IELTSライティングで『思考停止テンプレート』に終止符を打つ!バンド7.0獲得のための『文脈対応型エッセイ構築術』実践ワークショップ

「テンプレートを覚えればIELTSライティングは簡単だ」――そんな話を聞いたことはありませんか。確かに、基本の型を押さえることは出発点として有効です。しかし、多くの学習者が直面する壁があります。それは、教わった通りの「完璧な型」を書いたのに、なぜかバンドスコアが6.5で止まってしまうというジレンマです。このセクションでは、その原因を「文脈対応力」という観点から徹底解剖します。型の表面的な模倣を超えて、採点官の評価基準に真に届く文章を構築するための、最初の一歩を踏み出しましょう。

目次

なぜ「完璧な型」だけではバンド7.0に届かないのか?

バンド7.0は、英語力において「熟練したユーザー」と評価される重要なラインです。ここに到達するためには、単に「間違いの少ない文章」を書くだけでは不十分です。評価基準が求めるのは、与えられた質問(タスク)に対して、適切に、柔軟に、そして一貫性を持って応答する力です。これを「文脈対応力」と呼びます。型だけに頼る学習は、この力を育むどころか、逆に妨げてしまう可能性さえあります。

バンド7.0の評価基準が求める「文脈対応力」

公式の評価基準、特に「Task Response(課題達成度)」と「Coherence and Cohesion(一貫性と結束性)」は、文脈対応力を明確に求めています。

バンド7.0の評価基準が求めるもの
評価項目バンド7.0の記述(一部抜粋)求められる「文脈対応力」
Task Responseトピックの全ての部分に対応する。設問の細かい指示語(例: “To what extent do you agree?”)や条件を正確に読み取り、論点をズラさずに議論する力。
Coherence and Cohesion情報やアイデアを論理的に整理する。適切な接続詞を用いる。型に当てはめるのではなく、自らの主張を最も説得力を持って展開するために、段落構成や接続表現を「選び取る」力。

重要なのは、この基準が「型通りに書けているか」ではなく、「この特定の質問に対して、どのように考え、どのように論を進めているか」を評価している点です。画一的なテンプレートは、この「特定の質問」への最適化を阻害する要因になり得ます。

テンプレート依存が生む2つの落とし穴:不自然さとズレ

テンプレートを無批判に適用すると、次のような問題が生じます。

  • 論理の不自然さ: 例えば、どんなトピックでも「近年、科学技術の発展は目覚ましい」という決まり文句で導入を始めると、テクノロジーと無関係な社会問題についてのエッセイでは、読み手に違和感を与えます。結論段落でも、「政府と個人が協力すべきだ」という汎用的な提言で締めくくるのは、具体性に欠け、説得力を損ねます。
  • 設問との論点のズレ: 設問が「賛成か反対か」を問うているのに、テンプレートに従って「長所と短所」を並列に論じてしまいます。あるいは、「どの程度同意するか」を問われているのに、完全な賛成か反対かの二者択一で議論を進めてしまいます。これらは「Task Response」で大きく減点される典型的なパターンです。
テンプレート答案と文脈対応答案の比較

トピック例: “Some people believe that unpaid community service should be a compulsory part of high school programmes. To what extent do you agree or disagree?”

テンプレート依存の導入(問題点)
“It is often said that education plays a crucial role in society. This essay will discuss the advantages and disadvantages of making community service mandatory in schools.”
設問は「どの程度同意するか」を問うているのに、「長所と短所を論じる」と宣言しており、最初から論点がズレています。

文脈対応の導入(改善例)
“The proposal to integrate compulsory unpaid community service into the high school curriculum is a subject of considerable debate. While I acknowledge the potential benefits for student development, I largely disagree with making such service mandatory, as it may undermine the very values it seeks to promote.”
設問の形式(To what extent…)に直接応え、自身の立場(大枠では反対)とその理由の方向性を明確に示しています。

模範解答の『型』を分解し、その『機能』を理解する

では、模範解答の構造は全く学ぶ必要がないのでしょうか。そうではありません。むしろ、より深いレベルで学ぶ必要があります。鍵は、表面的な「型」ではなく、その背後にある「機能」を見抜くことです。

例えば、模範解答が「一方で、〜という見方もある」という段落を設けているとします。これを「反対意見の段落は必ずここに入れる」と暗記するのではなく、「なぜここで反論を提示しているのか」を考えます。その機能は、自説の説得力を高めるためなのか、議論のバランスを示すためなのか、それとも特定の論点の弱点をあらかじめ認めておくためなのか。

文脈対応型エッセイ構築術の第一歩は、模範解答を「機能」のカタログとして読み解くトレーニングから始まります。

  1. 分析: 模範解答を読み、各段落が果たしている役割(例:問題提起、主張の提示、具体例による裏付け、反論の紹介と反駁、結論の再提示)を付箋のようにメモします。
  2. 抽象化: その役割を、特定のトピックから切り離した「機能」(例:「対比による主張の明確化」「因果関係の実証」)として言い換えます。
  3. 転用: 別のトピックに取り組む際、自分が立てた主張を効果的に展開するために、どの「機能」を、どの順序で使えばよいかを設計します。

このプロセスを経ることで、テンプレートは「思考を止めるための鋳型」から、「自分の考えを表現するための道具箱」へと変容します。次のセクションでは、この「機能」ベースの考え方を実際のライティングプロセスにどう落とし込むか、具体的なワークショップ形式で見ていきます。

設問を分析し、最適な「論証戦略」を選択する3ステップ

テンプレートに頼る答案の限界は、設問の文脈を無視した「型の押し付け」にあります。バンド7.0を目指すには、設問から逆算して答案の骨格を設計する「論証戦略」の構築が不可欠です。ここでは、そのための具体的な思考プロセスを3つのステップに分解して見ていきましょう。

STEP
設問タイプを超えた「議論の本質」を見抜く

多くの学習者は「賛成/反対型」「両面討論型」といった分類を覚えます。これは思考の出発点に過ぎません。次の一歩として、設問が求めている議論の本質は「価値判断」なのか、それとも「実用性の検討」なのかを区別することが重要です。

「価値判断」とは、ある事柄の道徳的・倫理的・社会的な善し悪しを評価することです。「実用性の検討」とは、ある提案が実際に機能するか、どの程度効果があるかを検証することです。

例えば、以下の二つの設問を比べてみましょう。

  • 設問A (価値判断): 「全ての学生がボランティア活動を義務づけられるべきかどうか議論せよ」
  • 設問B (実用性の検討): 「義務的なボランティア活動は、若者の社会性育成にどの程度効果的か議論せよ」

設問Aは「すべきか」という規範的な問いであり、議論の核心は義務化の是非にあります。一方、設問Bは「どの程度効果的か」という実証的な問いであり、議論の核心は効果の有無や程度にシフトします。この本質の違いを無視して同じ型で書けば、答案は設問の要求から外れてしまいます。

STEP
トピック分野から「説得力の源泉」を特定する

設問のトピックが属する分野によって、説得力のある論拠の種類は変わります。テンプレート答案が平板になる一因は、この切り替えができていないことにあります。

分野別・説得材料の切り替え例
トピック分野説得力の源泉(優先すべき論拠)具体例
環境・科学技術客観的データ、研究結果、因果関係「ある研究によると、二酸化炭素排出量は〜」「この技術により、エネルギー効率がXパーセント向上する」
教育・社会政策個人や社会への長期的影響、公平性、コスト対効果「この政策は、長期的に見て社会の一体感を高める」「教育機会の格差是正につながる」
ビジネス・経済収益性、効率性、市場動向、リスク管理「投資回収期間はY年と見込まれる」「競争力を維持する上で不可欠である」
文化・ライフスタイル個人の幸福感、多様性の尊重、伝統の価値「個人の創造性を育む」「異文化理解を深める機会を提供する」

環境問題の設問で「個人の幸福感」ばかりを論じたり、文化問題で「コスト対効果」のみを強調したりすると、答案の説得力は著しく損なわれます。トピックに応じて最適な「証拠」を選ぶことが、採点官に「この受験者は文脈を理解している」と印象づける鍵となります。

STEP
設問の指示語句から「答案のトーン」を決定する

最後に、設問文中の特定の指示語句に注目します。これらの語句は、答案全体の「トーン」や論じ方のニュアンスを規定する重要なシグナルです。

「Discuss both views」と「To what extent」は、混同されがちですが、要求する答案のトーンは異なります。

「Discuss both views and give your opinion」の場合、求められているのはまず両方の視点を公平に、かつ対等な重みで検討することです。その後、自身の意見を述べます。ここでのトーンは「検討と評価」です。

一方、「To what extent do you agree or disagree?」の場合、求められているのは特定の主張に対する自身の同意や不同意の度合いを明確にし、それを一貫して主張することです。反対意見への言及は、自身の立場をより強固にするための「対比材料」として用いることができます。ここでのトーンは「主張と説得」です。

具体例で見るトーンの違い

設問: 「インターネットは人々をより社交的にした」

  • 「Discuss both views」型のアプローチ: 「一方で、SNSは遠隔地の友人とのつながりを維持することを可能にしたという見方がある。他方で、画面越しの交流が対面スキルの低下を招いているとの指摘もある。私は後者の見方に強く同意する。」 → 両論を提示した上で立場を表明。
  • 「To what extent」型のアプローチ: 「私はこの主張には部分的にしか同意できない。確かに、情報取得の面では社交性を高めた側面はある。しかし、本質的な人間関係構築という点では、むしろ個人を孤立させていると考える。その理由は…」 → 最初から自身の立場(部分的同意)を明示し、その理由を構築。

この3ステップのプロセスを経ることで、設問は単なる「書くべきトピック」から、「どのように論じるべきかの設計図」へと変わります。型を覚えるのではなく、設問から逆算して型を創り出す力。これが、思考停止テンプレートから脱却する第一歩です。

文脈に応じて骨組みを自在に調整する「論証パターン」の引き出し

設問を分析し、最適な論証戦略を選ぶ方法がわかったら、次はその戦略を実行するための具体的な文の組み立て方が必要です。ここでは、バンド7.0の答案で効果的に使える3つの論証パターンを紹介します。これらのパターンは、単なるテンプレートではなく、文脈に応じて中身を自由に調整できる思考の枠組みです。適切な場面で使い分けることで、主張の説得力と論理の深さを同時に高めることができます。

論証パターンとは

自分の意見を支える理由や具体例を、どのような順序と関係性で提示するかの設計図です。主張を単に羅列するのではなく、読者(採点官)の思考の流れを誘導し、納得感を生み出す構造を指します。

「譲歩→反論」型:対立意見が強いトピックで説得力を増す

自分と反対の意見が明確にある設問で非常に強力です。まず相手の主張の一部を認めることで、論理的で公平な姿勢を示します。その上で、その意見には限界があること、あるいはより重要な観点があることを示し、自説を導き出します。

この構成の鍵は、接続詞の適切な使い分けです。

  • 譲歩を導く語句: It is true that…/ Admittedly,… / Granted,… (確かに…)
  • 反論への転換: However,… / Nevertheless,… / Despite this,… (しかしながら…)
  • 反論の根拠を提示: This is because… / The main reason is that… (その理由は…)
  • 結論を導く: Therefore, I believe that… / Thus, it seems more reasonable to… (したがって…)

「確かに、テレビは人々に共通の話題を提供する。しかし、それが社会の結束を深める主な要因だとは考えにくい。なぜなら、受動的な視聴は実際の対話を減らし、孤立を招く可能性もあるからだ。」のように、具体的な理由で反論を補強します。

「具体例の積み上げ」型:抽象的な概念を確かな議論に落とし込む

「技術の進歩は生活をより良くしたか」といった抽象的なテーマで有効です。一つの大がかりな例を詳細に説明する代わりに、異なる分野や視点からの複数の小さな具体例を提示します。これにより、主張が特定のケースに限られたものではなく、より普遍的で説得力のあるものとして印象づけられます。

積み上げる具体例は、質と関連性が重要です。

  1. 分野を変える: 医療(遠隔診療)、教育(オンライン学習)、コミュニケーション(SNS)など、異なる領域から例を選ぶ。
  2. 視点を変える: 個人の利便性、社会的な影響、環境への配慮など、多角的に検証する。
  3. 共通項で結ぶ: 各具体例が、最終的に「効率化」「アクセスの向上」「選択肢の増加」など、あなたの主張する核心的な利点にどのように結びつくかを明示する。

単なる例の羅列にならないよう、各例を短くまとめ、主張とのつながりを明確に述べるのがコツです。

「因果の連鎖」型:複雑な社会問題のメカニズムを解き明かす

「都市化が地域社会に与える影響は何か」といった、原因と結果が多層的に関わる問題の分析に適しています。単純な「AだからB」ではなく、「AがBを引き起こし、それがさらにCにつながる」というように、原因と結果の連鎖をたどって議論を展開します。これにより、問題の複雑さを理解していることと、論理的な思考力の高さを同時にアピールできます。

連鎖を構築する際は、各段階のつながりを確かなものにすることが不可欠です。

  • 出発点を明確に: 議論の起点となる現象や要因(例:都市部への人口集中)を定義する。
  • 中間段階を丁寧に説明: 各ステップで「なぜそうなるのか」を簡潔に説明する(例:人口集中 → 地価上昇 → 地域住民の入れ替わり)。
  • 最終的な帰結を示す: 連鎖の結果として生じる核心的な問題や変化(例:伝統的な地域コミュニティの弱体化)を結論づける。

連鎖が長くなりすぎたり、根拠の弱いつながりを含んだりすると、論理が崩れてしまいます。各ステップは確実で、読者が自然に納得できるものでなければなりません。

論証パターン適する文脈・設問の特徴キーとなる接続詞・表現
譲歩→反論型賛否が分かれる議論
「〜すべきか」という意見表明型
Admittedly, … However, … The main flaw is that…
具体例の積み上げ型抽象的な概念の検証
「〜の利点や影響は何か」という分析型
For instance, … Another example is… This illustrates how…
因果の連鎖型複雑な社会問題の原因究明
「〜はどのように〜をもたらすか」というプロセス説明型
This leads to… Consequently, … As a result, …

これらのパターンを、前のセクションで学んだ「論証戦略の選択」と組み合わせてください。設問を分析し、どのパターンが最も効果的かを考え、その骨組みに沿って具体的内容を肉付けしていく。これが、型に縛られず文脈に応じた答案を書くための実践的な手法です。

実践ワークショップ:与えられた文脈から最適なエッセイを組み立てる

これまで学んだ「設問分析」と「論証パターン」を、実際に手を動かして定着させましょう。文脈対応型のエッセイ構築術は、知識として理解するだけでなく、繰り返し「書いて、見直す」ことで初めて身につきます。以下の3つのワークを通じて、柔軟な思考と表現力を鍛えていきます。

ワーク1:異なる設問タイプで同じトピックを論じる

「都市化」という一つのトピックに対し、設問の要求が変われば、論じるべき内容も構成も大きく変わります。まずはこの違いを体感してください。

練習問題

以下の2つの設問を比較し、それぞれのエッセイで焦点を当てるべき論点を選び、大まかな構成を考えてみましょう。

設問A (Advantages/Disadvantages)
Many people are moving from rural areas to cities. What are the advantages and disadvantages of this trend for individuals?

設問B (Problem/Solution)
The rapid growth of urban populations is causing significant problems in many countries. What problems does this cause, and what measures can be taken to address them?

同じ「都市化」でも、設問Aは「個人」への影響(利点と欠点)を問い、設問Bは「社会」が直面する「問題」とその「解決策」を求めています。この文脈の違いを無視して、利点・欠点・問題・解決策を全て網羅的に書くのは非効率です。

具体的な論点選択の例を見てみましょう。

設問タイプ焦点選ぶべき論点(例)構成の鍵
設問A
(個人への影響)
個人の観点利点: 職業機会の増加、教育・文化施設へのアクセス向上
欠点: 生活費の高騰、人間関係の希薄化、ストレス
個人の生活の質(Quality of Life)の観点から、メリットとデメリットを対比させる。
設問B
(社会問題と解決)
社会・行政の観点問題: 住宅不足・スラム化、交通渋滞、公害の悪化
解決策: 衛星都市の開発、公共交通機関の拡充、環境規制の強化
問題の特定から、その問題に対する具体的な政策・対策を提示する。

このように、トピックが同じでも、設問の視点(個人か社会か)と要求する答えの形式(利点と欠点か問題と解決策か)によって、論証の方向性を鋭く絞り込むことが、高得点への第一歩です。

ワーク2:分野別キーコンセプトを用いた段落展開

説得力のある主張を作るには、その分野で重要な概念(キーコンセプト)を盛り込むことが有効です。これにより、表面的な意見ではなく、深みのある分析が可能になります。

STEP
分野とキーコンセプトを想起する

設問のトピックがどの分野に属するかを考え、その分野を議論する際の核となる概念を思い浮かべます。

  • テクノロジー: 効率性(Efficiency)、アクセシビリティ(Accessibility)、プライバシー(Privacy)、デジタルデバイド(Digital Divide)
  • 環境: 持続可能性(Sustainability)、生物多様性(Biodiversity)、炭素排出(Carbon Emissions)、再生可能エネルギー(Renewable Energy)
  • 教育: 機会均等(Equal Opportunity)、批判的思考(Critical Thinking)、実践的スキル(Practical Skills)、生涯学習(Lifelong Learning)
  • 社会・文化: 社会的結束(Social Cohesion)、文化の多様性(Cultural Diversity)、伝統の継承(Preservation of Tradition)、グローバリゼーション(Globalization)
STEP
概念を主張に変換する

キーコンセプトを単なる単語として使うのではなく、主張の一部として機能させる文を作ります。

  • 例(テクノロジー・効率性): 「遠隔ワークの導入は業務の効率性を飛躍的に高め、通勤時間を削減することで従業員の生産性向上に寄与する。」
  • 例(環境・持続可能性): 「プラスチック包装の規制は、短期的な利便性の低下を伴うが、長期的な環境持続可能性の観点からは不可欠な措置である。」
  • 例(教育・機会均等): 「オンライン教育リソースの無料公開は、地理的・経済的格差に関わらず学習機会の均等化を促進する強力な手段となりうる。」
STEP
段落全体に展開する

この主張をトピックセンテンスとし、具体例や理由を加えて一つの段落を完成させます。

完成例 (環境分野): 「政府がリサイクル政策を強化すべき主な理由は、廃棄物問題への対処が環境持続可能性の核心にあるからだ。例えば、埋立地の限界が近づく中、効果的な分別とリサイクルは天然資源の消費を抑制し、生態系への負荷を軽減する。このような長期的視点に立った政策は、将来世代により健全な地球を残すための基盤となる。」

ワーク3:採点官の視点で「文脈対応度」を自己評価する

ワーク1と2でエッセイを書いた後は、完成した答案を「文脈との適合性」という観点で客観的に評価します。以下のチェックリストを使って、自分自身の答案を採点官の目線で分析しましょう。

自己評価チェックリスト

各項目を「はい」「部分的に」「いいえ」で評価し、改善点を明確にします。

  • 設問の指示語(Task Words)に完全に答えているか?
    「Discuss both views」なら両論を等しく扱ったか?「To what extent do you agree?」なら同意の程度を明確に示したか?
  • 設問が限定する視点・対象を守っているか?
    「for individuals」とあれば個人の観点を維持したか?「in many countries」とあれば一般的な状況を論じたか?(特定の一国の事情に深入りしていないか)
  • 導入部で提示した立場(Thesis Statement)が、本文の議論と一貫しているか?
    序論で「部分的に同意する」と宣言したなら、本体パラグラフでその「部分」を具体的に論証しているか?
  • 各ボディパラグラフのトピックセンテンスは、設問の要求に直接応える内容か?
    パラグラフの冒頭文を読むだけで、その段落が設問のどの部分に答えようとしているかが明確か?
  • 結論は、導入部で示した立場を単に繰り返すだけでなく、本文の議論を要約して強化しているか?
    新規情報を追加せず、エッセイ全体の論理の流れを簡潔に締めくくっているか?

「いいえ」や「部分的に」と評価した項目があれば、その箇所を修正する必要があります。このチェックを習慣化することで、無意識のうちに設問の文脈に沿った答案を組み立てる力が養われていきます。

3つのワークを通じて、テンプレート依存からの脱却を実践しました。文脈を分析し、それに最適な論点を選び、分野に即した概念で深みを加え、最後に客観的に評価する。この一連のプロセスが、採点官に「この答案は設問を正確に理解し、独自の思考で論じている」と評価させるのです。

バンド7.0を確実にするための語彙・表現の文脈適合トレーニング

論理の構造を整えても、それを支える個々の言葉が場違いであれば、評価は伸び悩みます。バンド7.0以上では、語彙と表現の適切さが、内容の洗練度を左右する大きな要素となります。ここでは、自分の主張を正確に、かつ洗練された形で表現するための3つのトレーニングを紹介します。単語帳を覚えるのではなく、「文脈の中で適切に使う」感覚を養うことが目的です。

「強い主張」と「慎重な提案」を使い分けるモダリティ表現

自分の意見を述べるとき、すべてを同じ強さで断言するのは不自然です。客観的事実に基づく確信と、個人の提案では、表現の強さを変える必要があります。これが「モダリティ」の調整です。

単なる「動詞の置き換え」ではなく、主張の確信度に応じて表現を選ぶ。

モダリティ比較例

以下の例では、同じ文の内容を、主張の強さに応じて異なる動詞や助動詞で表しています。

主張の強さ使用例適した文脈
強い断定This policy proves that…
Governments must implement…
データや明確な証拠がある場合。議論の核心となる自説の提示。
穏やかな主張This evidence suggests that…
Governments should consider…
推論や傾向を示す場合。解決策を提案するとき。
可能性の提示This could lead to…
One might argue that…
反論の余地を認めつつ議論を展開する場合。仮定の話。

「prove(証明する)」と「suggest(示唆する)」を混同すると、評価者は論理の飛躍を感じます。自分の根拠がどれだけ確かなのかを自覚し、それに見合った表現を選ぶ習慣をつけましょう。

トピック別のキーワード連想ゲームで語彙のレパートリーを拡張

頻出トピックについて語る時、「important」「good」「bad」のような汎用的な語彙ばかりに頼ると、語彙力の評価が上がりません。一つのテーマに関連する多様な言葉を引き出せるかが勝負です。

「環境問題」と聞いて「pollution」だけで終わらず、関連する概念を広げてみる。

カテゴリー具体例(環境問題トピック)
抽象名詞 (問題・概念)sustainability, degradation, conservation, emissions, footprint
動詞 (行為・変化)deplete, emit, mitigate, adopt (renewable energy), enforce
形容詞 (状態・性質)renewable, finite, catastrophic, stringent (regulations), eco-friendly

このトレーニングを日課にすることで、試験中に同じ単語を繰り返すことを防ぎ、トピックに密着した、説得力のある語彙を自然に使えるようになります。

接続詞の選択が論理の流れとトーンを決める

接続詞は文と文、段落と段落をつなぐ「関節」です。「しかし」を表す「However」と「On the other hand」は、多くの学習者が同じ意味で使っていますが、役割が異なります。

  • However: 前の文を強く否定または対比させ、議論の方向を転換するときに使います。「にもかかわらず」という強い逆接のニュアンスです。
  • On the other hand: 前の視点とは「別の」視点を追加して提示するときに使います。「一方では」という並列や追加のニュアンスが強く、前の内容を完全に否定するわけではありません。

例えば、ある政策のメリットを述べた後、「However」で始めると「しかし、重大な欠点もある」という強い批判のトーンになります。「On the other hand」で始めると「一方で、考慮すべき別の側面もある」と、よりバランスの取れた議論を展開する印象を与えます。この微妙な違いが、エッセイ全体の論理的な流れと筆者の立場を明確に形作ります。

語彙力が乏しいと感じます。どのくらいの単語を覚えればバンド7.0に届きますか?

単語の「数」よりも「質」と「使い方」が重要です。バンド7.0では、頻出トピックに関連する語彙を、適切な文脈で正確に使えることが評価されます。上記の連想ゲームのように、一つのテーマについて多角的に語れる語彙のレパートリーを、質の高い英文に触れながら増やしていくことが有効です。

「must」と「should」の使い分けが難しいです。どちらを使うべきか迷ったときの基準はありますか?

自分の主張の根拠が客観的な事実や法律、倫理的に避けられない義務に基づく場合は「must」を、個人的な意見やより良い選択肢としての提案、推奨事項を示す場合は「should」を使うと区別しやすいです。例えば、「Governments must protect human rights.(政府は人権を守らなければならない)」は義務、「Individuals should recycle more.(個人はもっとリサイクルすべきだ)」は提案です。

接続詞を多用すると、かえって不自然になると聞きました。どの程度使うのが適切ですか?

重要なのは多用ではなく「適切な選択」です。文と文の論理関係が明確であれば、接続詞を省略しても構いません。逆に、論理関係を示すために必要な箇所で、適切な接続詞を使わないと、読み手に論理の飛躍を感じさせてしまいます。まずは、自分の書いた英文の流れを確認し、論理の転換や追加が必要な箇所に、適切な接続詞を一つずつ配置する練習から始めましょう。

著者プロフィール

大学受験・英語資格試験塾講師。大学時代にアメリカへ1年間留学。卒業後は海外書籍を取り扱う出版社で編集職に6年間従事した後、英語教育の現場へ転身。大学受験生向けや、社会人の英語資格試験対策の講義を担当し、実践的で分かりやすい解説に定評がある。出版社時代に様々なジャンルの英語書籍を担当した経験から、法律から工学まで業界特有の英語表現やビジネス英語に関する幅広い知識を持つ。また、二児の母という立場から、実体験に基づいた子どもの英語教育に関する発信も行っている。

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