オンライン英会話サービスを提供する株式会社レアジョブは、2026年10月14日、法人向けの短期集中型英語スピーキングプログラムの提供開始を発表しました。このプログラムは、英語初中級者とされる「CEFR A2~A2 High」レベルの学習者がわずか4カ月で「CEFR B1」レベルへの到達を目指すことを特徴としています。
背景:日本人ビジネスパーソンの多くが停滞する「初中級レベル」

この短期集中プログラムが開発された背景には、日本人ビジネスパーソンの英語スピーキング力に関する課題があります。同社の調査によると、日本人ビジネスパーソンのスピーキングレベルで最も多い層は「CEFR A2 High」という初中級レベルに集中しています。これは、自身の専門分野など限られた範囲で、単語を中心とした簡単な会話ができる程度のレベルです。
一方、グローバルビジネスの現場で通用する「CEFR B2」レベル以上の人は、全体のわずか7%に過ぎません。つまり、多くのビジネスパーソンが、「英語で業務を遂行できる」という次のステップに到達できずに、学習の初期段階で停滞していることが浮き彫りになっています。
「CEFR B1」が実務への第一歩
「CEFR B1」レベルは、業務上で英語を使う際の重要な分岐点とされています。このレベルに達すると、自分に馴染みのある業務範囲内で、調整や課題解決を自力で進めることができるようになります。例えば、取引先との日程調整や、トラブルの報告、条件交渉など、実務で必要なコミュニケーションが可能になる段階です。
企業にとっては、従業員がこのB1レベルに到達することは、グローバル人材の裾野を広げ、海外展開や多様な人材との協働を進める上での重要な課題となっています。
国際的な言語能力評価基準「CEFR」におけるB1レベルは、「自立した言語使用者」の入り口とされます。仕事や趣味など身近な話題について、筋道を立てて説明したり、自分の意見や計画を述べたりすることができます。実務では、日常的な業務連絡や簡単な交渉を英語でこなせるようになることが目標です。
長期学習による挫折が課題
しかし、この初中級レベル(A2)から実務レベル(B1)に引き上げるには、通常1年以上の学習期間が必要とされています。独学で進める場合や、継続的な学習時間の確保が難しい場合、多くの学習者が途中で挫折してしまうという現実があります。この「学習の継続性」の問題が、企業における効率的な人材育成の大きな障壁となっていました。
今回発表されたプログラムは、こうした課題を解決するために、通常1年以上かかる学習プロセスを約3分の1の4カ月間に凝縮した点に大きな特徴があります。集中的な学習とサポート体制により、短期間で確実にレベルアップを図ることを目指しています。
プログラムの3つの特徴:短期集中で「使える英語力」を獲得する仕組み



4カ月という短期間で、なぜ「単語主体の発話」から「業務での調整や課題解決を自力で進められる」レベルへの到達が目指せるのでしょうか。同社が発表したプログラムには、従来のオンライン英会話とは異なる3つの特徴があります。これらが相乗効果を生み、学習の効率化と継続性を高めているのです。
独自カリキュラムとTBLT(課題解決型学習)
このプログラムの核となるのは、国際的な言語指標CEFRに完全準拠した独自カリキュラムです。単に文法や単語を詰め込むのではなく、学習者が「実際に何ができるようになるか」という実践的な能力(CAN-DO)に焦点を当てて設計されています。
さらに、学習アプローチとしてTBLTを採用している点が特徴的です。TBLTとは、「打ち合わせ日程の再調整」「ITトラブルの報告」「値引き条件の交渉」など、実際のビジネスシーンを想定した具体的な「課題(タスク)」を達成する過程で、必要な英語表現を身につけていく方法です。知識の暗記に偏らず、外国人講師と実践的なシミュレーションを繰り返すことで、「現場で使える英語力」の定着を目指します。
従来の「文法や単語の暗記」から入る学習法とは異なり、「言語を使って特定の課題(タスク)を達成すること」を中心とした実践的な語学学習アプローチです。学習目的が明確で、習得した表現が実際の場面でどのように機能するのかを体感的に理解できるのが利点です。
| 従来の学習法 | TBLT(課題解決型学習) |
|---|---|
| 文法や単語の暗記から入る | 具体的な「課題(タスク)」の達成が中心 |
| 知識の蓄積が主目的 | 実践的なコミュニケーション能力の獲得が目的 |
| 場面を想定した練習 | 実際の業務を再現した実践演習 |
日本人コーチによる学習完遂フォロー
週に10時間以上、合計約160時間という密度の高い学習を継続するには、適切なサポートが不可欠です。このプログラムでは、受講者ごとに準専属の日本人コーチが付き、学習の全行程を伴走します。単なる進捗管理ではなく、学習フェーズに応じた直接指導を行うことで、独学では陥りがちな壁を乗り越える手助けをします。
週約10時間の学習習慣を定着させるため、日本人コーチが学習管理・確認を行います。正しい学習リズムを作ることが、短期集中プログラムを成功させる第一歩です。
コーチとの実践トレーニングを通じて、質問の意図を正確に捉え、「結論から即答する」発話の基本構造を体得します。英語でのコミュニケーションにおける「型」を身につける段階です。
複雑な問いに対しても、自身の立場や理由・根拠を明確に示して説明できる力を確立します。ビジネス現場で活きる、CEFR B1レベルの論理的な展開力を目指します。
AI「ラーニングアシスタント」で予習・復習を効率化
オンラインレッスンは週に数回でも、その効果を最大化するには適切な予習と復習が鍵となります。このプログラムでは、自主学習の質を担保するために、AIを活用した「ラーニングアシスタント」機能を搭載しています。
具体的には、AIがレッスン中の発話データを分析し、「発話量」「語彙の多様性」「文法の正確さ」などを可視化します。これにより、自分では気づきにくい弱点(例えば、同じ単語ばかり使っている、など)を客観的に把握し、次回のレッスンや自主学習に活かすことができます。
これら3つの特徴——実践的なカリキュラム、日本人コーチによる伴走、AIによる学習分析——が一体となり、従来は1年以上かかるとされていた学習プロセスを、4カ月という短期間に凝縮することを可能にしているのです。
解説:CEFRとは?B1レベルで具体的に何ができるようになるのか



これまで「CEFR A2」「B1」という表現が頻繁に出てきましたが、CEFRとは一体どのような指標なのでしょうか。また、今回のプログラムが到達目標とする「B1レベル」に達すると、具体的にどのようなことができるようになるのでしょう。ここで詳しく解説します。
世界標準の言語能力指標「CEFR」
CEFR(Common European Framework of Reference for Languages)は、言語能力を「実際にその言語を使って何ができるか」という観点で評価する世界標準の基準です。文法知識の量ではなく、「何ができるか」を示す「CAN-DO」記述文が中心で、英語だけでなく40以上の言語に対応しています。そのため、グローバルなビジネスシーンや国際的な組織で語学力の要件として広く採用され、信頼性の高い指標となっています。
今回のプレスリリースで言及されている、日本人ビジネスパーソンの最多層である「A2 High」は、「単語主体の発話」が特徴とされています。一方、目指す「B1レベル」は、「自分に馴染みのある業務において、調整や課題解決を自ら進めることができる」レベルと定義されています。
B1レベルの具体的な「CAN-DO」例
では、「調整や課題解決を自ら進める」とは、具体的にどのような場面を指すのでしょうか。プログラムで例示されている「実際のビジネス現場を再現した実践演習」を参考に、B1レベルで可能になる業務シーンをいくつか挙げてみましょう。
- 打ち合わせ日程の再調整:会議の時間が合わないことをメールやチャットで伝え、代替案を提示して調整を進められる。
- ITトラブルの報告:システムに不具合が起きた際、問題の内容、発生状況、自分が試した対処法などを簡潔に説明し、支援を依頼できる。
- 値引き条件の交渉:契約や購入の際、自社の立場や希望を説明し、相手の提案に対して条件を提示しながら交渉を進められる。
- プロジェクトの進捗説明:自分が担当する業務の現状、達成したこと、直面している課題を順序立てて説明できる。
これらのシーンに共通するのは、単に単語を並べるのではなく、状況を説明し、自分の意見や立場を述べ、相手と調整しながら結論を導き出そうとする「論理的展開力」です。A2レベルが「聞かれたことに単語で答える」段階だとすれば、B1レベルは「自ら話を組み立てて進める」段階へと飛躍するのです。
CEFRと他の英語試験のスコアの対応関係はあくまで目安ですが、一般的には以下のように言われています。
・CEFR B1:TOEIC L&Rスコア 550〜780点程度、英検2級〜準1級程度
・CEFR A2:TOEIC L&Rスコア 225〜545点程度、英検準2級程度
ただしCEFRは「話す・書く」といったアウトプット能力を重視した指標である点に注意が必要です。TOEICのリスニング&リーディングのスコアが高くても、スピーキングがB1レベルとは限りません。
つまり、今回のプログラムが目指す「A2からB1への引き上げ」は、英語での業務遂行において大きな壁を越えることを意味しています。多くの日本人ビジネスパーソンが滞在している「初中級の壁」を突破し、実務で使える最低限の自律性を手に入れるレベルと言えるでしょう。
読者へのアドバイス:法人向けプログラム発表から学べること



この法人向け集中プログラムの発表内容は、個人で英語学習に取り組む方々にとっても、学習を成功させるための重要なヒントが詰まっています。特に、「独学では挫折しやすい」「時間を確保できない」という多くの学習者が抱える課題を、どのように仕組みで解決しているかが参考になります。
個人学習者への示唆
まず、学習の目標設定についてです。このプログラムでは、到達目標を「CEFR B1」と、国際的に通用する指標で明確に設定しています。これは「なんとなく話せるようになりたい」という曖昧な目標ではなく、「自分に馴染みのある業務において、調整や課題解決を自力で進められる」という具体的なスキルレベルを指しています。個人学習でも、「TOEICで700点」「旅行で困らない会話力」など、できるだけ具体的な指標と、それが達成された時にどんなことができるようになるかをイメージして目標を立てることで、モチベーションを維持しやすくなります。
学習方法については、TBLT(Task-Based Language Teaching)というアプローチが採用されています。これは「打ち合わせ日程の再調整」「トラブルの報告」といった具体的な課題(タスク)を達成する過程で言語を学ぶ方法です。個人学習でも、「レストランで食事を注文する」「道案内をする」など、「何を話すか」が明確なシチュエーションを想定して練習することで、ただ単語や文法を暗記するよりも実践的な力が身につきます。
学習継続のカギは「仕組み化」と「フィードバック」
プログラムでは、週10時間以上という高い学習量を「やり切る」ために、日本人コーチが伴走し、学習管理や直接指導を行っています。これは、個人学習者が最も苦手とする「学習の継続」を支える強力な仕組みです。個人でも、週に何時間学習するか計画を立て、友人やオンラインの学習仲間と進捗を報告し合うなど、自分一人に任せきりにしない「外からのプレッシャー」や「サポート」の仕組みを作ることが有効です。
また、AIによる発話分析で自身の課題を「可視化」し、定期的なテストで成長を「客観的に実感」する仕組みも見逃せません。個人学習では、自分の成長を感じにくく、停滞期に挫折しがちです。スマートフォンのアプリを活用して発話を録音・分析したり、オンラインのスピーキングテストを数ヶ月ごとに受けてみたりすることで、目に見える形で自分の進歩を確認し、学習の方向性を修正する材料にすることができます。
- 目標を具体化する:「◯◯ができるようになる」というCEFRのCAN-DOリストを参考に、自分の目標を言語化する。
- 課題解決型で学ぶ:今日の学習テーマを「ホテルのチェックイン」など具体的なタスクに設定し、そのシチュエーションで必要な表現を集中的に練習する。
- 進捗管理を仕組み化する:学習記録アプリを使う、SNSで毎日学習報告をするなど、継続を助ける「外的な仕組み」を取り入れる。
- 成長を可視化する:定期的に同じ課題(例:自己紹介)を録音し、数ヶ月後に聞き比べる。オンラインテストを定期的に受けてスコアの推移を記録する。
サービス詳細と今後の展開
この集中プログラムの具体的な提供内容と、発表元である企業グループのより広い事業展開について、以下に紹介します。プログラムの詳細を理解することで、どのような学びが提供されるのか、より具体的にイメージできるでしょう。
プログラムの具体的な提供内容
プログラム「レアジョブ英会話ビジネスインテンシブ」は、2026年11月1日より提供が開始されます。対象となるのは、英語スピーキングレベルが国際指標CEFRでA2からA2 Highに該当する初中級者で、4カ月(約16週間)という短期間でB1レベルへの到達を目指します。
- 毎日25分のオンライン英会話レッスン(ビジネス英会話コース)
- 日本人コーチによる個別コーチングセッション(全16回、1回25分)
- AIによる「ラーニングアシスタント」機能(音声トレーニング、発話分析レポートなど)
- 受講前と修了後の2回にわたるスピーキングテスト「PROGOS®」による測定
- 専用の学習管理システムによる予習・復習の提出管理
プログラムの特徴は、外国人講師との実践的なビジネスシミュレーション(TBLT)と、日本人コーチによる密度の高い学習管理の両輪で構成されている点です。コーチは学習フェーズに応じて、学習習慣の定着から、応答力、論理的展開力の確立まで、段階的に伴走します。また、AIがレッスン中の発話データを分析し、語彙の多様性などを可視化する機能は、自身の課題を客観的に把握し、効率的な復習を可能にします。
企業グループの事業展開
このプログラムを提供するレアジョブグループは、「オンライン英会話」のイメージが強いかもしれませんが、事業領域は多岐にわたります。グループビジョンは“Chances for everyone, everywhere.”(世界中の人々に、あらゆる場所にチャンスを)を掲げ、語学学習に留まらない人材育成を目指しています。
具体的には、個人向けのオンライン英会話サービスやコーチングサービスに加え、今回のプログラムでも活用されているAIビジネス英語スピーキングテスト「PROGOS®」といったアセスメント(評価)事業を中核として展開。さらに法人向けにはグローバルリーダー育成研修、教育機関やK12(幼稚園から高校生まで)領域における子ども・子育て支援サービスも提供しています。
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