前置詞『by』と『through』の微妙な距離感をマスター!『手段・経路・媒介』を伝える際の英語らしいニュアンスの使い分け完全ガイド

英語で「手段」や「経路」を表す時、あなたは『by』と『through』のどちらを使うべきか迷ったことはありませんか?どちらも日本語に訳すと「〜によって」「〜を通じて」となり、一見同じように思えてしまいます。しかし、この二つの前置詞が持つ根本的なイメージは全く異なります。この違いを理解せずに使っていると、ネイティブスピーカーには少しぎこちなく、または意図が正確に伝わらない表現になってしまうことがあります。このセクションでは、その「根源的なイメージの違い」を明確にすることで、『by』と『through』を使い分けるための確かな土台を築きます。

目次

まずは核心を理解する:『by』は「行為者」、『through』は「経路」という根源的なイメージ

『by』と『through』の使い分けに悩む最大の原因は、日本語訳に頼ってしまうことです。両方とも「〜によって」と訳せるから混乱するのです。そこで、まずは英語ネイティブがこの二つの単語に抱く根本的な(コア)イメージを直感的に掴みましょう。

『by』のコアイメージは「行為者・直接的な作用源」、『through』のコアイメージは「通過・経路・媒介」

『by』のコアイメージは、「誰か/何かが直接的に行為や作用を及ぼす存在」です。受動態で「〜によって」と習ったように、行為者が前面に立ち、その行為が直接的に結果をもたらす場面で使われます。一方、『through』のコアイメージは、「何かを通過する、または何かを媒介・経路とする」というプロセスです。行為者そのものではなく、その行為が達成されるまでの「通路」や「手段」に焦点が当たります。

核心的なイメージの違い

『by』は「誰が/何が」という行為者(Agent)にスポットライトを当て、『through』は「どのルートで/何を介して」というプロセス(Process)にスポットライトを当てると考えると明確です。

このイメージの違いを、具体的な例文で左右に並べて比較してみましょう。

前置詞 ‘by’ の例前置詞 ‘through’ の例
The window was broken by a ball.
(窓はボールによって割られた。)
I learned about it through a friend.
(私はそれを友人を通じて知った。)
The song was written by that composer.
(その曲はあの作曲家によって書かれた。)
We communicated through an interpreter.
(私たちは通訳者を通して意思疎通した。)

左の『by』の例では、「割った」という行為を直接行ったのは「ボール」であり、「書いた」という行為を直接行ったのは「作曲家」です。行為者が明確で、その作用が直接的に結果に結びついています。一方、右の『through』の例では、「知った」という行為は「友人」という媒介・経路を通過して実現しています。「意思疎通した」行為も、「通訳者」という媒介物を通して行われています。友人や通訳者自体が「知る」「意思疎通する」という行為の主体(行為者)ではありません。

  • 『by』が使われる時:行為者(人、物、自然現象など)が前面に出て、その行為や作用が直接的に結果を生み出す。焦点は「主体」にある。
  • 『through』が使われる時:何らかのプロセス、媒介物、経路、または手段が背景として存在し、その「通り道」を通じて行為が達成される。焦点は「経路」や「媒介」にある。

日本語訳が同じでも、英語の頭の中では『by』と『through』は全く異なるイメージで働いています。次に「〜によって」と言いたい時、それは「誰が直接やったか」(by)を伝えたいのか、それとも「何かを通して実現したか」(through)を伝えたいのか、一瞬考えてみることが使い分けの第一歩です。

物理的な「手段」で感覚を掴む:交通手段・道具・物理的経路での明確な使い分け

根源的なイメージが理解できたところで、次は具体的な場面でその区別を練習しましょう。物理的な「移動」や「道具の使用」は、両者の違いを体感するのに最適な例です。まずは「行為者」と「経路」というイメージを頭に置きながら、以下の例を見てみてください。

「交通手段」で考える:by car と through the tunnel の決定的な違い

「車で移動する」と言いたいとき、あなたはどの前置詞を選びますか?次の二文を比較してみましょう。

  • I go to work by car. (私は車で通勤します。)
  • The train passes through the tunnel. (その電車はトンネルを通り抜けます。)
核心のポイント

by car は「車という乗り物が行為者(作用するもの)として働く」というイメージです。手段そのものを指定しています。一方、through the tunnel は「トンネルという空間を通過する」という物理的な経路を表します。前者は「何で?」、後者は「どこを通って?」という質問に答える表現です。

この区別は他の交通手段でも同じです。by bus / train / plane は手段を示し、through the city / the forest / the station は通過する場所を示します。「駅を通り抜ける」は経路ですが、「電車で行く」は手段なのです。

「道具・媒体」で考える:by hand と through a microscope の距離感

次に、道具を使う場面での違いを見てみましょう。こちらも例文で比較します。

  • This pottery was made by hand. (この陶器は手作りです。)
  • We observed the cells through a microscope. (私たちは顕微鏡を通して細胞を観察した。)

by hand は、「手」が直接的な行為者です。手という道具を使って「作る」という行為を直接行っています。ここには媒介物はありません。一方、through a microscope は、顕微鏡という「装置を通して(媒介して)」観察するという意味です。行為者(私たち)と対象(細胞)の間に、顕微鏡という経路・媒介物が存在します。

この「媒介」の感覚が『through』の大きな特徴です。電話で話す(talk through the phone)、インターホンで伝言する(leave a message through the intercom)など、何かを「介して」行う場合に使われます。

練習問題:物理的な例文で「行為者」と「経路」の感覚を体感する

ここまでの理解を、実際に穴埋め問題で確認してみましょう。それぞれの文脈で、bythrough のどちらが自然かを考えてみてください。

問題選択肢解答と解説
1. Please send the document ( ) email.by / throughby
「Eメールという手段で送る」。Eメールは行為者として機能する「手段」です。
2. The news spread quickly ( ) the office.by / throughthrough
「オフィスという空間(または人々のネットワーク)を通って広がる」。物理的・抽象的な「経路」を伝播するイメージです。
3. This door can be opened ( ) a special key.by / throughwith (またはby using)
実はこれ、少しひっかけ問題です。特定の道具(key)を指定する場合、by 単体はあまり使わず、with または by using がより自然です。『by』はより一般的な手段を示す傾向があります。
4. Light comes into the room ( ) the window.by / throughthrough
「窓という開口部を通って入ってくる」。明確な物理的経路です。
知っておきたいこと

問題3のように、特定の道具を一つ挙げる場合、by 単体では不自然に感じられることがあります。例えば「by a pen(ペンによって)」とは言わず、「with a pen」や「by using a pen」と言います。一方、by hand(手で)や by credit card(クレジットカードで)は、その手段が一般化・様式化されているため、by 単体で使える例外です。最初は「手段=by」と単純に覚えず、このような「行為者としての手段」という感覚を優先させて考えると良いでしょう。

物理的な例での使い分けは、根源的なイメージを体現しています。『by』は「何が(行為者として)作用したか」に焦点があり、『through』は「どの経路・媒体を通ったか」に焦点があります。この感覚を頭に留めて、次の抽象的な用法に進みましょう。

比喩的・抽象的な「手段」への応用:情報・コミュニケーション・人間関係

物理的な移動や道具の使い分けに慣れてきたら、次はもう一歩踏み込んだ使い方を考えてみましょう。『by』と『through』は、物理的な対象だけでなく、情報や人間関係など、目に見えない抽象的な「経路」や「手段」を表現するときにも、その本質的なイメージを色濃く反映します。比喩的な使い方こそ、両者のニュアンスの違いが最も際立つ場面です。

情報入手の経路:by rumor と through an official announcement の信頼性の違い

「噂で聞いた」と「公式発表で知った」という場合、英語では前置詞の選択が情報の性質を表します。

I heard the news by rumor.

I learned about the policy change through an official announcement.

「噂」は、誰が発信源か不明瞭で、それ自体が直接的な情報伝達の「手段」として機能します。ここでは『by』が使われ、「噂という手段によって」という直接性、しかし同時に不確かさを含意します。

一方、「公式発表」は、会社や組織という明確な主体から発せられた情報が、公的な「経路」を辿って聞き手に届く過程をイメージさせます。『through』を使うことで、情報が特定の経由点(公式チャンネル)を通じて間接的に伝わってきたという信頼性の高さが表現されるのです。

コミュニケーション手段:by email と through an interpreter の直接性の違い

コミュニケーションの手段を述べる際にも、同じ区別が適用されます。

  • Please contact me by email. (メールでご連絡ください。)
  • We discussed the details through an interpreter. (通訳者を通じて詳細を話し合った。)

電子メールは、宛先に直接メッセージを送る「手段そのもの」です。道具や交通手段と同じく、『by』でその方式を指定します。

これに対し、「通訳者を通じて」では、通訳者が話し手と聞き手の間に立つ「仲介者」、つまりコミュニケーションが流れる「経路」として捉えられます。意思は直接相手に伝わるのではなく、一度この「経路」を通過することで翻訳・伝達されます。この間接性と媒介のニュアンスが『through』の核心です。

ビジネスでの注意点

ビジネス文書などで「〜を通じて」と書きたい時は、その「経路」が単なる手段なのか、仲介者を含む間接的な経路なのかを考えましょう。「書面で通知する」はby written notice、「上司を通じて申請する」はthrough my supervisorが自然です。後者を『by』にすると、「上司という人物が手段」という不自然な印象を与える可能性があります。

人間関係・組織を「経路」として捉える:through a friend の持つ間接的なニュアンス

この区別が最も象徴的に現れるのが、人や組織を「経由する」という表現です。これは『through』の典型的な比喩的用法です。

I got the job through a friend. (友人を通じてその仕事を得た。)

この文では、友人が単なる手段(by)ではなく、仕事を得るまでの過程で通過した「重要な経由点」として描かれています。情報や機会が、友人という「パイプ」または「窓口」を経由して自分に流れてきたという間接的な関係性が強調されます。

  • apply through the website (ウェブサイトを通じて申し込む)
  • negotiate through a lawyer (弁護士を通じて交渉する)
  • send a message through the proper channels (適切な経路を通じてメッセージを送る)

いずれも、行為の主体(申込者、交渉者、送信者)から直接対象に届くのではなく、間に「ウェブサイト」「弁護士」「公式のチャンネル」という媒介・経路が存在する構造を『through』が表現しています。このように、抽象的で比喩的な文脈においても、『by』=直接的な行為者/手段、『through』=間接的な媒介/経路という基本イメージは一貫して働いているのです。

「by + 行為者」と「through + 媒介物」の構造:受動態・原因・達成手段における対比

これまで見てきたように、『by』と『through』の根本的な違いは、「直接的な行為者」と「間接的な媒介物・経路」にあります。この違いは、文章の構造がより抽象的になる受動態や原因表現においても、色濃く反映されます。ここでは、文法構造に注目しながら、その明確な使い分けを探っていきましょう。

受動態の「by」は行為者表示、能動態の「through」は達成手段

最も明確に両者が分かれるのは、受動態の文脈です。受動態で動作の主(行為者)を示す前置詞は、常に『by』です。一方、『through』は能動態で「〜を経由して・〜を通じて」という達成手段やプロセスを表すのに使われます。

文法ルールのポイント

受動態の「by」は「誰が(何が)その動作をしたか」を示し、能動態の「through」は「どのようなプロセスでその結果に至ったか」を示します。この文法上の役割の違いを押さえることが、混乱を防ぐ第一歩です。

例えば、以下の例文を見比べてください。

  • The report was written by the consultant.(その報告書は顧問によって書かれた。)
  • He succeeded through persistent effort.(彼は粘り強い努力を通して成功した。)

前者の「by the consultant」は、「書く」という行為の直接の主体です。後者の「through persistent effort」は、成功という結果に至るまでの過程や手段を表しており、主体は「He」です。

原因・理由を表す場合:by accident(偶然が原因)vs through hard work(努力という過程が原因)

「〜によって」という原因・理由を表す場合にも、この「直接性」と「媒介性」の感覚が生きます。「どういう原因でその結果になったのか」を考えると、その違いが明確になります。

表現前置詞原因の性質例文とニュアンス
by accidentby直接的な、偶発的な出来事I found the old photo by accident.(偶然その古い写真を見つけた。)
「偶然」という瞬間的・意図しない出来事が直接の原因。
through hard workthrough間接的な、継続的なプロセスShe improved her skills through hard work.(努力を通してスキルを向上させた。)
「努力」という時間をかけた過程が、向上の原因(媒介)。

この比較から分かるように、『by』は結果を直接引き起こした単発の出来事や状況を、『through』は結果に至るまでの積み重ねや仲介となるプロセスを示します。このため、「by mistake(間違えて)」「by chance(偶然に)」などの表現は『by』を使い、「through experience(経験を通して)」「through practice(練習を通して)」などは『through』を使うのが自然なのです。

目標達成の手段:by cheating(不正という直接行為)vs through negotiation(交渉というプロセス)

目標を達成する「手段」を表現する際にも、このニュアンスの違いは顕著です。達成に至るアプローチが「直接的な行為」なのか、「間接的なプロセス」なのかによって、前置詞の選択が変わります。

この使い分けは、手段の性質(ネガティブ/ポジティブ)や、話し手の評価までも暗示することがあります。

  • He passed the exam by cheating.(彼は不正行為によって試験に合格した。)
    「不正行為(cheating)」は、合格という結果を直接もたらす行為です。多くの場合、非難のニュアンスを含みます。
  • They reached an agreement through negotiation.(彼らは交渉を通じて合意に達した。)
    「交渉(negotiation)」は、合意に至るまでの対話と調整のプロセスです。時間と労力をかけた建設的な手段という印象を与えます。

このように、『by』を使った手段表現は、より直接的で、時にその行為自体に焦点が当たります。一方、『through』を使うと、結果に至るまでの道筋や努力にスポットライトが当たり、そのプロセスを重視している印象を読者に与えるのです。

TOEIC・ビジネス英語で迷わない!頻出パターンとよくある誤用例

学習の成果を試す試験や、実践の場であるビジネスシーンでは、『by』と『through』の使い分けが直接的に関わってきます。ここでは、TOEICの頻出パターンとビジネス英語での自然な表現に焦点を当て、実践的な理解を深めます。試験対策と実用性の両方に役立つ知識を身につけましょう。

TOEIC Part 5, 6 を攻略:空欄補充問題の頻出パターン分析

TOEICでは、「情報の入手経路」や「コミュニケーション手段」を問う問題で『by』と『through』の選択肢が頻出します。正解を導く鍵は、選択肢に惑わされるのではなく、空欄の前後にある名詞が「直接的な手段」か「間接的な経路」かを判断することです。

TOEIC頻出パターン

次のような表現は定型句として覚えておくと、解答スピードが上がります。

  • learn through experience / trial and error (経験/試行錯誤から学ぶ)
  • communicate by email / phone (メール/電話で連絡する)
  • make a payment by credit card (クレジットカードで支払う)
  • submit an application through the online portal (オンライン窓口を通じて申請を提出する)

実践練習:TOEIC形式問題

次の空欄に入る最も適切な前置詞を選んでみましょう。

The manager requested that all reports be submitted (    ) the designated software by Friday.

  • 1. by
  • 2. through
  • 3. with
  • 4. on

解説: 正解は2. throughです。「指定されたソフトウェア」は、報告書を提出するための「媒介となるシステム、経路」です。報告書が「ソフトウェアというシステムを経由して」提出されるというイメージです。「by software」と言うと、「ソフトウェア自身が」提出するという誤った行為者を示す可能性があります。

ビジネスメールで差がつく表現:contact us by phone / through our website

ビジネス文書、特に問い合わせ先を案内する際の表現は、前置詞の使い分けで正確さが変わります。顧客に迷いを与えない明確な指示が求められます。

表現使用する前置詞理由とニュアンス
電話でお問い合わせくださいby phone電話は直接的なコミュニケーション「手段」そのもの。
ウェブサイトからお問い合わせくださいthrough our websiteウェブサイトは、問い合わせフォームという「媒介」を経由する「経路」。
メールでご連絡くださいby emailメールは直接的な通信「手段」。メールソフトという媒介は暗黙の了解。
オンラインチャットでサポートを受けるthrough the online chatチャットシステムという「媒介・プラットフォーム」を経由する。

この使い分けは、「相手が直接触れるものか、間に何かを介する必要があるか」で考えると明快です。電話やメールは相手に直接届く「手段」ですが、ウェブサイトはその中にあるフォームやシステムを「通して」初めて連絡が成立します。

絶対に避けたい誤用例とその理由:by the internet が不自然な理由

多くの学習者が戸惑うのが、インターネットを表す場合の前置詞です。「インターネットで情報を得る」を「get information by the internet」と書いてしまうことがありますが、これは不自然な表現です。

よくある間違い

✗ I found the article by the internet.

✓ I found the article on the internet / through an internet search.

理由: インターネットは単なる「道具」ではなく、無数の経路や情報が行き交う「ネットワーク空間」または「媒介するシステム全体」と捉えられます。「上にある」という位置を示すon、またはそのネットワークを「経由して」という意味のthroughが適切です。「by」はインターネットそのものが行為者であるかのような印象を与え、不自然に響きます。

この原則は他のテクノロジー関連の表現にも応用できます。

  • through a mobile app (モバイルアプリを通じて) – アプリは機能を提供する媒介物。
  • by text message (テキストメッセージで) – メッセージそのものが手段。
  • through a social media platform (ソーシャルメディアプラットフォームを通じて) – プラットフォームは間接的な経路。

試験や実務で迷ったときは、その名詞が「直接的な道具・方法」か「間接的な経路・システム」かを一瞬で判断する習慣をつけることが、正確な英語運用への近道です。

著者プロフィール

大学受験・英語資格試験塾講師。大学時代にアメリカへ1年間留学。卒業後は海外書籍を取り扱う出版社で編集職に6年間従事した後、英語教育の現場へ転身。大学受験生向けや、社会人の英語資格試験対策の講義を担当し、実践的で分かりやすい解説に定評がある。出版社時代に様々なジャンルの英語書籍を担当した経験から、法律から工学まで業界特有の英語表現やビジネス英語に関する幅広い知識を持つ。また、二児の母という立場から、実体験に基づいた子どもの英語教育に関する発信も行っている。

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