TOEICリスニングセクションの後半、Part 3(会話問題)とPart 4(説明文問題)は、多くの受験者にとって大きな「壁」です。音声は一度しか流れず、一度の放送で複数の設問に答えなければなりません。リスニング力そのものはあるのに、思うようにスコアが伸びず、もどかしい思いをしている方も多いのではないでしょうか?実は、Part 3&4で高得点を取るためには、「聞く力」だけでは不十分です。このセクションでは、スコアを左右する戦略的な解答技術に焦点を当て、あなたが抱える悩みの根本原因を掘り下げていきます。
なぜPart3&4で失点するのか? 原因を徹底解剖
Part 3&4でスコアが伸び悩む学習者の多くは、一つの大きな誤解をしています。それは「リスニング力 = 解答力」という考え方です。もちろん、音声を理解できることは大前提ですが、このセクションは「制限時間内に、大量の情報を処理し、正確に選択肢を選び取る」という総合的な能力が試されています。つまり、聞き取れていても、戦略がなければ正解にたどり着けないのです。
「聞き取れているのに間違える」の正体
音声の内容は大まかに理解できた。なのに、いざ設問を読むと「あれ?今の話、どっちだったっけ?」と迷ってしまう。この経験がある方は多いはずです。
- 情報の処理速度不足: 音声を「理解しながら聞く」ことに精一杯で、その情報を記憶に留め、整理する余裕がありません。結果、設問が問うポイントが記憶から抜け落ちてしまいます。
- 選択肢的読解力不足: 選択肢は音声の内容を言い換えていることがほとんどです。単語が一致するだけの「ひっかけ選択肢」に引っかかったり、微妙なニュアンスの違いを見抜けずに間違えたりします。
Part 3&4は「聞き取り」だけでなく、「情報処理」と「選択肢分析」の複合テストです。音声を理解した「後」に何をするかが勝負を分けます。
時間切れの負の連鎖を断ち切る
Part 3&4最大の敵は「時間」です。音声は止まってくれません。一つの設問に悩みすぎて時間を消費すると、次の設問の音声が始まり、次の問題の準備ができていない…という負の連鎖に陥ります。
一つの問題に固執することが、次の問題、そのまた次の問題の崩壊を招きます。
- 「捨て問」の判断ができない: 全問正解を目指し、確信の持てない問題にまで時間をかけ、結果的に後の確実に取れる問題を落としてしまう。
- 「先読み」の習慣がない: 音声が流れる前に、設問と選択肢に目を通す「先読み」をしないため、何を聞けばいいのか分からない状態で音声を聞き始める。
- 効率的なメモが取れない: メモを取ろうとしても、全てを書き留めようとして音声についていけなくなる。あるいは、後で見ても意味が分からないメモになってしまう。
これらの原因は、すべて「解答戦略の欠如」に集約されます。次のセクションからは、この負の連鎖を断ち切り、Part 3&4で確実に得点を積み上げるための具体的な「先読み・捨て問・メモ術」を、ステップバイステップで解説していきます。
戦略的「先読み」の黄金律:何を、いつ、どの順番で読むか
前のセクションでは、Part 3&4で失点する原因は「情報処理の過負荷」にあると解説しました。この問題を解決する最も強力な武器が「先読み」です。しかし、「先読み」という言葉を聞いて、「設問と選択肢を全部読むこと」だと思っていませんか? 実は、ただ闇雲に読むだけでは時間が足りず、逆に混乱を招きます。ここでは、限られた時間で最大の効果を上げるための「戦略的先読み」の技術を、具体的な手順と共に詳しく説明します。
先読みの目的は、音声を「探しながら」聞くのではなく、「答えが流れてくるのを待ち構える」状態を作ることです。
「5秒前」の先読みはもう古い?最適なタイミング
従来のアドバイスでは、「音声が流れる5秒前に先読みを始めよう」と言われることがありました。しかし、これはリスクが高く、現在では推奨されません。なぜなら、その5秒間で読める情報量は限られており、慌てて読むことで重要なキーワードを見落とす可能性があるからです。
では、いつ読むのがベストなのでしょうか?答えは、「一つ前の問題の音声が流れている間」です。TOEICは問題と問題の間のインターバル(無音時間)が非常に短いため、その時間だけに頼るのは危険です。むしろ、現在解いている問題の音声を聞きながら、次の問題の設問に目を通す「並行処理」が高得点の鍵となります。
「Directions:」や「Questions ○○ through ○○ refer to the following…」といった音声ガイドは、「今から先読みを開始する合図」だと考えましょう。このガイドが流れている約10秒間と、その後の会話・説明文の最初の部分を聞きながら、次の設問群に目を走らせます。これにより、実質的に20秒以上の先読み時間を確保できます。
設問タイプ別・先読みすべきキーワード一覧
すべての単語を読もうとする必要はありません。設問の疑問詞(5W1H)と、それに続く主語や目的語に集中して読むことで、脳に「何を聞き取ればいいか」というフィルターをセットできます。
| 設問のタイプ(疑問詞) | 先読みで注目すべきポイント | 例 |
|---|---|---|
| Who(誰) | 人物の役職、名前、登場人物の関係性。 | Who is the man speaking to? (話している相手は誰か) |
| What(何) | 具体的な行動、物、計画、問題点。 | What does the woman ask the man to do? (女性は男性に何をするよう頼んだか) |
| When / Where(いつ・どこ) | 時間(日付、時刻、期間)、場所(会議室、都市名)。 | Where does the conversation take place? (会話はどこで行われているか) |
| Why(なぜ) | 理由、原因、目的。 | Why is the meeting postponed? (なぜ会議は延期されたか) |
| How(どのように) | 方法、手段、状態、数量。 | How will the product be shipped? (製品はどのように発送されるか) |
3つの設問全てにさっと目を通し、それぞれが「Who」「What」「Why」のどれに当たるかを瞬時に判断します。これだけで、聞くべき情報の種類が明確になります。
設問文中の主語(the man, the woman, the company)や、目的語(the report, the meeting time, a problem)など、具体的な名詞に注目します。これらが音声の中で言い換えられる可能性があることも念頭に置きましょう。
選択肢を全部読む時間がない場合は、冒頭の2〜3語だけを比較します。例えば、全て「To + 動詞」で始まっていたら、その後の目的語だけに注目すればよいのです。
選択肢が長い時はどうする?『部分読み』の極意
Part 3&4では、選択肢が1文や2文で構成されている長文タイプが出題されます。このような選択肢を最初から最後まで読んでいたら、時間がいくらあっても足りません。ここで必要なのが「部分読み」の技術です。
- 共通部分を無視する: 4つの選択肢の冒頭がすべて同じ場合(例: “They will discuss…”)、その部分は読み飛ばし、異なる部分だけを比較します。
- 対比構造に注目する: 選択肢に “but”、”however”、”instead” などの逆接の接続詞があれば、その前後の内容の対比がポイントです。
- 否定語(not, never)を見落とさない: 選択肢の最後に “not” が付いているだけでも、意味が真逆になることがあります。文末まで一瞬目を走らせる習慣をつけましょう。
絶対にやってはいけない「先読み」のNG行動
- 現在の問題を解くのをやめて、次の問題を読み始める: これでは肝心の現在の問題を聞き逃し、二重に失点します。あくまで「聞きながら」が原則です。
- 選択肢の細部まで理解しようとする: 先読みは「理解」ではなく「情報のスキャン」です。細かい前置詞や冠詞にこだわらないでください。
- 先読みに失敗しても引きずる: ある問題で先読みがうまくいかなくても、気にせず次の問題に切り替えましょう。1問に固執することが連鎖的なミスを生みます。
先読みを練習し始めた当初は、現在の問題を聞くことと次の問題を読むことの両立が難しく、かえってスコアが下がる「ジンクス」があります。これは脳が新しい処理方法に慣れていないだけの現象です。焦らず、まずは簡単な問題集で「聞きながら目で追う」練習を積み重ねてください。この技術が体に染み込めば、Part 3&4は圧倒的に「解きやすい」セクションに変わります。
本番で迷った時の「捨て問」判断アルゴリズム
「戦略的先読み」を駆使しても、すべての問題を完璧に解き切ることは難しいのがTOEICの現実です。特に本番では、緊張や予期せぬ難問によって「あ、これはわからない…」と感じる瞬間が必ず訪れます。その瞬間に「解けない問題に執着して、その後の設問まで連鎖的に落としてしまう」のが最悪のシナリオ。ここでは、一点でも多くスコアを拾うための「戦略的撤退」、すなわち「捨て問」の正しい判断基準と行動フローを解説します。潔く捨てる勇気が、あなたのスコアを守ります。
捨てるべき問題の3つの特徴
「捨てる」と決めるには、まず「捨てる価値がある問題」を見極める目が必要です。以下の3つの特徴に当てはまる問題は、時間と集中力を消費する「コスパの悪い問題」である可能性が極めて高いです。
- 話者の発言が否定・条件付きで複雑な問題
音声の中で「If we don’t get the approval by Friday, we might have to postpone the event, unless the manager makes an exception.」のように、否定(don’t, not)や条件(if, unless)が複雑に絡み合った文が聞こえたら危険信号です。こうした問題は、設問で「何が起こるか」ではなく「何が起こらないか」を問うケースが多く、正答の選択肢も紛らわしいものになりがちです。 - 数字や固有名詞が羅列され、細部を問う問題
「The meeting is scheduled for 2:15 PM in Conference Room B, but the training session will be at 3:30 in Room A on the 4th floor.」のように、時間、場所、名前などの具体的な情報が次々と提示される問題です。こうした問題は、一つの細かい情報(例:トレーニングは何階か?)だけを聞き取れていれば解けますが、聞き逃したらほぼ確実に失点します。 先読みでこうした「詳細情報問題」の可能性を察知したら、覚悟を決めましょう。 - 消去法で2択まで絞れず、どちらもあり得そうに感じる問題
音声を聞き終わり、選択肢を検討したときに「AもBも、どちらも部分的に正しい気がする…」と迷う問題です。これは、問題自体が受験者の「推測」や「一般常識」を誘導するように作られている可能性があります。TOEICは「聞いた情報のみ」から解答を導くテストです。迷った時点で、それは「捨て問」のサインと考えてください。
「即時撤退」と「後回し」を使い分ける
「捨てる」と一口に言っても、そのタイミングには2種類あります。状況に応じて適切な判断を下せるよう、以下のフローを頭に叩き込んでください。
※下記はフローチャートの代替説明です。本番ではこの流れで思考を整理してください。
音声を聞き終わり、解答を選ぼうとした瞬間に「わからない」「迷う」と感じる。
- 影響あり(即時撤退):迷っている間に、次の設問の音声が流れ始めてしまいそう。または、迷いで集中が切れ、次の設問の先読みができなくなりそう。
→ 「即時撤退」を選択。 迷っている設問には適当にマーク(例えば、迷ったらBにマークするなど、自分ルールを決めておく)し、直ちに次の設問の先読みに移る。 - 影響なし(後回し可能):まだ次の設問に関する音声が流れるまでの時間的余裕がある。
→ 「後回し」を選択。 迷っている設問番号をメモ用紙の隅にササッとメモし、次の設問の先読みを完了させる。全ての設問の音声が流れ終わった後、マークシートを塗る時間(約30秒)で、メモした問題に戻って考える。
「後回し」にした問題に戻ったら、10秒以内に答えを出す。
それでも決め手がない場合は、最初に直感で選んだ選択肢か、自分の「捨て問マークルール」に従ってマークし、潔く次のパートへ気持ちを切り替える。
捨てた後のメンタルリカバリー法
問題を捨てる決断をしても、そのこと自体が気になってしまい、メンタルが乱れては元も子もありません。ここで重要なのは、「1問や2問の失点は、戦略上やむを得ないコストである」と割り切る考え方です。
- 「捨てた」ではなく「戦略的にリソースを再配分した」と考える:難問に5分悩む代わりに、確実に取れるはずの簡単な問題3問に集中できたなら、それは明確なプラスです。自分の選択を肯定しましょう。
- 次の設問に全力を注ぐ「切り替えスイッチ」を作る:迷い、マークし、次の先読みに移る一連の動作を、無感情の「作業」としてルーティン化します。「ああ、ダメだ…」と感情が入る隙を与えません。
- 試験終了後の「見直し」は絶対にしない:捨てた問題が気になり、試験後に答え合わせをしたくなるかもしれませんが、それは絶対に避けてください。 答えがわかってもスコアは変わりません。むしろ「やっぱり間違えてた…」と落ち込む原因になり、次のリーディングセクションに悪影響を及ぼします。
「捨て問」戦略の最大の敵は「空白のままにしておくこと」です。TOEICは誤答に減点はありません。 迷っても適当にマークすれば、運よく正解する可能性すらあります。しかし、空白のままでは確実に0点です。迷ったら、必ず何かしらマークする。これだけは絶対に守ってください。
プロが教える「メモ術」:書くべき情報と書かなくていい情報
前のセクションまでで、「先読み」で何を聞かれるか予測し、「捨て問」でリスクを最小化する技術を学びました。最後に攻略の要となるのが「メモ取り」です。しかし、「メモを取ろうとすると、音声を聞き逃してしまう」という悩みを抱える学習者は非常に多いもの。この問題は、メモの目的と書き方を間違えていることに起因します。ここでは、TOEICリスニングに特化した、「聞きながら、素早く、確実に思い出せる」メモの技術を徹底解説します。
メモは「想起のトリガー」である
まず、最も重要な前提を確認しましょう。TOEICのメモ用紙は、「美しいノート」を作る場所ではなく、「記憶を呼び戻すためのキーワード」を走り書きする場所です。音声が流れている最中に、すべての情報を完全な英文で書き留めることは不可能です。むしろ、それを試みると、処理速度が追いつかずにパンクしてしまいます。
メモの目的は「記録」ではなく「想起」。書いた数秒後に見て、その瞬間の記憶を鮮明に蘇らせる「トリガー(引き金)」になれば成功です。
Part3会話問題で必須のメモ項目
Part3では、2人または3人の登場人物による会話が流れます。ここでメモすべき核心は、「誰が(Who)、何を言ったか(What)」の対応関係です。
- 登場人物の特定:先読みで確認した役職(例: Manager, Client)や、音声冒頭で呼びかけられる名前(例: John, Mary)を略記します。自分だけの記号(例: M=マネージャー, C=クライアント, W=女性, M=男性※性別記号と混同しないよう注意)を決めておくと速いです。
- 発言内容の紐付け:各人物の発言の要点を、その人物の記号の横に矢印(→)やコロン(:)でつなげて書きます。例えば「M→ need report by Fri」のように。
- 話題の転換点:「But」「However」「So」「Actually」などの後に来る情報は、設問になりやすい重要ポイントです。これらの単語自体を「!」や「↑」などの記号でメモに刻み、その後の内容を重点的に書き留めます。
- 具体的な指示・変更点:新しい会議の日時、変更後の納期、次のアクション(誰が何をするか)は、数字や記号を交えて略記します。
Before / After 比較イメージ
効果的なメモのイメージを、具体的な会話例で比較してみましょう。
(女性マネージャーが男性スタッフに) 「ジョン、今週の金曜日までにレポートが必要なんだ。でも、クライアントからの新データが明日届くから、それを受け取ってから作業を始めてくれない? そうすれば月曜日の朝には仕上がるはずだよ。」
| 非効率なメモ例 | 効果的なメモ例 |
|---|---|
| The manager needs the report by Friday. But new data comes tomorrow. Start after that. Finish Monday morning. | W(Mgr) → report by Fri. But! New data tmrw. Start after → done Mon AM. |
Part4説明文問題で必須のメモ項目
Part4はアナウンスやスピーチなど、一人の話者が流れる形式です。メモの焦点は、「話の構造(何についての説明か)」と「詳細情報の羅列」を切り分けることです。
- トピックと話者:冒頭で「This is an announcement for…」などと言うので、その主題(会議、製品アップデート、工事情報など)と話者の立場をメモします。
- 時系列・手順の流れ:過去の経緯、現在の状況、今後の予定を矢印(→)や番号(1. 2. 3.)でつなげます。「First」「Then」「Finally」などの順接の言葉に注意。
- 数字・固有名詞の略記:日付(7/15→7/15)、時間(3 PM→15)、金額($500→500)、場所名(Conference Room B→CR B)は、必ずメモします。アルファベットと数字の組み合わせは思い出しやすいです。
- 変更・例外事項:Part3と同様、「Please note that…」「The only exception is…」といったフレーズの後は要注意です。
メモ取りが逆に聴く邪魔にならないために
最後に、メモ取りを「武器」にするための実践的な心得を3つ紹介します。
本番で考えている余裕はありません。事前に自分専用の「略記辞典」を作りましょう。
例:because→b/c, before→b4, with→w/, increase→↑, decrease→↓, important→!, question→?, people→ppl, tomorrow→tmrw, department→dept.
聞こえた英語を一度日本語に訳してからメモするのは、時間と脳のリソースを大きく浪費します。聞こえたキーワードをそのままアルファベットで書き留める練習を積みましょう。最初は難しくても、慣れれば処理速度が格段に上がります。
メモ用紙に長文を書いてはいけません。設問を解く際、メモはパッと見て内容を思い出すための「地図」です。矢印、丸囲み、線による囲みなど、視覚的な配置を意識して書くことで、情報の関係性が一瞬で理解できるようになります。
最も避けるべきことは、「メモを取ること自体が目的化し、音声をしっかり聞けなくなる」ことです。もしメモを取りながら内容が頭に入ってこないと感じたら、いったんメモをやめ、聴くことに集中する勇気も必要です。メモは「聴く」を補助する技術であることを常に心に留めておきましょう。
実践!Part3&4 模擬問題で戦略を体感する
これまで学んだ「先読み」「捨て問」「メモ術」の3つの戦略は、知識として理解するだけでは意味がありません。本番で反射的に使えるよう、実際の問題を解く過程で体に染み込ませることが最も重要です。ここでは、オリジナルの模擬問題を解きながら、各戦略をどのように組み合わせて使うのか、その具体的な思考過程を追体験していきましょう。
【サンプル会話】先読みから解答までの思考過程
まずは、Part3形式の会話問題で「先読み」を実践してみます。以下の設問と選択肢を音声が流れる前に先読みしてください。
設問
41. What are the speakers mainly discussing?
42. What does the woman suggest the man do?
43. What will the man probably do next?
先読みした瞬間に、以下のように「聞くべきこと」を明確化します。
- 41番(主旨): 会話全体のテーマは何か?「何について話しているか」に集中。
- 42番(提案): 女性が男性に「〜することを提案(suggest)している」内容をキャッチ。動詞のsuggestに注目。
- 43番(次の行動): 男性が「次にすること(probably do next)」を聞き取る。未来の予定や意向を示す表現に注意。
音声は以下の内容です。先読みしたポイントを意識しながら聞く(読む)イメージを持ってください。
(Man): Hi Sarah, I was just looking at the quarterly sales report. The numbers for the East region are quite disappointing.
(Woman): I saw that too. It seems our main competitor launched a very aggressive promotion there last month.
(Man): That explains it. We need to respond quickly. Any ideas?
(Woman): Well, I think we should consider offering a limited-time discount on our premium package. It might help us regain some market share.
(Man): That’s a good point. Let me draft a proposal for that and run it by the marketing team first thing tomorrow morning.
41. 解答: A discussion about a regional sales problem and a possible solution.
→ 先読みした「主旨」に沿って聞くと、「東地区の売上不振」と「競合のプロモーション」が原因で、「割引提案」という解決策を話していることがわかります。選択肢の中から最も核心を捉えたものを選びます。
42. 解答: Offer a temporary discount on a specific product.
→ 女性のセリフ「I think we should consider offering a limited-time discount on our premium package」がそのまま解答です。「suggest」の同義表現「I think we should…」に注目できましたか?
43. 解答: Prepare a document for another department to review.
→ 男性の最後のセリフ「Let me draft a proposal… and run it by the marketing team…」が「次の行動」です。「draft (草案を作る)」「run it by (〜に確認を取る)」という表現がキーでした。
【サンプル説明文】メモを取るポイントの具体例
次に、Part4形式の説明文問題で「メモ術」を実践しましょう。以下の設問を先読みした後、どのようにメモを取るべきか、その一例を示します。
設問
71. Who is the announcement intended for?
72. What has been recently renovated?
73. What are listeners asked to do during the work?
先読みから、71番(対象者)、72番(何が新しくなったか)、73番(依頼内容)の3点を聞き取ればよいと予測できます。以下が音声(アナウンス)の内容です。
“Attention all residents of the Lakeside View Apartments. This is a reminder from building management. We are pleased to inform you that the renovation of the main lobby and reception area has been completed as of yesterday. The new furniture and lighting have been installed. However, please note that the final electrical work for the new lighting system will continue through this Friday. During this period, please use the side entrance when entering or leaving the building after 6 PM. We apologize for any inconvenience and thank you for your cooperation.”
メモの取り方(例)
| 設問番号 | キーワードメモ(例) | メモの意図 |
|---|---|---|
| 71. | → resident, Lakeside Apt | 「対象者」は「住民」。固有名詞は頭文字などで省略可。 |
| 72. | reno: lobby, reception | 「renovated」の同義語「reno」でメモ。何が「lobby & reception」。 |
| 73. | ask: use side entr (after 6pm) | 「依頼内容」は「side entranceを使う」。条件「午後6時以降」も必須。 |
このメモ例のポイントは「設問番号と対応するキーワードだけを書く」ことです。文章を書くのではなく、「resident」「lobby」「side entr」といった想起のトリガー(きっかけ)となる単語をメモします。また、「after 6pm」のような条件や時制の情報は確実に書き留めることが、ひっかけ選択肢を避けるカギになります。この程度の簡潔なメモであれば、音声を聞き逃すリスクは最小限に抑えられます。
想定される落とし穴と回避策
TOEICには定番の「ひっかけパターン」が存在します。先読みとメモ術を駆使しても、これらの罠にはまると誤答を選んでしまいます。代表的なパターンと回避策を確認しましょう。
- 「部分一致」の罠
音声の一部の単語だけが選択肢に登場し、つい選んでしまう。しかし文脈は全く異なる。
回避策: メモを取って全体の流れ(誰が、何を、いつ)を把握し、断片的な単語に惑わされない。 - 「時制・条件」の罠
「will do(これからする)」と「has done(もうした)」を混同させる。または「usually(普段は)」と「today only(今日だけ)」を入れ替える。
回避策: メモに時制(未来?過去?)や条件(いつ?どこで?)を必ず書き加える習慣をつける。 - 「否定・逆説」の罠
「We planned to A, but we ended up doing B. (Aする予定だったが、結局Bした)」のような流れで、計画段階(A)の内容を正解のように見せる。
回避策: 「but」「however」「actually」などの逆接の信号が聞こえたら、その後の内容が真の答えである可能性が高いと警戒する。
模擬問題を解いた後、間違えた問題があった場合は、単に答えを確認するだけでなく、「なぜそのひっかけ選択肢を選んでしまったのか」を分析してください。それが「部分一致」の罠だったのか、「時制」を見落としたのか。その原因を特定し、次に同じパターンが出た時に「これはあの罠だ」と見抜けるようになることが、スコアアップの最短ルートです。戦略を知り、実践し、反省する。このサイクルを繰り返すことで、Part3&4は確実に得点源に変わっていきます。
本番1週間前からの最終調整メニュー
これまで戦略を学び、模擬問題で経験を積んできました。しかし、知識や経験を「本番で発揮できる確実な実力」に昇華させるには、直前期の質の高い練習が不可欠です。ここでは、試験日まで残り数日というタイミングで行うべき、最終調整の具体的なメニューを紹介します。この期間にやるべきことは「新しい知識の詰め込み」ではなく、「体に覚え込ませたリズムと判断力の精度を極限まで高めること」です。
- リズムの固定化:先読みと解答の理想的な時間配分を無意識で行える状態にする。
- 判断力の鋭敏化:迷った瞬間に「捨てるべきか、粘るべきか」を瞬時に判断できる感覚を磨く。
- コンディションのピーク調整:試験当日の同じ時間帯に、脳と耳を最高の状態に持っていく。
「先読みペース」を体に染み込ませる方法
本番で最も怖いのは、焦りから先読みのペースが乱れ、結果として「音声が流れているのに、設問を読んでいる」という致命的な状態に陥ることです。これを防ぐには、公式問題集などを用いた厳密な「タイムトライアル」が最適です。
- 時間を厳守:本番と同様、リスニングセクション45分を通して解く。途中で止めない。
- 解答用紙(マークシート)を使う:本番同様に塗りつぶす練習をし、時間を計測する。
- 集中できる環境で:可能であれば、図書館の自習室など、少し雑音がある場所が理想的。
Part3とPart4では、以下のタイミングを体感しながら解きます。
- Direction(説明)の時間:この約30秒で、最初の設問セット(Questions 41-43など)の先読みを完了する。
- 会話・トーク再生中:メモを取りながら解答を選ぶ。音声終了と同時に、ほぼ解答を決定する。
- 設問の読み上げ時間(約8秒/問):次の設問セットの先読みに充てる。これが命の時間。
答え合わせでは、正誤よりも「なぜ間違えたのか、なぜ迷ったのか」の原因を「戦略」の観点から分析します。
- 「先読み不足」:設問のキーワードを捉えられていなかった?
- 「メモの取りすぎ」:メモを取っている間に重要な情報を聞き逃した?
- 「粘りすぎ」:明らかに難問なのに時間を費やし、次の先読みがおろそかになった?
捨て問判断力を磨く過去問の使い方
直前期は、新しい問題集に手を出すよりも、一度解いた公式問題集のPart3, 4を「捨て問判断のトレーニング素材」として再利用するのが効果的です。
正答率を上げることが目的ではありません。音声を聞き、「この問題は今の自分に解けるか? 数秒考えて無理なら潔く捨てるべきか?」という判断の感覚を養うことが目的です。
具体的には、以下の手順で行います。
- 音声を再生し、通常通り解く:ただし、1問ごとに強制的に5秒の制限時間を設けます。
- 5秒で解答の目星が立たない問題は「捨て問」とマークする:実際にマークシートは塗らず、問題用紙に「×」などをつけます。
- 全問終了後、答え合わせをする:自分が「捨て問」と判断した問題が、実際に難易度の高い問題だったかを検証します。また、「解ける問題」と判断したのに間違えていた場合は、なぜ判断を誤ったのかを分析します。
この練習を重ねることで、本番で「この問題、時間かけても多分無理だな」という感覚が研ぎ澄まされ、貴重な時間を失うリスクが大幅に減ります。
試験当日のリスニングセクション開始直前ルーティン
試験会場に着いてからリスニングが始まるまでの時間も、点数を最大化するための重要な準備時間です。特にPart3&4のパフォーマンスは、Part1&2をどのように乗り切るかで大きく変わります。
- イヤホンやヘッドホンで、普段から聴き慣れた英語の音声(公式問題集の音声など)を小声で流します。新しいものは聴かないでください。
- 目的は「理解」ではなく,英語の音とリズムに脳と耳を慣らすことです。これだけで、最初の一問目の音声に対する「とまどい」が軽減されます。
- Part1の写真描写問題のDirection(約1分40秒)は、深呼吸をして心拍数を落とし、目の前の問題に集中するための「儀式」の時間と捉えます。
- Part2のDirection中には、「Yes/No疑問文」「Wh疑問文」「選択疑問文」など、応答パターンを頭の中でさっと整理します。これで応答問題への反応速度が上がります。
ここが最大の山場です。試験官が「Part3 の Directions が流れます」と言った瞬間、あなたの脳内スイッチは完全に「先読みモード」に切り替わっていなければなりません。
- Directionが流れている約30秒の間に、Questions 41-43の設問と選択肢に目を通し、キーワードを押さえます。
- 「これから始まるぞ」という緊張ではなく、「さあ、いつものリズムで情報をゲットするぞ」という、ルーティン作業を開始する感覚を持ちましょう。
この一連のルーティンを確立することで、本番のプレッシャーの中でも、練習で積み上げてきた戦略と実力を、最大限に発揮するための土台が固まります。最終調整は、知識の確認ではなく、「自分自身を最高のパフォーマンスが発揮できる状態に整える」作業だと心得て、残りの日数を有効に活用してください。
よくある質問(FAQ)
- 先読みの練習を始めたら、かえってスコアが下がってしまいました。これは普通ですか?
-
はい、非常に一般的な現象です。これは「新しい処理方法に脳が慣れていない」状態です。今まで「聞くこと」に100%集中していた脳が、「聞きながら読む」という並行処理を要求されるため、一時的に処理能力が追いつかなくなります。焦らずに、簡単な問題集で「聞きながら目で追う」という動作自体に慣れる練習を続けてください。1〜2週間続けると、脳が新しい回路を構築し、スコアが元に戻り、その後上昇していきます。
- メモを取ることに集中しすぎて、肝心の音声を聞き逃してしまいます。どうすればいいですか?
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これはメモの目的を「記録」と誤解している典型的な症状です。メモは「想起のトリガー」であり、全てを書き留める必要はありません。まずは「メモを取るのをやめる」勇気を持ちましょう。そして、音声に集中して内容を理解することに徹します。その上で、「これは絶対に忘れられない」と感じるキーワード(数字、固有名詞、重要な動詞)だけを、1〜2語でメモするようにします。メモは補助輪です。音声を聞くことが本質であることを常に心に留めておきましょう。
- 「捨て問」と判断する基準が、本番ではなかなか実行できません。迷ってしまいます。
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本番の緊張下では、冷静な判断が難しくなるものです。これを克服するには、直前期の練習で「捨て問判断のルーティン」を体に染み込ませることが唯一の方法です。具体的には、模擬問題を解く際に「5秒ルール」を課します。一つの設問に5秒以上悩んだら、強制的に「捨て問」とマークして次に進む練習を繰り返してください。これを何度も行うことで、「迷ったら次へ」という行動パターンが条件反射のように身につき、本番でも迷いなく実行できるようになります。
- Part3とPart4、どちらから重点的に対策すべきですか?
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多くの学習者にとって、Part3から始めることをお勧めします。その理由は、Part3は登場人物が限られており、会話という形式上、質問と応答のキャッチボールがあるため、情報の流れが追いやすいからです。また、先読みの練習にも最適です。Part3の戦略(先読み、人物把握、メモ)がしっかり身についてからPart4に移行すると、一人の話者の長い説明を聞き取る力も、自然と養われていきます。まずはPart3で「戦略を使いこなす感覚」を掴むことが、全体のスコアアップへの近道です。

