結後に開示される詳細な事業説明資料で、財務情報・事業戦略・組織体制などが含まれます。ティーザーを受け取り、関心を示してNDAを締結した後にCIMが提供される、という流れが一般的です。

初期接触メール・電話で使えるフレーズ集

場面ごとに使える定型フレーズを整理します。

初期接触メールのテンプレート例

【関心を示す・CIMをリクエストする場合】

“We have reviewed the teaser and would like to express our interest in exploring this opportunity further. Could you please provide us with the CIM upon execution of an NDA?”

【NDA締結を提案する場合】

“Please find attached our standard form of Non-Disclosure Agreement for your review. We are happy to discuss any proposed revisions at your convenience.”

【情報開示をリクエストする場合】

“We kindly request the disclosure of the financial statements for the past three fiscal years as part of our preliminary due diligence.”

英文メールでは、日本語の感覚で過剰な敬語を使いがちですが、「I humbly request…」のような過度な表現はビジネス英語では不自然です。「We would appreciate…」「Could you please…」程度の丁寧さが適切です。

  • I humbly and respectfully request your kind consideration…(過剰な敬語:NG)
  • Please be advised that we would like to most sincerely ask…(冗長:NG)
  • We would appreciate it if you could send us the NDA at your earliest convenience.(自然な丁寧表現:OK)
  • Please let us know if you have any questions regarding the attached document.(簡潔で明確:OK)

フェーズ2:買収提案書・意向表明書(LOI)の英語表現を完全攻略

NDAを締結して初期情報を交換したら、次のステップはLOI(Letter of Intent:意向表明書)の作成です。LOIは「本格交渉への入場券」であり、価格・条件・スケジュールの骨格を英語で明文化する最初の重要ドキュメントです。構成を理解し、各セクションで使うフレーズを押さえておきましょう。

LOI(Letter of Intent)の構成と各セクションの役割

実務で使われるLOIは、概ね以下の6つのセクションで構成されています。各セクションの英語見出しとともに確認しましょう。

STEP
Transaction Overview(取引概要)

取引の目的・対象会社・取引スキーム(株式譲渡か資産譲渡か)を記述するセクション。”The Buyer proposes to acquire 100% of the outstanding shares of the Target Company.”のように記載します。

STEP
Purchase Price(買収価格)

バリュエーションの根拠と価格レンジを明示するセクション。EBITDAマルチプルや企業価値の目安を英語で表現します。

STEP
Conditions to Closing(クロージング条件)

デューデリジェンスの完了・規制当局の承認・Material Adverse Change(重大な悪化がないこと)などの前提条件を列挙します。

STEP
Exclusivity(独占交渉権)

買い手が独占的に交渉できる期間を定めるセクション。”The Seller agrees to grant the Buyer an exclusivity period of 45 days.”のように記載します。

STEP
Confidentiality(秘密保持)

LOI自体の内容および交渉の事実を第三者に開示しない旨を確認します。既存NDAへの参照で代替されることもあります。

STEP
Expiration(有効期限)

LOIの有効期限を明示します。”This Letter of Intent shall expire if not accepted within 10 business days of the date hereof.”が典型的な表現です。

バリュエーション・価格条件を英語で記述する表現

価格条件のセクションでは、バリュエーションの根拠と金額を明確に示す必要があります。以下のフレーズが実務でよく使われます。

英語フレーズ日本語訳・用途
The proposed Enterprise Value is approximately $XX million.企業価値はおよそXX百万ドルを想定
The purchase price represents a multiple of approximately X.Xx of the trailing twelve months EBITDA.買収価格は直近12ヶ月EBITDAの約X.X倍に相当
The Equity Value shall be determined on a cash-free, debt-free basis.株式価値は現金・負債ゼロベースで算定
The consideration is subject to customary working capital adjustments.対価は通常の運転資本調整に服する
The final purchase price will be determined following completion of due diligence.最終価格はDD完了後に確定する

Exclusivity・Breakup Fee・Representationsなど交渉条項の英語フレーズ

  • Exclusivity period(独占交渉期間):買い手が他の入札者を排除して交渉できる期間。”The Seller shall not solicit, encourage, or entertain any offers from third parties during the exclusivity period.”
  • Breakup fee(解約違約金):交渉が破談になった際に支払う違約金。”In the event the Seller terminates this LOI, a breakup fee of $X million shall be payable to the Buyer.”
  • Representations and Warranties(表明保証):売り手が財務・法務・事業状況の正確性を保証すること。”The Seller shall make customary representations and warranties regarding the business and financial condition of the Target.”
  • Material Adverse Change / MAC clause(重大な悪化条項):クロージング前に重大な悪化が生じた場合に買い手が撤退できる条項。”The obligations of the Buyer are conditioned upon the absence of any Material Adverse Change.”

LOI作成で使えるフレーズ集と実例文

LOI冒頭・趣旨説明のスニペット

This Letter of Intent sets forth the principal terms and conditions upon which [Buyer] (“Buyer”) proposes to acquire all of the outstanding equity interests of [Target Company] (“Target”) from [Seller] (“Seller”). This LOI is intended to facilitate further discussions and does not constitute a binding agreement, except as expressly set forth herein.

価格・バリュエーションセクションのスニペット

Subject to completion of satisfactory due diligence, Buyer proposes to acquire the Target at an Enterprise Value of approximately $50 million, representing a multiple of approximately 7.0x of the Target’s trailing twelve months EBITDA of $7.1 million. The Equity Value will be calculated on a cash-free, debt-free basis, with a normalized level of working capital.

注意点:Binding vs. Non-bindingの違いを必ず確認

LOIの多くは「Non-binding(拘束力なし)」ですが、Exclusivity・Confidentiality・Breakup Feeの条項だけは「Binding(拘束力あり)」とするのが実務の標準です。”The provisions of this LOI are non-binding, except for the sections relating to Exclusivity, Confidentiality, and Breakup Fee, which shall be legally binding.”のような表現で明示します。この区別を曖昧にすると、後の交渉で深刻なトラブルになるため、必ず明記してください。

Non-bindingのLOIであっても、Exclusivity条項に違反すれば法的責任が生じるケースがあります。署名前に必ず各条項のBinding/Non-bindingの区分を弁護士と確認する習慣をつけましょう。

フェーズ3:デューデリジェンス(DD)で使う英語フレーズ完全攻略

LOIが締結されると、いよいよデューデリジェンス(Due Diligence / DD)フェーズに突入します。DDは「買収対象企業の実態を徹底的に調査するプロセス」であり、英語でのやり取りの量・質ともに最もハードルが高いフェーズです。資料請求・Q&A・レポート作成・リスク報告と、場面ごとに使う英語表現を押さえましょう。

DDリクエストリスト(RFI)の読み方と返答フレーズ

買い手側はDD開始時に「Due Diligence Request List」(RFI: Request for Information)を送付します。カテゴリ別に資料提供を求める形式が一般的です。

RFI頻出カテゴリ代表的な英語表現返答フレーズ例
財務情報Audited financial statements for the past three fiscal yearsPlease find the requested documents uploaded to the VDR.
法務・契約All material contracts and agreementsThe documents have been organized under Folder 3 in the VDR.
知的財産List of patents, trademarks, and IP ownershipWe will provide the complete IP register by [date].
人事・労務Employee headcount, compensation structure, and key personnel agreementsPlease note that certain HR data is subject to confidentiality restrictions.
税務Tax returns and any outstanding tax assessmentsTax filings for the requested periods are available in Folder 7.

期限交渉が必要な場合は “We kindly request a brief extension to [date] to compile the requested materials.” のように丁寧に伝えましょう。

バーチャルデータルーム(VDR)でのやり取りに使う英語

VDR上のQ&Aセッションでは、短く明確な英語表現が求められます。曖昧な日本語的表現を直訳すると誤解を招くため、定型フレーズを活用しましょう。

  • 資料請求: “Please provide the executed version of the shareholder agreement.”
  • 確認・指摘: “We note that the document uploaded appears to be incomplete.”
  • 追加説明の要求: “Kindly clarify the basis for the revenue recognition policy applied in FY[X].”
  • 受領確認: “We confirm receipt of the documents and will revert with follow-up questions shortly.”
  • 対応不可の通知: “The requested information is not available at this stage of the process.”

法務・財務・ビジネスDDレポートの頻出英語表現

DDレポートは Legal / Financial / Commercial の3種類が基本構成です。各レポートに共通して登場するキーワードを理解しておくと、読解・作成の両面で大きく役立ちます。

  • Material Adverse Change (MAC):重大な悪影響をもたらす変化。LOI・SPA双方に登場する最重要概念
  • Representations and Warranties:売り手が事実として表明・保証する内容。違反時は補償請求の根拠となる
  • Key Risks / Risk Factors:レポートの核心。投資判断に直結するリスク項目を列挙するセクション
  • Assumptions:財務予測の前提条件。”The projections are based on the following assumptions…” の形で記載
  • Contingent Liabilities:偶発債務。訴訟リスクや保証債務など、将来発生しうる負債

DDで発見した懸念事項(Red Flag)を英語で伝える表現

Red Flagは「取引の継続可否を左右しうる重大な懸念事項」です。感情的にならず、事実ベースで簡潔に伝えることが英語コミュニケーションの鉄則です。

Red Flag報告の英語例文

【社内報告】 “We have identified a potential red flag relating to undisclosed litigation. This matter requires immediate escalation prior to proceeding.”

【相手方への確認】 “During our review, we identified a material discrepancy in the reported revenue figures. We request a written explanation at your earliest convenience.”

【価格交渉への転用】 “In light of the risks identified during due diligence, we propose a purchase price adjustment of approximately [X]% to reflect the contingent liabilities.”

曖昧な表現を避けるコツ

日本人が陥りがちな「maybe」「I think」「probably」は、DDの場では信頼性を損ないます。代わりに “Based on the documents reviewed, …” や “Our analysis indicates that …” のように事実・根拠ベースの表現を使いましょう。不確実な情報は “We are unable to confirm this at this stage.” と明確に留保するのが正解です。

RFIへの返答期限を延ばしたいとき、どう英語で伝えればよいですか?

“We kindly request an extension of [X] business days to compile the requested materials, as some documents require internal approval prior to disclosure.” のように、理由を添えて丁寧に依頼するのが基本です。一方的に遅延を通知するのではなく、相手の理解を求める姿勢を示しましょう。

VDRのQ&Aで「わからない」「確認中」と伝えたい場合の英語表現は?

“We are currently looking into this matter and will revert with a response by [date].” が標準的な表現です。”I don’t know.” は避け、必ず確認・回答の意思と目安を示すことが重要です。

DDレポートで “subject to” という表現をよく見ますが、どういう意味ですか?

“subject to” は「〜を条件として」「〜に従って」という意味です。例えば “subject to regulatory approval” は「規制当局の承認を条件として」を意味し、DDレポートや契約書で留保・条件を示す際に頻繁に使われます。

フェーズ4:条件交渉・SPA締結・クロージングで使う英語表現

DDが完了すると、調査結果を踏まえた価格・条件の再交渉、SPA(株式購入契約)の締結、そしてクロージングへと進みます。このフェーズは法的拘束力を持つ合意が積み重なる局面であり、英語表現の正確さが取引の成否を左右します。場面ごとのフレーズを体系的に押さえましょう。

価格調整・条件変更交渉で使う英語フレーズ

DDで発見されたリスク(フィンディング)を根拠に、買い手は価格引き下げや条件変更を求めます。交渉スタンスに応じた3パターンのフレーズを使い分けましょう。

STEP
強気:価格引き下げを強く要求する
  • “In light of the DD findings, we are requesting a price reduction of 10% from the originally agreed valuation.” (DDの結果を踏まえ、当初合意した評価額から10%の価格引き下げを要請します)
  • “The identified liabilities materially affect the enterprise value, and we cannot proceed at the current price.” (特定された負債は企業価値に重大な影響を与えており、現行価格での進行は困難です)
STEP
譲歩:Earn-out条項を提案して着地点を探る
  • “We propose incorporating an earn-out mechanism, whereby an additional payment will be made contingent on the target achieving agreed EBITDA milestones.” (合意したEBITDA目標の達成を条件に追加支払いを行うアーンアウト条項の導入を提案します)
  • “We are open to bridging the valuation gap through a deferred consideration structure.” (繰延対価の仕組みを通じて評価額のギャップを埋めることを検討できます)
STEP
断り:条件変更を拒否・交渉打ち切りを示唆する
  • “We are unable to accept the proposed price adjustment, as it falls outside our acceptable range.” (提案された価格調整は許容範囲外であり、受け入れることができません)
  • “Should we fail to reach an agreement on this point, we may need to reconsider our participation in this transaction.” (この点で合意に至らない場合、本取引への参加を再検討せざるを得ない可能性があります)

SPA(株式購入契約)の主要条項と頻出英語表現

SPAはM&A取引の根幹をなす法的文書です。以下の主要条項と対応する英語表現を必ず押さえておきましょう。

条項名(英語)日本語概要・頻出フレーズ
Conditions Precedent (CP)前提条件クロージング前に充足すべき条件。”All conditions precedent have been satisfied.”
Representations & Warranties (R&W)表明保証売り手が事実を保証する条項。”Seller represents and warrants that…”
Indemnification補償条項違反時の損害補償。”Seller shall indemnify and hold harmless the Buyer from any losses arising from…”
Escrowエスクロー一部代金を第三者に預託。”A portion of the purchase price shall be held in escrow for [X] months.”
MAC Clause重大な悪影響条項重大な変化が生じた場合の解除権。”In the event of a Material Adverse Change, Buyer reserves the right to terminate.”
Earn-outアーンアウト業績連動の追加支払い。”Earn-out payments shall be triggered upon achievement of the agreed milestones.”

クロージング・クロージング後のやり取りで使う英語

クロージング当日は、条件充足の確認から代金決済まで、定型フレーズを滞りなく使えることが重要です。またPost-closing調整では、Working Capital Adjustmentに関するやり取りが発生します。

クロージング当日の定型フレーズ
  • “We hereby confirm that all conditions precedent to closing have been duly satisfied.” (クロージングのすべての前提条件が適切に充足されたことを確認します)
  • “The purchase price has been wired to the designated account as of today.” (本日付けで購入代金を指定口座に送金しました)
  • “Please confirm receipt of the funds and countersign the closing certificate.” (送金の受領を確認のうえ、クロージング証明書に副署してください)
  • “We are pleased to confirm that the transaction has been successfully closed.” (取引が正式にクロージングされたことをお知らせします)

クロージング後のWorking Capital Adjustment(運転資本調整)では、“The final working capital adjustment shall be calculated within [X] business days following the closing date.”のように、調整の期限と計算方法を明確に英語で規定しておくことがトラブル防止の鍵となります。異議申し立ては “We dispute the proposed adjustment and request an independent accountant’s determination.” と表現します。

交渉メールの場面別フレーズ:提案は “We would like to propose…”、反論は “We respectfully disagree with…”、合意は “We are pleased to accept the revised terms.”、保留は “We need additional time to review this proposal internally.” を基本形として活用しましょう。

M&A英語を実務で使いこなすための学習・実践ステップ

M&Aの英語は「読める・聞ける」だけでは不十分です。交渉の場で即座に正確なフレーズを使えるかどうかが、ディールの行方を左右します。まずは自分が担当するフェーズの弱点を把握し、効率よくスキルを伸ばしましょう。

フェーズ別・自分の弱点を診断するチェックリスト

担当フェーズに対応する項目を確認し、「自信を持って使えない」と感じた箇所が優先学習ポイントです。

フェーズ自己診断チェック項目
NDAConfidential Information / Disclosing Party の定義文を読み解けるか
LOIbinding / non-binding の違いを英語で説明できるか
DDRFIへの回答メールをスムーズに書けるか
条件交渉価格調整・表明保証の修正を英語で提案できるか
クロージングClosing Conditions を口頭で確認・合意できるか

3項目以上に不安があるフェーズが、最優先で強化すべき領域です。

実務英語力を伸ばすための効果的な学習リソースと練習法

STEP
公開M&A文書のインプット

各国証券取引所の開示資料には、実際のNDA・LOI・SPAが多数公開されています。週1本を精読し、知らない法律表現をノートにまとめる習慣をつけましょう。

STEP
ロールプレイで発話練習

同僚や英語学習仲間とバイサイド・セルサイドに分かれ、価格交渉や質疑応答のシナリオを演じてみましょう。録音して聞き返すと、曖昧な発話パターンが明確になります。

STEP
英文M&Aニュースで語彙を更新

英語圏の経済ニュースや業界メディアを毎日5〜10分読む習慣が、最新のM&A用語感覚を養います。知らない表現は本記事のフレーズリストと照合して定着させましょう。

STEP
復習・活用サイクルを回す
  • 学んだフレーズを実務メールに1つ意識的に組み込む
  • 会議後に使えなかった表現をリスト化して翌週に再挑戦
  • 月1回、チェックリストで弱点フェーズを再診断する

英語ネイティブとのディール交渉で差がつく3つのポイント

日本人が陥りがちな表現パターンと、その改善フレーズを押さえておきましょう。曖昧な返答や過剰な謙遜は、ネイティブ側に「合意していない」「自信がない」と誤解させるリスクがあります。

「We will consider it.」は「検討します」のつもりでも、相手には「断り文句」に聞こえることがある。

「We need to review this internally and will get back to you by Friday.」と期限付きで返すと誠実さが伝わる。

「Please kindly…」は丁寧すぎますか?

ビジネス英語では過剰な敬語がかえって不自然に映ることがあります。「Please send us…」や「Could you provide…」で十分丁寧です。kindlyは書面では使えますが、多用は避けましょう。

交渉中に沈黙してしまうのはNGですか?

沈黙自体は問題ありませんが、「Let me think for a moment.」や「That’s a fair point. Let me come back to you on that.」と一言添えるだけで、思慮深い印象を与えられます。

条件に同意できない場合、どう断ればいいですか?

「We appreciate your proposal, but we’re not in a position to accept those terms as they stand.」のように、感謝を示しつつ理由を添えると交渉の余地を残せます。

実務定着のカギ

M&A英語は「知っている」から「使える」への橋渡しが最も重要です。本記事のフレーズをメールや会議で週1回意識的に使い、フェーズをまたいで語彙を積み上げることで、実務レベルの英語力は着実に伸びていきます。

著者プロフィール

大学受験・英語資格試験塾講師。大学時代にアメリカへ1年間留学。卒業後は海外書籍を取り扱う出版社で編集職に6年間従事した後、英語教育の現場へ転身。大学受験生向けや、社会人の英語資格試験対策の講義を担当し、実践的で分かりやすい解説に定評がある。出版社時代に様々なジャンルの英語書籍を担当した経験から、法律から工学まで業界特有の英語表現やビジネス英語に関する幅広い知識を持つ。また、二児の母という立場から、実体験に基づいた子どもの英語教育に関する発信も行っている。

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