英作文における『曖昧な指示語』を明確化する技術 主語・代名詞の参照関係を精密に設計して読み手の誤解リスクを最小化する実践ガイド

英作文を書いていると、「この『it』は何を指しているのか分からない」「『they』が誰なのか曖昧だ」といった指摘を受けることがあります。文法は正しくても、主語や代名詞が何を指しているのかが読み手に明確に伝わらないと、文章の価値は大きく損なわれます。このセクションでは、なぜ曖昧な指示語が読み手の混乱を招き、ライティングの評価を下げるのか、その根本的なメカニズムを解き明かします。

目次

なぜ「何を指しているか分からない」と指摘されるのか? 曖昧な参照が生む読み手の混乱

文法が正しくても 読み手は混乱する。文法と明確さは別、読み手の推測負荷、試験での減点対象

一見正しい英文でも、読み手に「?」と感じさせる原因は、文法の正しさと「明確さ」は別次元の課題だからです。あなたが作った文は、あなた自身にとっては完全にクリアかもしれません。しかし、あなたが持っている文脈情報を共有していない読み手は、文章内の手がかりだけで、代名詞が何を指しているのかを推測せざるを得ません。この推測のプロセスに迷いが生じた瞬間、文章は「分かりにくい」と評価されてしまうのです。

読み手の視点で見る「参照の迷宮」

曖昧な指示語は、読み手を小さな迷宮に迷い込ませます。例えば、以下の文を見てみましょう。

悪い例:参照が曖昧な文

The manager discussed the new policy with the team leader. He was not satisfied with it.

この文では、「He」が「The manager」なのか「the team leader」なのか、「it」が「the new policy」なのか、それとも「the discussion」自体を指すのか、判断がつきません。読み手は前の文を何度も読み返し、文脈から「おそらくこうだろう」と推測する負担を強いられます。このような「推測負荷」が文章の明快さを損なう最大の要因です。

良い例:参照を明確にした文

The manager discussed the new policy with the team leader. The team leader was not satisfied with the policy.

代名詞を具体的な名詞に置き換えるだけで、誰がどう思ったのかが一瞬で理解できます。このわずかな修正が、読み手の体験を劇的に改善するのです。

曖昧さはなぜライティング試験で減点されるのか

TOEFLやIELTS、英検などのアカデミックライティング、あるいはビジネス文書の作成において、「明確さ(Clarity)」は最重要評価基準の一つです。試験の採点基準を細かく見ると、「語彙・文法の正確さ」とは別に、「一貫性と結束性(Coherence and Cohesion)」が評価項目として設けられています。ここで問われるのが、文と文のつながり、つまり指示語の参照関係が論理的に明確かどうかです。

採点者は、限られた時間で多くの答案を読み、内容を正確に理解できなければなりません。もしあなたの答案が曖昧な代名詞だらけで、その都度「これって何?」と考えさせるようなら、内容そのものが優れていても、読みにくさゆえに高い評価は得られません。ビジネスの場面でも同様で、メールや報告書で指示が曖昧だと、誤解を生み、プロジェクトに支障をきたすリスクさえあります。

文法が正しくても、指示語が何を指すかが読み手に一意に伝わらなければ、それは「明確な文章」とは言えません。アカデミック・ビジネスライティングでは、この「明確さ」が内容の質と同等に重視されることを常に意識しましょう。

混乱を招く典型的な4つのパターン:具体例で問題点を特定する

曖昧さには 4つの典型パターンがある。複数の候補、範囲が広い、抽象概念の受け方、oneとitの混同

曖昧な指示語が読み手を混乱させる仕組みを理解したところで、次はその典型的なパターンを具体的に見ていきましょう。文法チェックでは見逃されやすい、この「あいまいさ」には共通の構造があります。問題を特定できれば、修正の第一歩は踏み出せたも同然です。

前文に複数の候補が存在するケース

最も頻繁に起こる問題です。指示語の前に複数の名詞が登場していると、読み手はそれがどれを指すのかを推測しなければなりません。この推測に誤りがあると、文章の意味が大きく変わってしまいます。

The manager discussed the project with the designer, and he approved the plan.
(マネージャーはデザイナーとプロジェクトについて話し合い、彼はその計画を承認した。)

この文では、「彼(he)」が「マネージャー」を指すのか「デザイナー」を指すのか、文法的には決定できません。読み手は文脈や常識に頼って判断せざるを得ず、それが誤解の元になります。

STEP
問題点の特定

指示語(it, he, she, they, this, thatなど)の前を見て、それが指す可能性のある名詞(句)が複数ないかを確認します。

  • 単数代名詞の前に対象となる単数名詞が2つ以上ある。
  • 複数代名詞の前に対象となる複数名詞が2つ以上ある。
  • 「this/that」の前に、抽象的な概念や出来事を表す句が複数ある。
STEP
指示語が指す範囲が広すぎるケース

「this」や「that」の後ろに抽象名詞(idea, problem, situationなど)を付けただけでは、指す対象の範囲が絞りきれないことがあります。書き手の頭の中では明確でも、読み手には前文のどの部分を概念化した結果なのかが分かりません。

STEP
抽象的な概念を「it」「this」で受けすぎるケース

前の文で説明した長く複雑な概念や、いくつかの要素から成るプロセス全体を、単純な「it」や「this」で受けようとすると、情報が大幅に失われます。読み手は、その指示語が概念の全体を指すのか、一部の側面を指すのかを判断できなくなります。

STEP
「one」と「it」の使い分け失敗による混乱

「one」は不特定の同類の一つを指し、「it」は特定されたものを指します。この区別があいまいだと、読み手は話の対象が一般的な事例なのか、前に出てきた具体的なものなのかを見失います。

それぞれのパターンについて、より詳しく見てみましょう。

指示語が指す範囲が広すぎるケース

「this idea」のような表現は便利ですが、危険でもあります。

We need to reconsider the budget allocation, improve team communication, and adopt new software. This idea requires careful planning.
(予算配分の再考、チームコミュニケーションの改善、新ソフトの導入が必要です。この考えには綿密な計画が求められます。)

「この考え(this idea)」とは、三つの提案のうちの一つを指すのか、三つをまとめた総合的な戦略を指すのか、文章からは判然としません。

抽象的な概念を「it」「this」で受けすぎるケース

特に論理的で複雑な説明をした直後に、それを「It is clear that…」などとまとめたくなる衝動に駆られることがあります。しかし、この「It」が何を指しているのか、書き手以外には明らかでないことが多いのです。

複数の要因が絡み合った結果や、段階を経たプロセスは、単純な代名詞で受けるのではなく、キーワードを繰り返すか、要約した名詞句で言い換える方が安全です。

「one」と「it」の使い分け失敗による混乱

最後に、日本人学習者が混同しがちな「one」と「it」の混乱です。

If you don’t have a laptop, you can borrow one from the office. Please return it by Friday.
(ノートパソコンを持っていなければ、事務所から一つ借りることができます。それを金曜日までに返してください。)

この文では、「one」で借りるのは「不特定の一台のノートパソコン」です。しかし、次の文で「it」を使うと、それは「特定された、あなたが借りたその一台」を指すことになります。二つの文の間に「そのパソコンを特定する」プロセスが欠けており、読み手は「借りる行為そのものを返す」という不合理な解釈をしてしまう可能性さえあります。

4つのパターンを振り返る
  • 複数の候補があると、読み手は推測を強いられる。
  • 「this + 抽象名詞」だけでは、範囲が絞りきれない。
  • 複雑な概念を単純な代名詞で受けると、情報が消失する。
  • 「one」(不特定)と「it」(特定)の混同は、対象をぼやけさせる。

これらのパターンに心当たりがあるなら、あなたの英作文は既に「明確化」のステージへ進む準備ができています。問題が分かれば、対策は見えてくるものです。

参照関係を明確化する3つの設計技術:書く段階で曖昧さを予防する

書く前から 参照関係を設計する。旧情報を代名詞で、先行詞を近くに、名詞で繰り返す

指示語による混乱の原因が分かったら、次はそれを防ぐ方法です。文法の正しさを超えて、読み手が迷わない文章を設計する技術が求められます。ここでは、書く段階から曖昧さを予防する実践的な3つの技術を紹介します。

「旧情報→新情報」の流れを代名詞で強化する

読み手がすでに知っている情報を「旧情報」、これから提示する情報を「新情報」と呼びます。読みやすい文章は、この旧情報から新情報へと自然に流れます。

代名詞は、この流れを滑らかにする潤滑油です。文の中で一度登場した名詞(旧情報)を、その後の文で繰り返すときに代名詞に置き換えることで、文章が冗長にならずに済みます。しかし、この使い方を誤ると、何が旧情報なのかが分からなくなり、混乱の元になります。

原則の確認

代名詞は、読み手が文脈から確実に特定できる「旧情報」を指すために使います。新しく登場した概念や、文脈から離れた要素を指すのに使ってはいけません。

次の例を見てください。代名詞「it」が何を指すのか、読み手は一瞬考え込んでしまいます。

曖昧な書き方明確な書き方
新しいプロジェクトの提案が承認された。Itは予算を大幅に上回った。新しいプロジェクトの提案が承認された。その提案の初期コスト見積もりは予算を大幅に上回った。

左の文では、「it」が「提案」なのか、「承認」という行為なのか、それとも「プロジェクト」自体なのかが曖昧です。右の文では、代名詞を使わずに「その提案の初期コスト見積もり」と具体的な名詞句で繰り返すことで、何について話しているのかを明確にしています。

代名詞の直前に「明確な先行詞」を配置する

代名詞が指す名詞を「先行詞」と言います。読み手が迷わないためには、この先行詞が代名詞のできるだけ近く、理想的には直前の文に明確に存在していることが重要です。

代名詞と先行詞の距離が離れるほど、参照関係は曖昧になります。

複数の文や節を挟むと、読み手は「今の『it』は、さっきのあれのことかな?」と記憶を遡らなければならず、負担がかかります。特に、複数の候補となる名詞が文中に散らばっている場合、このリスクは高まります。

曖昧な書き方明確な書き方
マネージャーはチームに新しい報告書のフォーマットを提案した。開発部門はそれに反対したが、営業部門は支持した。結局、itは採用されなかった。マネージャーはチームに新しい報告書のフォーマットを提案した。開発部門はそれに反対したが、営業部門は支持した。結局、その新しいフォーマットは採用されなかった。

左の例では、「it」の直前には「支持した」という行為があり、「それ」という代名詞も登場しています。これでは「it」が「提案」なのか「フォーマット」なのか、判断が難しくなります。右の例のように、重要な概念は代名詞で省略せず、名詞で繰り返すことで、迷いを完全に排除できます。

代名詞では受けず、名詞(句)で繰り返す戦略的選択

特に重要な概念や、少し複雑な内容を説明するときは、あえて代名詞を使わないという選択が有効です。代名詞を使うと文章が簡潔になりますが、明確さを損なうリスクがあります。そのリスクを避けるためには、キーワードを変えずに名詞や名詞句で繰り返す「戦略的な繰り返し」を採用しましょう。

  • 文の主役となる主題
  • 比較や対照の対象
  • 長い説明の後に結論で再び触れる要素

これらの場面では、代名詞による省略よりも、名詞による明確な提示を優先します。少し冗長に感じても、読み手が一瞬でも「これって何だっけ?」と思考を止めることを防げます。

技術文書やビジネスメールでは特に重要

誤解が大きなコストにつながる場面では、簡潔さより明確さを優先します。契約書、仕様書、重要な決定を伝えるメールなどでは、この「名詞での繰り返し」を積極的に使いましょう。読み手の解釈が一通りに定まることを最優先します。

これら3つの技術を意識するだけで、あなたの英作文はぐっと読み手に優しいものになります。文法チェッカーでは検知できない「曖昧さ」を、書く段階で設計して排除する。それがプロのライティングの一歩です。

『this』『it』『that』『one』の使い分けマップ:ニュアンスの違いを理解する

指示語の参照関係を明確にする技術を学ぶ上で、核となるのは各単語のニュアンスを正確に掴むことです。日本語では「これ」「それ」「あれ」と訳されるこれらの語は、英語では物理的な距離だけでなく、心理的な距離や、指し示す情報の範囲に明確な違いがあります。この違いを理解すれば、曖昧さを解消する最初の大きな一歩となります。

物理的・心理的距離を示す『this』と『that』

基本として知っておくべきは、thisが「近い」もの、thatが「遠い」ものを指す傾向がある点です。これは物理的な距離だけでなく、話し手の心理的な距離感も反映されます。

『this』は話し手に近く、直接的に関与しているもの。『that』は話し手から離れており、客観的に捉えているもの。

例えば、会話の中で自分が今持っているものを指す時は「Look at this book.」と言います。一方、少し前に話題に上がった本や、相手が持っている本について言及する時は「I’ve read that book.」となります。このように、thisは「今ここにあるもの」「直前に言及したもの」を指し、thatは「少し離れたもの」「以前話題になったもの」を指す傾向があります。

実践例で確認

会議中に「先ほどの提案についてですが」と言いたい場合、直後の文脈では「Regarding this proposal…」となります。一方、別の議題を話した後に前の提案に戻る時は、「Regarding that proposal we discussed earlier…」と表現することで、時間的・心理的な距離感を表現できます。

文全体や前の主張を受け止める『this』と『that』

より高度な使い方として、thisthatは前の文や主張の内容全体を指すことができます。ここでも重要なニュアンスの違いが生まれます。

Thisは、直前の内容を「引き取って」、さらにその内容について掘り下げたり結論を導いたりする際に使われます。話の流れを前に進める役割です。

  • This is why we need to reconsider our strategy. (これが理由で戦略の再考が必要だ)
  • The report shows a significant increase in sales. This indicates our marketing efforts are effective. (報告書は売上大幅増を示す。これは我々のマーケティング努力が効果的であることを示す)

一方、Thatは、前の内容を「一段落つけたもの」として客観的に指し示し、要約や意味づけをする時に使われます。

  • That means we have successfully achieved our goal. (それは目標を達成したことを意味する)
  • He said he would quit. That was unexpected. (彼が辞めると言った。それは予想外だった)

特定の単数名詞を受ける『it』の役割

Itは、文脈の中ですでに特定された一つのものを指す最も一般的な代名詞です。多くの場合、the + 名詞で示されるものを指します。

『it』を多用しすぎると、何を指しているのか分からなくなる混乱の元になる。

問題は、itが指す対象が明確でないまま、主語として連続して使われることです。

例えば「I bought a new laptop. It was on sale. It has a great battery life.」という文では、二つ目のitは「そのノートパソコン」を指していると理解できます。しかし、itを主語として連続させると、文が長くなるにつれて参照関係がぼやける可能性があります。対策としては、時折具体的な名詞(the laptop, the deviceなど)で置き換えることが有効です。

『it』の特別な使い方

天候、時間、距離、状況などを表す非人称の主語としてもitは頻繁に使われます(例: It is raining. It is 10 o’clock.)。この用法では、特定の名詞を指さないため、混乱は生じにくい特徴があります。

不特定の「もの」を表す『one』の機能

最後に、oneの役割です。Onea/an + 名詞で示された不特定の一つのものを指す時に使います。Itと混同されやすいですが、決定的な違いがあります。

『a/an + 名詞』を受けるのは『one』。『the + 名詞』を受けるのは『it』。

このルールを理解すれば、次のような誤りを防げます。

  • 良い例: I need a pen. Do you have one? (ペンが一本必要だ。持っていないか?)
  • 悪い例: I need a pen. Do you have it? (✗ このitは特定のペンを指すため、不自然)

また、oneは「〜なもの」という一般論を述べる時にも使われます(例: A good teacher is one who inspires students.)。この場合、特定の教師ではなく、「良い教師というものは」という概念を指しています。

これらの違いを視覚的に捉えるために、以下の簡易マップを頭の中に描いてみましょう。単語が指し示す「対象の特定性」と「距離感」の二軸で整理すると、使い分けがはっきりします。

指示語指す対象の性質心理的・時間的距離
this特定・不特定のもの、前の文全体近い(今ここ、直後)This is important.
that特定・不特定のもの、前の文全体遠い(少し前、客観的)That was surprising.
it特定された単一のもの (the +名詞)距離は中立I have a car. It is red.
one不特定の一つのもの (a/an +名詞)距離は中立I want a cookie. May I have one?

このマップを意識しながら英作文をすることで、読み手が迷う隙間を事前に埋める設計が可能になります。次に、これらの知識を基に、実際に混乱を招かない文章を書くための具体的な技術を見ていきましょう。

最終チェックのための実践ワークフロー:書いた文章を客観的に点検する

これまで、代名詞のニュアンスと参照関係を書く段階で設計する技術について見てきました。しかし、書いている最中はどうしても主観が入り、思い込みによる曖昧さを見逃してしまうものです。ここでは、書いた後で確実に曖昧さを取り除くための、誰でも実行できる具体的な推敲ワークフローを紹介します。この手順に沿うだけで、あなたの英作文から読み手の誤解を招くリスクを大幅に減らせます。

「代名詞狩り」:全ての指示語・代名詞に印を付ける

推敲の第一歩は、文章中のすべての指示語を「見える化」することです。完成した文章を読み返し、thisitthatonetheythemtheirなどの単語に、文字通りマーカーで印を付けるか、ハイライトしましょう。

この作業は、単なる作業ではなく、自分がどれだけ代名詞に依存しているかを客観的に知る重要なプロセスです。意外に多くの代名詞を使っていることに気づくでしょう。

ポイント

「狩り」の対象は、人称代名詞だけでなく、suchsothe formerthe latterなど、前の内容を指し示す語句も含めます。これらも参照関係の混乱を招く可能性があります。

「一問一答」:各代名詞に対して「これは何を指す?」と自問する

印を付けた各代名詞のところで一旦立ち止まり、自分自身に問いかけます。「この it は、何を指しているのか?」「この they の主語は、直前のどれか?」

その答えが、即座に、かつ唯一の名詞(または明確な節・句)として頭に浮かぶでしょうか。もし「えっと…」と一瞬迷ったり、複数の候補が思い浮かんだりした瞬間、その代名詞は問題があると判断できます。それは読み手にも同じ迷いを与えるからです。

迷いや複数の解釈が生じる代名詞は、そのままにせず必ず修正の対象とします。

「読み手テスト」:指す対象を一文で説明できるか確認する

「一問一答」で指す対象が分かったら、その関係を第三者に説明するつもりで、簡潔に言語化してみます。例えば、「この this は、直前の文で述べられた『プロジェクトの遅延』という問題全体を指している」といった具合です。

この「一文説明」がスムーズにできれば、参照関係は明確です。逆に、説明が長くなったり複雑になったりする場合は、代名詞が指す範囲が広すぎる、または抽象度が高すぎる可能性があります。これは修正が必要なシグナルです。

修正の選択肢:繰り返す、言い換える、文を組み替える

問題のある代名詞を見つけたら、以下の3つの方法のいずれかで修正します。状況に応じて最適な方法を選びましょう。

STEP
1. 名詞で繰り返す

最も確実な方法です。代名詞を、それが指す本来の名詞に戻します。特に重要な概念や、少し前に出てきた情報については、遠慮せずに繰り返すことで明確さが増します。

  • 例 (修正前): The team analyzed the data. It was inconclusive. (Itがdataなのかanalysisなのか曖昧)
  • 例 (修正後): The team analyzed the data. The analysis was inconclusive.
STEP
2. 同義語で言い換える

繰り返しが単調に感じられる場合に有効です。同じ概念を別の言葉で表現します。語彙力を活かせる場面ですが、言い換えが不自然にならないように注意します。

  • 例 (修正前): Implementing the new policy faced strong resistance. This must be addressed. (Thisがresistanceなのかpolicy implementation全体なのか)
  • 例 (修正後): Implementing the new policy faced strong resistance. This opposition must be addressed.
STEP
3. 文の構造を組み替える

根本的な解決策です。代名詞が必要なくなるように、情報の流れを整理し直します。関係代名詞や分詞構文、接続詞を使って文を結合する方法が効果的です。

  • 例 (修正前): She gave a presentation. It was well received by the audience. (Itがpresentationなのか彼女の話し方なのか)
  • 例 (修正後): The presentation she gave was well received by the audience.
  • 別の修正例: Her presentation was well received by the audience.

このワークフローは、英作文に限らず、日本語で書く時にも応用できる強力な推敲技術です。最初は面倒に感じるかもしれませんが、習慣化すれば、あなたの書くすべての文章の精度と信頼性が格段に向上するでしょう。

著者プロフィール

大学受験・英語資格試験塾講師。大学時代にアメリカへ1年間留学。卒業後は海外書籍を取り扱う出版社で編集職に6年間従事した後、英語教育の現場へ転身。大学受験生向けや、社会人の英語資格試験対策の講義を担当し、実践的で分かりやすい解説に定評がある。出版社時代に様々なジャンルの英語書籍を担当した経験から、法律から工学まで業界特有の英語表現やビジネス英語に関する幅広い知識を持つ。また、二児の母という立場から、実体験に基づいた子どもの英語教育に関する発信も行っている。

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