介護・高齢者ケアの国際現場で使える英語完全ガイド:入居アセスメント・日常ケア・家族面談から認知症対応まで実践フレーズを徹底解説

「この利用者さん、英語しか話せないんだけど、どう対応すればいい?」——介護現場でそんな場面に直面したとき、看護の教科書や医療英語の参考書を開いても、求めているフレーズが見つからないことがあります。介護の英語は、医療英語でも福祉英語でもない、「生活を支える」ための独自の言語世界です。このガイドでは、国際的なケア現場で今すぐ使えるフレーズを、基礎から実践まで徹底的に解説します。

目次

介護英語の基礎:押さえておきたいケア用語と基本フレーズ

医療英語・福祉英語との違い――介護英語が必要な理由

医療英語(nursing English)は診断・処置・投薬を中心とした専門用語が主体です。一方、福祉英語(social work English)は制度・権利・支援計画に関する語彙が中心となります。しかし介護現場では、「着替えを手伝う」「トイレへ誘導する」「食事の姿勢を整える」といった日常生活動作(ADL)への直接支援に特化したフレーズが必要です。これらは既存の医療・福祉英語の教材では十分にカバーされていません。

医療英語との違いを補足

たとえば「転倒リスクがある」は医療英語で “fall risk” と表現しますが、介護現場では “Please hold the railing when you walk.” のように、利用者へ直接伝える行動指示の言葉が求められます。知識として知っている用語と、ケアの場で使えるフレーズは別物です。

介護現場で頻出するコア単語50選

まずは介護固有のキーワードを押さえましょう。以下の表では特に重要度の高い用語を日本語・英語・読み方とともに整理しています。

日本語英語読み方(カナ)
日常生活動作ADL (Activities of Daily Living)エー・ディー・エル
手段的日常生活動作IADL (Instrumental ADL)アイ・エー・ディー・エル
ケアプランcare planケアプラン
レスパイトケアrespite careレスパイト・ケア
長期ケアlong-term careロング・ターム・ケア
身体介助physical assistance / personal careフィジカル・アシスタンス
移乗・移動介助transfer assistanceトランスファー・アシスタンス
排泄介助toileting assistanceトイレティング・アシスタンス
入浴介助bathing assistanceベイシング・アシスタンス
認知症dementiaディメンシャ
褥瘡(床ずれ)pressure sore / bedsoreプレッシャー・ソア
経管栄養tube feedingチューブ・フィーディング
生活リズムdaily routineデイリー・ルーティン
見守りsupervision / monitoringスーパービジョン
終末期ケアend-of-life care / palliative careエンド・オブ・ライフ・ケア

ADLは「食事・入浴・排泄・移動・着替え・整容」の6つの基本動作を指し、IADLは「買い物・料理・金銭管理・服薬管理」などより複雑な生活行為を指します。アセスメントの場面で頻繁に登場するため、セットで覚えておきましょう。

丁寧さと明確さを両立する基本文型

介護英語では、利用者の尊厳を守りながら指示や確認を伝えることが最重要です。命令形は避け、許可を求める・申し出る形の文型を使うのが基本ルールです。以下の3つのパターンを軸に会話を組み立てましょう。

  • Could you ~?(〜していただけますか?)— 利用者に動作をお願いする場面で使用。例: “Could you hold my arm while we walk?”
  • Let me help you ~.(〜のお手伝いをします)— 介助を申し出る場面で使用。例: “Let me help you get dressed.”
  • Is it okay if I ~?(〜してもよいですか?)— 身体に触れる前の確認で使用。例: “Is it okay if I help you to the bathroom?”
  • Are you comfortable?(楽ですか?お体は大丈夫ですか?)— 体位変換や移乗後の確認に使用。
  • Take your time.(ゆっくりどうぞ)— 焦らせないための一言。どんな場面でも使える万能フレーズ。

身体介助の前には必ず “Is it okay if I ~?” で同意を確認することが、利用者の尊厳を守る国際標準のマナーです。この一言があるだけで、信頼関係の構築が大きく変わります。

入居・利用開始時のアセスメント英語:初回面談から生活歴聴取まで

入居・利用開始時のアセスメントは、その後のケア全体の質を左右する重要なプロセスです。「その人らしい生活を支える」というperson-centered care(利用者中心のケア)の考え方は、最初の面談から英語でしっかり体現できます。ここでは、初回インタビューから生活歴の聴取、ADL評価・認知機能スクリーニングまで、場面別に使えるフレーズを整理します。

入居前インタビューで使う質問フレーズ集

初回面談では、利用者に安心感を与える導入が欠かせません。まず「あなたのことをよく知りたい」という姿勢を言葉で示しましょう。以下は面談の流れをステップで確認できます。

STEP
アイスブレイク・自己紹介

“Hello, my name is [name], and I’ll be your care coordinator today. I’d love to learn more about you so we can make your stay as comfortable as possible.”(私は本日担当の〇〇です。できる限り快適に過ごしていただけるよう、あなたのことを教えてください。)

STEP
健康状態・既往歴の確認

“Could you tell me about any medical conditions or health concerns we should be aware of?” / “Are you currently taking any medications?”(現在の病気や服薬について教えていただけますか?)

STEP
緊急連絡先・家族情報の確認

“Who would you like us to contact in case of an emergency?” / “Is there a family member who will be involved in your care decisions?”(緊急時の連絡先と、ケアの意思決定に関わるご家族はいらっしゃいますか?)

生活歴・習慣・好みを聞き出す表現

利用者の生活の質(QOL)を高めるには、日常の習慣や好みを細かく把握することが大切です。以下のフレーズを参考にしてください。

カテゴリ英語フレーズ日本語訳
食事の好み“Do you have any dietary preferences or restrictions?”食事の好みや制限はありますか?
宗教的配慮“Are there any foods you avoid for religious or cultural reasons?”宗教・文化上の理由で避ける食品はありますか?
睡眠リズム“What time do you usually go to bed and wake up?”就寝・起床の時間を教えてください。
趣味・関心“What activities or hobbies do you enjoy?”好きな活動や趣味はありますか?
日課・習慣“Is there anything you do every day that’s important to you?”毎日欠かさず行っている大切な習慣はありますか?
Person-centered care を英語で体現するコツ

“We want to respect your routines and preferences as much as possible.”(できる限りあなたのリズムや好みを尊重したいと思っています。)この一言を面談の冒頭に添えるだけで、利用者との信頼関係が大きく変わります。

ADL評価・認知機能スクリーニングの場面別フレーズ

ADL(日常生活動作)の評価では、利用者に目的を説明しながら進めることが重要です。「なぜ確認するのか」を丁寧に伝えることで、利用者の不安を和らげることができます。

  • 歩行確認:”I’d like to see how you move around. Would you mind taking a few steps for me?”
  • 入浴・整容:”Can you tell me how much help you need with bathing and grooming?”
  • 排泄:”Do you need any assistance with using the bathroom?”
  • 見当識確認:”Could you tell me today’s date?” / “Do you know where you are right now?”
  • 記憶の確認:”I’m going to say three words. Please try to remember them: apple, table, penny.”

家族が同席している場合は、利用者本人への配慮を忘れずに三者間のコミュニケーションを調整します。”I’d like to ask [resident’s name] directly first, and then we can hear your thoughts as well.”(まずご本人に直接お聞きし、その後ご家族のお考えも伺います。)という一言が、利用者の主体性を守る上で効果的です。

日常生活支援の場面別フレーズ:身体介助・食事・排泄・入浴を英語で行う

身体介助で最も大切なのは、「これから何をするか」を事前に伝えることです。突然触れられると利用者は不安や恐怖を感じます。”I’m going to~” や “I’ll gently~” のフレーズを使って、動作の前に必ず声をかける習慣をつけましょう。

移乗・歩行介助・ポジショニングの指示フレーズ

移乗やポジショニングでは、方向や重心移動を正確に伝える表現が欠かせません。以下のフレーズカードを参考にしてください。

場面英語フレーズ日本語訳
移乗前の予告I’m going to help you move to the wheelchair now.これから車椅子に移動するお手伝いをします。
立ち上がり補助Please lean forward slightly and push up with your hands.少し前に傾いて、手で押し上げてください。
向きを変えるI’ll gently turn you onto your left side.ゆっくり左側に向けますね。
重心移動の指示Can you shift your weight to your right leg?右足に体重を移してもらえますか?
歩行介助I’ll walk right beside you. Take your time.すぐ隣を一緒に歩きます。ゆっくりどうぞ。
ポジショニングI’m going to place a pillow under your knees for support.膝の下にクッションを入れますね。

食事介助・水分補給・嚥下ケアの表現

介護現場の食事介助では、嚥下障害(dysphagia)への対応が特に重要です。食形態や水分のとろみについて、利用者・家族にわかりやすく説明できるフレーズを覚えておきましょう。

場面英語フレーズ日本語訳
食事開始の声かけYour meal is ready. I’ll help you eat if you’d like.お食事の準備ができました。必要でしたらお手伝いします。
嚥下障害の説明You have some difficulty swallowing, so we’ve prepared minced food for you.飲み込みが少し難しいため、刻み食をご用意しました。
とろみの説明We’ve added a thickener to your drink to make it easier to swallow.飲み込みやすいように飲み物にとろみをつけています。
ペース確認Please take small bites and chew well. There’s no rush.少しずつ、よく噛んでください。急がなくて大丈夫です。
むせへの対応Are you okay? Take a moment to rest before your next bite.大丈夫ですか?次の一口の前に少し休みましょう。

排泄介助・入浴介助で使う配慮ある言い回し

排泄・入浴介助は、プライバシーと尊厳を守る言葉選びが最も問われる場面です。「おむつ」「失禁」などの直接的な表現を避け、利用者の自尊心を傷つけない言い回しを選びましょう。

場面英語フレーズ日本語訳
排泄の確認(配慮表現)Would you like to use the bathroom? I can help you.お手洗いに行きますか?お手伝いします。
パッド交換の予告I’m going to change your pad now to keep you comfortable.快適に過ごしていただくため、パッドを交換しますね。
プライバシーの確保I’ll close the curtain to give you some privacy.カーテンを閉めてプライバシーを確保しますね。
入浴前の声かけIt’s time for your bath. I’ll check the water temperature first.入浴の時間です。先にお湯の温度を確認しますね。
温度確認Does the water feel comfortable? Not too hot or cold?お湯の温度はいかがですか?熱すぎたり冷たすぎたりしませんか?
洗髪の許可確認Is it alright if I wash your hair today?今日は髪を洗ってもよろしいですか?
尊厳配慮の言葉選び:絶対に避けたい表現

“diaper”(おむつ)や “wet yourself”(漏らした)などの直接的な表現は、利用者に羞恥心を与えます。代わりに “pad”(パッド)、”keep you comfortable”(快適に過ごしていただく)、”take care of you”(お世話する)などの柔らかい表現を使いましょう。また、同意を得ずに介助を始めることも尊厳の侵害につながります。必ず “Is it alright if I…?” や “May I…?” で許可を求める習慣をつけてください。

すべての身体介助に共通するルール:動作の前に必ず声をかけ、利用者の同意を得てから介助を始めること。”I’m going to~” の一言が、信頼関係の土台になります。

認知症ケアの英語:コミュニケーション技術と行動・心理症状(BPSD)への対応

認知症ケアにおける英語コミュニケーションで最も重要な原則は、「否定しない・訂正しない・その人の感情に寄り添う」というバリデーション的アプローチを英語でも体現することです。事実の修正よりも、相手が感じている不安や混乱を受け止める言葉を優先しましょう。

認知症の方への声かけ・見当識支援フレーズ

見当識(日付・場所・人物の認識)を穏やかに支援するには、直接的な「テスト」のような問いかけを避け、自然な会話の流れの中で情報を提供する形が効果的です。以下のフレーズを参考にしてください。

場面英語フレーズ日本語訳
日付の提示“Today is Monday. It’s a lovely morning, isn’t it?”今日は月曜日ですよ。素敵な朝ですね。
場所の確認“You’re safe here at the care home. I’m right here with you.”ここはケアホームですよ。私がそばにいます。
人物の紹介“I’m your nurse today. I’ll be taking care of you this morning.”私は今日担当の看護師です。今朝はお世話させていただきます。
過去の話題“I heard you used to enjoy gardening. What did you like to grow?”ガーデニングがお好きだったとお聞きしました。何を育てていましたか?

混乱・不安・興奮時のなだめ方と言葉のかけ方

利用者が混乱・興奮している場面では、まず感情を受け止める「reassurance phrases(安心フレーズ)」を使います。声のトーンを落ち着かせ、ゆっくり・はっきり話すことも同様に大切です。

場面別会話例:混乱・不安時

利用者:「家に帰りたい。ここはどこ?誰なの?」
介護スタッフ:”I can see you’re feeling upset. You’re safe here, and I’m here to help you. Let’s sit down together for a moment.”
(不安そうですね。ここは安全な場所ですよ。一緒に少し座りましょう。)

利用者:「誰かが私の物を盗んだ!」
介護スタッフ:”That sounds really worrying. Let’s look for it together. I’ll help you find it.”
(それは心配ですね。一緒に探しましょう。見つけるお手伝いをします。)

「You’re wrong」「That’s not true」など事実を否定する表現は避け、感情に共感する言葉(”I understand,” “That sounds difficult”)を優先しましょう。

BPSDへの対応と多職種チームへの申し送り表現

BPSD(行動・心理症状)への対応フレーズは、状況別に整理しておくと現場で迷わず使えます。徘徊・拒否・幻覚・攻撃的言動それぞれに適した声かけと、チームへの申し送り表現をセットで覚えましょう。

BPSD症状対応フレーズ(利用者へ)申し送り表現(チームへ)
徘徊(wandering)“Where are you heading? I’ll walk with you.”“She was wandering toward the exit around 3 p.m.”
ケア拒否(refusal)“That’s okay. We can try again a little later.”“He refused personal care this morning. Redirecting helped.”
幻覚(hallucination)“You seem to be seeing something. I’m right here with you.”“She reported seeing people in her room. No distress noted.”
攻撃的言動(aggression)“I can see you’re frustrated. Let’s take a break.”“He became verbally aggressive during bathing. Trigger unclear.”
認知症ケアの重要英語用語
  • BPSD(Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia):認知症に伴う行動・心理症状の総称。徘徊・幻覚・拒否・攻撃性などを含む。
  • Sundowning:夕方から夜にかけて混乱・興奮・不安が増す現象。「夕暮れ症候群」とも呼ばれる。申し送りでは “She tends to sundown around 5 p.m.” のように使う。
  • Validation therapy:利用者の感情や体験を否定せず共感・受容することで安心感を引き出す療法。
  • Person-first language:「認知症の人」を “a person with dementia” と表現し、疾患より人を主体に置く言語的配慮。
  • Dementia-friendly:認知症の人が安心して過ごせる環境・対応・コミュニケーションを指す形容詞。

多職種チームへの申し送りでは、観察した事実・時間帯・対応方法・利用者の反応を簡潔に伝えることが基本です。”What happened / When / How the resident responded / What helped” の4点を意識すると、英語でも正確な情報共有ができます。

家族面談・ケアカンファレンスの英語:説明・合意形成・苦情対応まで

家族との面談では、専門用語を平易な言葉に置き換えながら、「情報を正確に伝えること」と「家族の不安を和らげること」を同時に達成する英語表現が求められます。一方的な説明にならないよう、相手の理解や同意を確認しながら進める姿勢が信頼関係の基盤になります。

ケアプランの説明と同意取得フレーズ

ケアプランを家族に説明する際は、目標・内容・変更理由を順序立てて伝えましょう。以下のフレーズが実践で役立ちます。

場面英語フレーズ
ケアプランの目標説明“The goal of this care plan is to help your mother maintain her independence as much as possible.”
変更点の説明“We’d like to adjust the plan because his condition has changed slightly.”
同意の確認“Does this sound reasonable to you? Do you have any questions or concerns?”
署名依頼“If you agree, we’d appreciate your signature on this form.”

“Is there anything you’d like us to do differently?” と添えると、家族の希望を引き出しやすくなります。

利用者の状態変化を家族に伝える表現

体重減少・転倒・感染症などの変化を報告する際は、事実を明確に伝えつつ、対応策もセットで提示することが重要です。

  • 転倒報告:”I’m calling to let you know that your father had a fall this morning. He was not seriously injured, and we have already had him assessed by our nurse.”
  • 体重減少:”We’ve noticed that she has lost some weight over the past few weeks. We’re monitoring her intake closely and would like to discuss her diet with you.”
  • 感染症:”He has been showing symptoms of a respiratory infection. We’ve informed the doctor and taken appropriate precautions.”
  • 不安を和らげる一言:”We are keeping a close eye on her and will update you right away if anything changes.”

苦情・要望への対応と関係構築の言い回し

家族からの苦情や不満には、まず共感を示してから説明・解決策へと進む「Acknowledge→Explain→Resolve」の流れを英語で組み立てることが効果的です。

STEP
Acknowledge(共感・受け止め)

“I completely understand your concern, and I’m sorry you felt that way.” / “Thank you for bringing this to our attention.” など、まず相手の気持ちを受け止める言葉を使います。防衛的にならず、誠実に耳を傾けている姿勢を示すことが最優先です。

STEP
Explain(状況の説明)

“What happened was…” / “The reason we took that approach was…” のように、事実と経緯を冷静かつ丁寧に説明します。言い訳にならないよう、客観的な表現を心がけましょう。

STEP
Resolve(解決策の提示)

“Going forward, we will make sure that…” / “We’d like to propose the following solution…” と具体的なアクションを提示します。最後に “Does that work for you?” と相手の合意を確認して締めくくりましょう。

ケアカンファレンスで使う進行フレーズ
  • 開始:”Let’s get started. Today we’ll be discussing…”
  • 意見を求める:”I’d like to hear your thoughts on this.”
  • 合意確認:”Are we all in agreement on this point?”
  • まとめ:”To summarize what we’ve agreed on today…”
Why wasn’t I informed sooner about the fall?

“I sincerely apologize for the delay in contacting you. We prioritized stabilizing your father first, and we should have reached out to you immediately after. We will ensure this doesn’t happen again.”

Can we change the care plan to include more physiotherapy?

“That’s a great suggestion. We can discuss this with the physiotherapist and review whether additional sessions would benefit her. We’ll get back to you with a recommendation by the end of the week.”

Is my mother eating enough? She looks thinner.

“Thank you for raising that concern. We have been monitoring her weight and food intake, and we’d like to arrange a meeting with our dietitian to review her nutritional needs together with you.”

ターミナルケア・看取りの英語:本人・家族への寄り添い表現とスタッフ間連携

ターミナルケア(end-of-life care)における英語コミュニケーションは、医療的な正確さと同時に、「その人の尊厳を守り、安心して最期を迎えられる環境をつくる」というコンフォートケアの姿勢が言葉の根底になければなりません。介護施設での看取りは病院とは異なり、「生活の場での別れ」という文脈を意識した表現が求められます。

看取り期の本人へのコミュニケーション表現

看取り期の本人への声かけでは、「存在を認める」「安心を伝える」ことを最優先にします。言葉の理解が難しい状態でも、穏やかなトーンと身体的なぬくもりが伝わります。

場面英語フレーズ意味・使い方
存在を伝えるI’m right here with you. You’re not alone.「そばにいますよ。一人じゃないですよ。」
安心を伝えるYou’re safe. We’re taking good care of you.「安全ですよ。しっかりお世話しています。」
苦痛確認Are you in any pain right now? Can you show me where it hurts?痛みの有無と部位を確認する
タッチケア前I’m going to hold your hand, if that’s okay.手を握る前に一声かける
安らぎを伝えるYou can rest now. Everything is taken care of.「もう休んでいいですよ。全部大丈夫です。」
comfort care と medical care の違い

medical care(医療的ケア)が病気の治療・回復を目指すのに対し、comfort care(コンフォートケア)は苦痛の緩和と生活の質の維持を目的とします。看取り期には「治す」ではなく「苦しまずに過ごせるよう支える」ことが中心となり、使う言葉も「cure(治す)」より「ease(和らげる)」「support(支える)」「be present(そばにいる)」が主役になります。

家族への心理的サポートと告知後のフォローフレーズ

家族への説明では、予後の見通しを穏やかに伝えながら、悲嘆(grief)に寄り添うグリーフサポートへの橋渡しも意識します。

予後の見通しを伝えるには?

We want to be honest with you. Your mother’s condition has changed, and we believe she may have only a short time left. We are focused on keeping her comfortable and free from pain.

家族の感情を受け止めるには?

This must be incredibly difficult for you. Please take all the time you need. We are here to support you and your family through this.

グリーフサポートへつなぐには?

We have a grief support counselor available if you would like to talk to someone. You don’t have to go through this alone.

スタッフ間の引き継ぎ・多職種連携で使う看取り関連表現

申し送りでは、バイタル変化・苦痛症状・家族の意向・DNRの確認状況を簡潔かつ正確に伝えることが安全なケアにつながります。以下のフレーズを状況に応じて使い分けてください。

  • Her breathing has become irregular and her extremities are cool to the touch.(呼吸が不規則になり、四肢が冷たくなっています。)
  • The family has confirmed a DNR order is in place.(家族はDNR指示が有効であることを確認しています。)
  • The family wishes to be contacted immediately if there is any change in condition.(状態に変化があればすぐに連絡してほしいと家族が希望しています。)
  • Pain management is being provided per the palliative care plan.(緩和ケア計画に基づいて疼痛管理を実施しています。)
  • The advance directive has been reviewed and is on file.(事前指示書は確認済みで、記録に保管されています。)
看取りの重要用語まとめ
  • DNR(Do Not Resuscitate):心肺蘇生を行わないという本人・家族の意思表示
  • palliative care(緩和ケア):苦痛の緩和と生活の質向上を目的としたケア全般
  • advance directive(事前指示書):本人が意思決定できなくなった場合に備えた書面による意向表明
  • advance care planning(事前ケア計画):将来の医療・ケアについて本人・家族・スタッフで話し合うプロセス
  • end-of-life watch(看取り):臨死期において継続的に寄り添い観察するケア体制

よくある質問

介護英語を独学で身につけるには何から始めればよいですか?

まずは本記事で紹介したコア単語と基本文型(Could you ~? / Let me help you ~. / Is it okay if I ~?)を声に出して練習することから始めましょう。日常の介助場面を思い浮かべながら声に出すことで、実際の現場でとっさに使えるようになります。フレーズを場面別にカード化して手元に置いておくのも効果的です。

英語が得意でないスタッフが外国人利用者に対応するときの心構えは?

完璧な英語を話そうとする必要はありません。笑顔・ゆっくりとした話し方・ジェスチャーを組み合わせることで、多くの場面は乗り越えられます。”I’m sorry, my English is not perfect, but I’m here to help you.” と一言添えるだけで、利用者に誠意が伝わります。チームで対応できる体制を整えておくことも重要です。

認知症の利用者が英語と日本語を混在させて話す場合はどう対応すればよいですか?

言語の混在は認知症の症状として自然に起こることです。どちらの言語で話しかけられても、利用者が安心できる言葉(感情に共感するフレーズ)を優先してください。”I understand,” “You’re safe,” “I’m here with you.” といった短くシンプルな安心フレーズは、言語の壁を超えて伝わります。

ケアカンファレンスで英語の議事録を作成する際のポイントは?

議事録には「決定事項・担当者・期限」の3点を明記することが基本です。”It was agreed that…” / “Action: [担当者] will…” / “To be completed by [期限]” の形式を使うと、英語でも明確な記録が残せます。専門用語は略語を避け、フルスペルで記載するとチーム全員が理解しやすくなります。

外国人スタッフと一緒に働く際、日本人スタッフが気をつけるべきことは?

専門用語や略語を使う際は、必ず意味を確認し合う習慣をつけましょう。また、日本語特有の「察する文化」は英語コミュニケーションでは通じないことがあります。ケアの手順や利用者の状態変化は、言葉で明確に伝えることを心がけてください。”Could you clarify what you mean by ~?” と確認し合える関係づくりがチームの安全につながります。

著者プロフィール

大学受験・英語資格試験塾講師。大学時代にアメリカへ1年間留学。卒業後は海外書籍を取り扱う出版社で編集職に6年間従事した後、英語教育の現場へ転身。大学受験生向けや、社会人の英語資格試験対策の講義を担当し、実践的で分かりやすい解説に定評がある。出版社時代に様々なジャンルの英語書籍を担当した経験から、法律から工学まで業界特有の英語表現やビジネス英語に関する幅広い知識を持つ。また、二児の母という立場から、実体験に基づいた子どもの英語教育に関する発信も行っている。

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