英文を読んでいると、「that」は一文に何度も登場します。接続詞なのか関係代名詞なのか、あるいは別の何かなのか、その都度判断に迷う経験は多くの学習者に共通するでしょう。
この記事では、名詞節・形容詞節・副詞節の「that」を見分ける具体的な判断基準と、省略してよい場合・絶対に省略できない場合のルールを体系的に解説します。演習問題もあわせて収録しているので、読み終わるころには複雑な英文の構造を素早く分解できるようになっているはずです。
「that」が出るたびに立ち止まってしまいます。何か判断の手がかりはありますか?




手がかりは「thatの直後の文構造」にあります。3つのパターンに絞って考えると、ほとんどの文で正確に判断できるようになります。
なぜ「that」はこれほど紛らわしいのか
「that」が難しいのは、まったく同じ見た目の単語が、文脈によって異なる文法機能を担うからです。主な機能は次の3つに分類されます。
- 名詞節を導く接続詞
-
「〜ということ」という内容のかたまりを作り、主語・目的語・補語として機能します。例: I think that he is honest.(彼は正直だと思う)
- 形容詞節を導く関係代名詞
-
直前の名詞(先行詞)を修飾するかたまりを作ります。例: This is the book that I bought yesterday.(これが私が昨日買った本です)
- 副詞節を導く接続詞
-
原因・結果・目的などを表し、主節全体を修飾するかたまりを作ります。例: She studied so hard that she passed the exam.(彼女はとても熱心に勉強したので試験に合格した)
見た目は同じ「that」でも、文法上の役割も文中での位置も、省略できるかどうかのルールもすべて異なります。
| 種類 | 文法機能 | 節の役割 | 代表例 |
|---|---|---|---|
| 接続詞 that(名詞節) | 名詞節を導く | 主語・目的語・補語 | That he succeeded is true. |
| 関係代名詞 that(形容詞節) | 形容詞節を導く | 直前の名詞を修飾 | The man that you met is my teacher. |
| 接続詞 that(副詞節) | 副詞節を導く | 主節に結果・目的を付加 | I’m glad that you are here. |
ネイティブが「無意識に使い分けている」ものを言語化する
ネイティブスピーカーは、これらの「that」を文法規則として意識することなく感覚的に使い分けています。次の2文を見比べてください。
1. The fact that surprised me was his resignation.(事実そのものが私を驚かせた)
2. The fact that he resigned surprised me.(彼が辞めたという事実が私を驚かせた)
1文目の「that」は関係代名詞(主格)、2文目の「that」は名詞節を導く接続詞です。ネイティブがこの違いを即座に処理できるのは、that節の内部構造を無意識に把握しているからです。学習者がすべきことは、この「無意識のルール」を意識的な技術として習得することに尽きます。
見極めの基本:「that」の直後の構造に着目する
3種類の「that」を見分ける作業は、一見複雑に思えますが、実際には非常にシンプルな手順に落とし込めます。判断の起点は常に「thatの直後」です。
名詞節・形容詞節・副詞節のいずれのケースでも、「that + 完全な文(S+V)」という形が基本です。ただし、形容詞節では that 自体が節内の主語または目的語を兼ねるため、節の内部が「不完全な文」になることがあります。この点が見分けの重要なヒントになります。
「that」を見つけたら、その直後の単語が何であるかに注目します。名詞・代名詞・固有名詞など、主語になりうる語かどうかを確認します。
that節の内部で主語・動詞・目的語などが揃っているか(完全な文)、あるいは何かが欠けているか(不完全な文)を確認します。不完全な場合は形容詞節の可能性が高まります。
that節全体が主節の目的語や主語になっているなら名詞節、直前の名詞を説明しているなら形容詞節、so/such などの構文と組み合わさっているなら副詞節と判断します。
機能別フレームワーク:3種の「that」を確実に見分ける
判断の基本手順を身につけたところで、3つのケースそれぞれの決定的な判断基準を具体的な例文と合わせて整理します。同じ主節「I believe …」を使って比較すると、機能の違いがより明確になります。
ケースA:名詞節の「that」(接続詞)
「〜ということ」という内容そのものを名詞のかたまりとして作り、主節の動詞に対する目的語・主語・補語として機能します。直前にはthink・know・believe・sayなどの伝達・思考動詞が来ることが典型的なパターンです。
判別の決め手:that節全体が動詞の目的語や文の主語になっている。that節内は完全な文(S+V)。
例: I believe that the plan will succeed.
(私はその計画が成功すると信じている。)
→「that the plan will succeed」全体が「believe」の目的語。
ケースB:形容詞節の「that」(関係代名詞)
直前の名詞(先行詞)を説明・修飾するかたまりを作ります。「that自身が節内で主語または目的語の役割を担う」ため、節の内部に欠けた要素が生じます。この「節内の不完全さ」が名詞節・副詞節との最大の違いです。
判別の決め手:直前に名詞(先行詞)があり、that節がその名詞を修飾している。節の内部が不完全(主語や目的語が欠如)になっていることが多い。
例: I believe the plan that you proposed.
(私はあなたが提案した計画を信じている。)
→「that you proposed」は「the plan」を修飾。節内では「you proposed(目的語が欠けている)」となり、thatが目的語を担っている。
ケースC:副詞節の「that」(接続詞)
主節の動詞や文全体を「結果」「目的」「理由」として修飾するかたまりを作ります。「so/such … that …」「in order that」などの定型構文とセットで現れるのが最大の特徴です。この構文パターンを覚えておくだけで、副詞節の判断はほぼ確実に行えます。
判別の決め手:so/such … that …、in order that など、定型構文の一部として登場する。that節内は完全な文(S+V)。
例: The plan is so good that I believe it will succeed.
(その計画はとても良いので、成功すると信じている。)
→「so … that …」構文。「I believe it will succeed」は主節の結果を表す副詞節。
- 名詞節:I believe that the plan is good.(その計画が良いと信じる)
- 形容詞節:I believe the plan that you made.(あなたが作った計画を信じる)
- 副詞節:The plan is so good that I believe in it.(計画がとても良いので信じている)
省略のルール:「that」はいつ消せて、いつ消せないか
「that」の見分け方を理解したら、次に押さえるべきは省略のルールです。口語では頻繁に省略される「that」ですが、絶対に消してはいけない場面が存在します。その判断基準を3種類のケース別に整理します。
名詞節の「that」:省略できることが多い
名詞節を作る「that」は、日常会話やカジュアルな文章では頻繁に省略されます。文の主旨が変わらないためです。
- I think (that) he is right.(省略可)
- She said (that) she would come.(省略可)
- The fact (that) he apologized was surprising.(省略可)
文が長く複雑な場合や、thatを省略することで主節の動詞と節の主語が隣接し誤読を招く場合は省略を避けましょう。例: He announced at the meeting his plan was approved.(「his plan」が「announced」の目的語に見えてしまう)
形容詞節の「that」:節内の役割で判断する
形容詞節(関係代名詞の「that」)の省略可否は、「that」が節の中で主語として使われているか、目的語として使われているかによって決まります。これは最も重要な省略ルールです。
| 節内での役割 | 省略 | 例文 |
|---|---|---|
| 目的格(目的語) | 可能 | This is the book (that) I bought yesterday. |
| 主格(主語) | 不可 | This is the student that runs the fastest. |
- This is the book (that) I bought yesterday.(目的格 → 省略可)
- This is the student ~~that~~ runs the fastest.(主格 → 省略不可。主語がなくなり文が成立しない)
副詞節の「that」:省略できない
副詞節の「that」は、構文を成立させるための必須要素であるため、原則として省略できません。
- He was so tired ~~that~~ he fell asleep.(so … that 構文のthatは省略不可)
- We left early in order ~~that~~ we might avoid the traffic.(in order that のthatは省略不可)
TOEICや英作文、ビジネス文書では明確さが優先されます。名詞節の「that」は技術的には省略可能でも、あえて残すことで文構造が明確になり、読み手の負担を減らせます。特に長文や複雑な構文では、thatを省略しない習慣が正確なコミュニケーションにつながります。
省略ルールの核心は一点です。「形容詞節で主格の役割を担うthatは、いかなる文脈でも省略できない」。この原則を確実に押さえた上で、それ以外の場面では文体と文脈に応じて柔軟に判断しましょう。
実践演習:英文読解で「that」を瞬時に見極める
ここまでの知識を定着させるために、実際の英文で判別力を鍛えます。各文の「that」が名詞節・形容詞節・副詞節のどれにあたるかを、先に学んだ手順に従って考えてみてください。
1. I believe that this strategy will be effective.
2. The report that you submitted yesterday was highly praised.
3. She worked so hard that she passed the exam with flying colors.
4. It is essential that all members attend the meeting.
5. This is the house that my grandfather built.
6. He was disappointed that the project was canceled.
7. Bring the documents that are on my desk.
解説:判別の根拠を確認する
- 1. 名詞節:「this strategy will be effective」が完全な文。動詞「believe」の目的語として機能。省略可能。
- 2. 形容詞節:「you submitted yesterday」は目的語が欠けた不完全な文。直前の名詞「the report」を修飾。thatは目的格のため省略可能。
- 3. 副詞節:「she passed the exam」は完全な文。「so hard」と呼応する結果節。省略不可。
- 4. 名詞節:「all members attend the meeting」が完全な文。形式主語「It」の真主語として機能。
- 5. 形容詞節:「my grandfather built」は目的語が欠けた不完全な文。「the house」を修飾。thatは目的格のため省略可能。
- 6. 名詞節:「the project was canceled」が完全な文。形容詞「disappointed」の補語として機能する名詞節。
- 7. 形容詞節:「are on my desk」は主語が欠けた不完全な文。thatが主格を担っているため省略不可。「the documents」を修飾。
- that節の内部は完全な文か、不完全な文か?(不完全なら形容詞節の可能性大)
- that節は直前の名詞を修飾しているか?(そうなら形容詞節)
- so/such … that …、in order that などの定型構文の一部か?(そうなら副詞節)
よくある質問
- 名詞節・形容詞節・副詞節の「that」を見分ける一番シンプルな方法は何ですか?
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まず「thatの直後の文が完全か不完全か」を確認します。節内が不完全(主語や目的語が欠けている)なら形容詞節、完全な文であれば名詞節か副詞節です。次に「so/such … that …」などの定型構文の一部であれば副詞節、that節全体が動詞の目的語や主語になっていれば名詞節と判断します。
- 「that」を省略してよい場面と、絶対に省略できない場面の違いは何ですか?
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形容詞節で「that」が主語(主格)として機能している場合は絶対に省略できません。省略すると節の主語がなくなり文が成立しなくなるためです。一方、名詞節の「that」や、形容詞節で「that」が目的語(目的格)として機能している場合は省略が可能です。副詞節の「that」も省略できないのが原則です。
- 関係代名詞の「which」と「that」はどう使い分けますか?
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どちらも形容詞節を導きますが、「which」は先行詞が物・事に限られ、コンマで区切る非制限用法にも使えます。一方「that」は人・物の両方に使えますが、コンマをつけた非制限用法には使えません。また「which」は前置詞の後ろに置けます(in which など)が、「that」は前置詞の直後には置けないというルールもあります。
- 「so that」と「so … that …」はどう違いますか?
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「so that」は「〜するために」という目的を表す副詞節を導きます(例: He spoke slowly so that everyone could understand.)。一方「so … that …」は「とても〜なので…だ」という結果を表す構文で、so の後ろに形容詞や副詞が来ます(例: He spoke so slowly that nobody could follow him.)。どちらも副詞節の「that」ですが、意味が異なる点に注意が必要です。
- 「It is + 形容詞 + that」の構文で「that」節はどのように機能していますか?
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この構文では「It」が形式主語で、「that」節が真の主語(名詞節)として機能しています。例えば「It is important that you try.」では、「that you try(あなたが試みること)」が文の本当の主語です。形式主語を使わずに書き直すと「That you try is important.」となります。この構文の「that」は名詞節を導く接続詞で、省略されることもあります。









