英語論文の『文献レビューセクション』を戦略的に書く 追記型と統合型アプローチを使い分けて研究の位置付けを明確にする実践ガイド

英語論文の文献レビューは、単に過去の研究を紹介する作業ではありません。先行研究の要約を羅列するのではなく、自らの研究がなぜ必要で、どのように知識体系に貢献するのかを論理的に示すための「戦略的土台」を構築する作業です。この土台がしっかりしていれば、読者や査読者をあなたの研究の方向へ自然に導くことができます。

目次

文献レビューの目的を再確認する 要約の羅列から「研究の土台構築」へ

文献レビューは 研究の土台を 築くもの。既存知見の整理統合、研究ギャップの特定、自研究の位置付けの明確化

論文の序章に置かれる文献レビューは、研究の出発点です。しかし、多くの執筆者が陥りがちなのが、先行研究の内容を時系列や著者別に並べるだけの「研究紹介」になってしまうことです。これでは、あなたの研究の必然性や独自性が読者に伝わりません。優れた文献レビューは、過去の知見を整理し、その中に存在するギャップ(未解決の問題)を浮き彫りにし、自らの研究がそのギャップを埋めるためにどのような位置を占めるのかを明確にするものです。

文献レビューの戦略的役割

文献レビューが果たすべき本質的な役割は、以下の3つに集約されます。

  • 既存知見の整理・統合: 分野における主要な理論、研究方法、合意点、論争点を体系的に整理する。
  • 研究ギャップの特定: 整理した知見の中から、未解明の問題、矛盾する結果、検証不足の仮説などを明確に指摘する。
  • 自研究の位置付けの明確化: 特定したギャップに対して、自らの研究がどのようにアプローチし、何を明らかにしようとしているのかを示す。

文献レビューの成否は、読者を「なるほど、だからこの研究が必要なのか」と納得させられるかどうかにかかっています。

文献レビューが果たすべき3つの戦略的役割

前述の3つの役割を、もう少し詳しく見ていきましょう。まず「既存知見の整理・統合」は、単なる列挙ではなく、関連する研究をテーマや論点ごとにグループ化し、時には対立する見解を並べて論理の流れを作ります。例えば、「Aという手法に関する研究は、初期にはXという結果が主流だったが、近年のYという条件での検証によりZという異なる見解が生まれている」といった整理です。

次に「研究ギャップの特定」は、この整理の過程で自然と浮かび上がってくるはずです。「しかし、これらの研究はいずれも△△という条件下での検証が不足している」または「◇◇という変数が結果に与える影響については、相反する報告が混在しており結論が出ていない」といった形で、研究の空白地帯や矛盾点を指摘します。

そして最も重要な「自研究の位置付けの明確化」です。ここで初めて、あなたの研究の目的が前面に出てきます。「したがって、本研究ではこれまで検証が不足していた△△という条件に焦点を当て、A手法を用いて検証を行う」あるいは「◇◇という変数の影響を統制した実験デザインにより、既存の矛盾する報告を解明することを目的とする」というように、自らの研究が先のギャップを埋める具体的な手段であることを示します。この3つのステップが一貫していることが、説得力のある文献レビューの核心です。

陥りやすい失敗:単なる「研究紹介」と化すレビュー

戦略的なレビューができていない場合、どのような文章になるのでしょうか。最も多いパターンは、個々の研究について「ある研究者(2020)は〜を調査し、〜という結果を得た。次に、別の研究者(2022)は〜を検証し、〜と報告している。また、さらに別の研究者(2024)は…」というように、要約を連ねるだけの記述です。この書き方では、各研究があなたの論文の文脈でどのような意味を持つのかが読者に伝わりません。いわば、材料を並べただけで、それを使って何を建てるのかの設計図を示していない状態です。

戦略的レビュー(推奨)単なる要約の羅列(陥りやすい失敗)
既存研究をテーマ別・論点別に整理し、論理的な「ストーリー」を構築する。研究を著者名や発表年順に機械的に並べる。
「しかし」「一方で」「未だに」などの接続詞を用いて、知見間の関係やギャップを明示する。「また」「さらに」で研究を追加するだけ。論点の展開がない。
常に自研究の目的(ギャップを埋めること)へと読者の視線を導く。各研究の紹介で完結し、自研究との関連性が薄弱。
読後の印象:「だからこの研究が必要なんだ」と納得できる。読後の印象:「たくさん研究があるのは分かったが、結局何がしたいの?」と疑問が残る。

このような「要約の羅列」に終始してしまう背景には、文献を読む際の姿勢が影響しています。各論文の内容を理解することに注力するあまり、「この知見は、私が立てた仮説やリサーチクエスチョンとどう関係するか?」という視点が抜け落ちてしまうのです。文献を収集し、ノートを取る段階から、常に自らの研究テーマというフィルターを通して情報を整理する習慣が、戦略的なレビューを書くための第一歩となります。

文献レビューの2大戦略的アプローチ 追記型と統合型の特徴と使い分け

時系列かテーマか アプローチで メッセージが変わる。追記型は積み上げの構造、統合型は概念でのグループ化、分野と目的で使い分ける

先行研究を戦略的に整理するには、主に二つのアプローチがあります。「追記型」と「統合型」です。これらは単に文献を並べる順番が違うだけでなく、読者に伝えるメッセージと、あなたの研究の位置づけそのものを根本的に変える力を持っています。適切なアプローチを選ぶことで、レビューは単なる要約の集積から、説得力のある「研究の論理」へと進化します。

時系列で整理する「追記型(Additive)」アプローチの実践

追記型アプローチは、研究の歴史的な発展段階を時系列に沿って示す方法です。古い研究から新しい研究へと順を追ってレビューすることで、技術や理論がどのように進歩してきたかを明確に描き出し、その流れの中で現在の研究課題がどの地点にあるかを浮き彫りにします。

このアプローチの核心は、「積み上げ」の構造です。先行研究Aの成果が研究Bの前提となり、Bの限界がCの発端となった、というように、研究が鎖のようにつながっていく様子を示します。これにより、あなたの研究がこの鎖の「次の必然的な一環」であることを読者に納得させやすくなります。

追記型の書き方のコツ
  • 時代や技術の「世代」で区切って説明する。
  • 各研究の「進歩点」と「残された課題」を明確に対比させる。
  • 「ある研究者は〜を初めて提案した。その後、別の研究者はその手法を改良し〜を達成した。しかし、〜という新たな問題が生じ、それを受けてさらに別の研究者は〜を試みた」というように、因果関係を示す接続詞を活用する。

テーマでまとめる「統合型(Integrative)」アプローチの実践

一方、統合型アプローチは時系列を離れ、研究テーマやアプローチ、理論的立場といった「概念」で文献をグループ化します。異なる視点や方法論を並列に対比し、時にはそれらを組み合わせることで、既存の研究を超えた新たな枠組みや解釈を提案することを目指します。

このアプローチは、一つの現象に対する多角的な議論が存在する場合に特に有効です。例えば、ある社会現象について「経済的要因に注目する研究群」「心理的要因を重視する研究群」「制度的要因を分析する研究群」というように分類し、それぞれの長所と短所、そして相互の関係性を明らかにします。その上で、これらの視点を統合する必要性を論じ、あなたの研究がその統合にどう貢献するかを示すのです。

どちらのアプローチを選ぶべき? 分野・目的に応じた選択基準

二つのアプローチは、どちらが優れているというものではありません。研究の分野と、論文で達成したい目的によって最適な選択が変わります。

特徴追記型 (Additive) アプローチ統合型 (Integrative) アプローチ
核心時系列での「積み上げ」と発展の流れを示す概念的「対比・統合」で新たな枠組みを提案する
適する分野工学、コンピュータサイエンス、材料科学、医学(治療法の発展など)社会学、心理学、教育学、経営学、文学
論文の目的技術的ブレイクスルーや改良を示す。明確な「次の一歩」を主張する。既存の議論に新解釈を加える。異なる理論を架橋する。
表現例「従来法Aの課題であるXを解決するため、B法が提案された。本研究は、B法の弱点Yを克服したC法を開発する。」「現象Zについては、主にP理論とQ理論の二つの解釈が対立している。本研究は両理論の接点を探り、より包括的なRモデルを提示する。」

選択の指針はシンプルです。あなたの研究フィールドで、技術や発見が直線的に進歩していく様子が明確であれば追記型が自然です。逆に、一つのテーマに対して多様な立場や学説が渦巻いている場合は、統合型が力を発揮します。また、博士論文のように広範な文献を扱う場合、章ごとにアプローチを使い分けることもあります。

具体例で見る違い

架空のテーマ:「オンライン学習における学習者エンゲージメントの向上」

追記型の記述例(一部):
初期の研究は、動画教材の質の向上に焦点を当てた。次の段階では、双方向性が重視され、自動採点機能付き小テストの導入が効果的と示された。近年は、学習者同士のピアレビュー機能を組み込むことで、さらなるエンゲージメント向上が報告されている。しかし、これらの機能を統合的に管理するプラットフォーム側の課題は未解決である。

統合型の記述例(一部):
オンライン学習のエンゲージメント研究は、主に二つの潮流がある。一つは「技術主導アプローチ」で、AIによる個人適応や没入型VRの活用を探る。もう一つは「コミュニティ主導アプローチ」で、学習者間の社会的相互作用のデザインを重視する。両アプローチはしばしば別個に議論されるが、技術が促す個人学習と、コミュニティが支える協調学習を如何に相乗させるかが、次の重要な研究課題と言える。

いずれのアプローチを選んだとしても、大切なのは「単なる紹介」に終始しないことです。各研究を批評的に検討し、それらが相互にどう関連し、そして全体としてどのような「物語」や「議論の地図」を形成しているのかを、読者に示すことが文献レビューの本質です。

戦略的文献レビューの執筆プロセス 文献の収集から論理構成まで

論理的な ストーリーを 構築する。文献をカード化して整理、論点でグループ化する、パラグラフは3層構造で

戦略的なアプローチを選んだら、次は具体的な執筆作業に入ります。ここでの目標は、読んだ文献をただ並べるのではなく、自研究の必然性と独自性を説得力を持って示す「論理的ストーリー」を構築することです。以下の4ステップに沿って進めることで、要約の羅列から脱却し、研究の土台となる強固なレビューを書くことができます。

STEP
文献の収集と批判的読解 メモの取り方

文献レビューは、効率的な情報収集と整理から始まります。まずは広く関連文献を集め、その後、各研究の「主張」「方法」「結果」「限界」を構造的に記録することが肝心です。付箋やノートに気ままにメモを取るのではなく、以下のような形式で情報をカード化するか、マトリクス表を作成しましょう。

項目記録すべき内容
著者・年基本的な引用情報
中心的な主張その研究が何を明らかにしたか、1文で要約
研究方法実験、調査、事例分析など、どのように検証したか
主な知見具体的な結果やデータ
研究の限界著者自身が述べている弱点や、読解から見える課題
自研究との関連自分の問いを補強するか、対立するか、ギャップを示すか

この作業を通じて、各文献を個別の「事実」としてではなく、相互に関連付け、対比できる「論点の材料」として捉え直すことができます。批判的読解の視点を持ち、「この結果は方法論的に信頼できるか」「著者の解釈に飛躍はないか」と問いかけながら進めることが重要です。

STEP
論理的な「ストーリー」の設計 アウトライン作成

文献カードが揃ったら、次はそれらをどの順序で配置するかを決めます。ここで重要なのは、レビューの「結論」を先に考えることです。最終的に読者に「だから、この研究(自研究)が必要なのだ」と納得してもらうためには、その結論を支える論理的な流れが必要です。

アウトライン作成のコツは、文献を時系列や著者別に並べるのをやめ、「論点」ごとにグループ化することです。

例えば、「オンライン学習の効果」をテーマにする場合、以下のような構成が考えられます。

サンプルアウトライン

オンライン学習の学習成果に関する先行研究の動向

知識定着を促進するという肯定的な見解
(関連する複数の文献をまとめて紹介)

学習継続性の課題を指摘する批判的な見解
(対立する知見や限界を指摘した文献をまとめる)

効果を左右する要因に関する議論(学習者特性・教材設計)
(条件によって結果が分かれる研究を整理)

このように、文献を「賛成派」「反対派」「条件論」といった論点の軸で整理することで、単なる紹介から「議論の構図」を示す記述へと昇華します。

STEP
各パラグラフの執筆 主張→根拠→解釈の流れ

アウトラインに沿って本文を書く際は、各パラグラフ(段落)の構造を意識します。効果的なパラグラフは、以下の3層構造で組み立てられます。

  • トピックセンテンス(主張): その段落で何を論じるかを明示する一文。段落の冒頭に置く。
  • 先行研究の引用(根拠): 主張を支える具体的な研究結果を引用する。複数の研究を対比させたり、補強し合う形で提示する。
  • 著者の解釈・批評(意味付け): 引用した文献を単に並べるのではなく、「これらの結果は〜を示唆している」「しかし、Aの研究とBの研究では方法論が異なり、直接の比較は難しい」など、あなた自身の分析的視点を加える。

この流れを守ることで、パラグラフが主張で始まり根拠で裏付けられ、最後にあなたの解釈で締めくくる、説得力のある単位になります。各パラグラフが小さな論証を完結させ、それらが積み重なって全体のストーリーを形成するのです。

STEP
自研究との接続部を明確にする ギャップ提示への繋ぎ方

文献レビューの最終段落は、自研究へと読者を誘導する重要な「接続部」です。ここでは、これまでまとめた知見を振り返り、そこに残された「研究ギャップ」を明確に言語化します。ギャップとは、未解決の問題、矛盾する結果、検証不足の仮説など、あなたの研究が埋めるべき空白のことです。

効果的な接続の仕方は、「では、このギャップを埋めるためには何が必要か?」という問いに、あなたの研究の目的と方法が自然な答えとなるように設計することです。

例えば、以下のような流れで締めくくります。

  • 「以上のように、〇〇の効果については肯定的な証拠が蓄積されている(ステップ2で示した論点のまとめ)。」
  • 「しかし、△△という条件下での検証はほとんど行われておらず、特に××な学習者を対象とした研究は限られている(ギャップの特定)。」
  • 「したがって、本研究では△△条件下における××な学習者への影響を、□□という方法で検証する(自研究の目的・方法への接続)。」

このように、文献レビューは自研究の「序章」ではなく、その必要性を論理的に証明する「弁論」の場なのです。四つのステップを踏むことで、読者を説得し、あなたの研究への理解と関心を高める土台を築くことができます。

分野別・配置別の実践例 独立セクションとIntroduction内レビューの書き分け

配置で変わる レビューの 役割と書き方。独立セクションは詳細な分析、序論内は簡潔に必然性を示す、分野の慣習に合わせる

文献レビューは、論文内での配置によって、その書き方と期待される役割が異なります。分野の慣習によって、「独立したセクション」として詳細に展開する場合と、「Introduction(序論)の一部」として簡潔にまとめる場合があります。この違いを理解せずに書くと、焦点がぼやけたり、研究の必然性が十分に伝わらなかったりします。それぞれの構成と書き方のコツを、分野別の実践例を通して解説します。

人文・社会科学系で多い「独立した文献レビューセクション」の構成例

哲学や社会学、歴史学などの人文・社会科学系の論文では、理論的枠組みや先行研究の検討に多くの紙幅を割くことが一般的です。そのため、「Literature Review」や「Theoretical Framework」といった独立したセクションを設け、先行研究の詳細な分析を展開します。

独立セクションの目的は、研究を単に並べるのではなく、理論や概念の変遷、学派間の対立構造、議論の流れを体系的に整理し、自研究がその中でどの位置を占めるかを明確にすることです。そのためには「追記型」や「統合型」のアプローチを戦略的に使い分け、論理的なストーリー性を持たせることが重要です。

  • 導入(セクション冒頭): このセクションで扱うテーマの重要性と、レビューの目的(例:主要な理論の整理、概念の再定義)を簡潔に述べる。
  • 主要理論・概念の展開: 時系列(追記型)またはテーマ別(統合型)で、重要な研究を論理的に並べる。各研究の貢献と限界を指摘し、次の研究へのつながりを示す。
  • 議論の整理とギャップの提示: 先行研究をまとめ、未解決の問題や矛盾点(研究ギャップ)を浮き彫りにする。
  • 自研究への接続: 提示されたギャップに基づき、この研究がその問題にどのように取り組むかを宣言する。
具体例: 独立セクションの冒頭段落

「組織内の知識共有」をテーマとする社会学論文の「Literature Review」セクション冒頭の例です。

「組織における効果的な知識共有は、競争優位性を維持する上で重要な要素である。これまでの研究は、主に二つの大きな流れに分けられる。第一は、情報技術に焦点を当てたアプローチであり、知識管理システムの導入が共有を促進すると論じた。第二は、社会的・文化的要因を重視するアプローチで、信頼や共有規範といったソフト面の重要性を指摘した。しかし、これらの流れはしばしば別個に議論され、技術的インフラと組織文化が相互にどのように作用するかについては十分な分析がなされていない。本セクションでは、これら二つのアプローチの展開を追い、その統合の可能性と残された課題を明らかにする。」

自然科学・工学分野で一般的な「Introduction内のレビュー部分」の書き方

一方、生物学や化学、工学などの自然科学・工学分野では、文献レビューを独立セクションとせず、Introductionの中に組み込むことが標準的です。ここでの目的は、研究背景を素早く説明し、本研究が解決しようとする具体的な問題(研究ギャップ)を読者に明確に示すことです。広く浅く網羅するのではなく、自研究の動機に直結する最も重要な先行研究に焦点を絞り、簡潔にまとめる必要があります。

  1. 一般的背景から特定の課題へ: 広い研究分野の重要性を述べた後、すぐに本研究が対象とする具体的な問題や現象へと絞り込む。
  2. 核心的な先行研究の選択的レビュー: 問題を理解する上で不可欠な、基盤となる研究や最新の主要研究を数件取り上げ、その知見と限界を指摘する。
  3. ギャップの明確化: 先行研究が残した未解決の疑問、矛盾する結果、または未検討の条件を明確に提示する。
  4. 研究目的の宣言: そのギャップを埋めるために、本研究が何を目的とするかを断言的に述べる。
具体例: Introduction内のレビュー部分

「組織内の知識共有」テーマを、工学分野(情報システム)のIntroduction内で扱う場合の冒頭部分です。

「知識管理システムの設計は、組織の生産性向上に寄与する重要な課題である。従来のシステムはデータベース中心の設計が主流であったが、ユーザーの利用意欲を高める社会的要素の統合が課題として指摘されている。特に、先行研究Aはシステムの使いやすさが採用率を向上させることを示したが、長期的な継続使用には至らなかった。一方、先行研究Bは表彰制度などの動機付けが有効であると報告しているが、システム設計そのものには組み込まれていない。したがって、社会的動機付けのメカニズムをシステム設計段階から統合する新しいフレームワークが必要とされている。本研究では…」

共通する原則と配置による微妙なニュアンスの違い

独立セクションとIntroduction内レビューには、次のような共通する原則があります。

  • レビューは単なる要約ではなく、研究ギャップへと導く「論理的ストーリー」であること。
  • 各先行研究には、その「貢献」と「限界」の両方を簡潔に付記すること。
  • レビューの終わりは、「Therefore, this study aims to…」や「To address this gap, we propose…」など、自研究への明確な接続で締めること。

しかし、配置によるニュアンスの違いも意識する必要があります。独立セクションでは、理論の深い検討や複雑な議論の整理が許容されますが、Introduction内では「この研究が必要な理由」を最短距離で伝えることが最優先です。どちらの場合も、読者が「なぜ今、この研究なのか」を確信できるようにすることが最終目標です。

注意点: 分量と焦点のバランス

独立セクションを設けたからといって、関連する文献を全て列挙してはいけません。分量が増えるほど、ストーリーラインと焦点の明確さが重要になります。また、Introduction内のレビューだからといって、重要な先行研究を省略してはいけません。研究の正当性を担保する最低限の核心的文献は、簡潔にであれ必ず言及する必要があります。配置が違っても、「選択と集中」の原則は変わりません。

分野の慣習に合わせてレビューを配置し、その配置に適した深さと構成で書く。これが、読者を説得し、研究の価値を最大限に引き出す鍵です。

表現力を高める英語フレーズ集 主張・対比・批判・統合に使える定型表現

文献レビューを戦略的に書くには、先行研究を単に紹介するだけでなく、それらを結びつけ、自研究の位置付けを明確にする「論理的な語り口」が必要です。そのためには、研究の流れを示したり、異なる主張を対比したり、ギャップを指摘したりするための定型表現を効果的に使いこなすことが強力な武器になります。これらの表現は、読者をあなたの論理に導く「道しるべ」となります。

ここで紹介するフレーズを適切に用いることで、文献レビューが「ただの要約リスト」から「説得力のある研究の立脚点」へと進化します。

研究の流れや発展を示す表現(追記型で有用)

先行研究を時系列や論理的な流れに沿って整理する追記型レビューでは、研究分野の発展を示す接続表現が不可欠です。これらの表現を使うことで、過去から現在に至る研究の変遷を滑らかに記述できます。

  • Early work focused on… (初期の研究は…に焦点を当てた)
  • Subsequently, researchers shifted their attention to… (その後、研究者の関心は…へと移った)
  • More recently, the focus has moved towards… (より最近では、焦点は…に向かっている)
  • This line of research culminated in… (この一連の研究は…に結実した)

異なる見解を対比・統合する表現(統合型で有用)

複数の異なる立場やアプローチを比較し、共通点や相違点を浮き彫りにする統合型レビューでは、対比と統合の表現が鍵です。これらの表現により、議論の複雑さを整理し、自研究の視点を際立たせることができます。

  • While Smith (Year) argues that…, Jones (Year) contends that… (スミスは…と主張する一方で、ジョーンズは…と論じている)
  • In contrast to the view that…, some scholars propose that… (…という見解とは対照的に、一部の学者は…を提案している)
  • A common thread among these studies is… (これらの研究に共通する点は…である)
  • By synthesizing these perspectives, we can see that… (これらの視点を統合することで、…であることがわかる)

先行研究の限界を指摘し、ギャップに結びつける表現

先行研究の貢献を認めつつ、その限界を指摘し、自研究の必然性を示すことは、文献レビューの核心です。批判的ではなく建設的なトーンで、研究ギャップを明確に提示しましょう。

  • However, these studies have not fully addressed… (しかしながら、これらの研究は…を十分に扱っていない)
  • This leaves open the question of… (これは…という疑問を未解決のまま残している)
  • A significant gap in the literature concerns… (先行研究における重要なギャップは…に関するものである)
  • Less attention has been paid to… (…については、あまり注意が払われてこなかった)
機能・目的英語フレーズ例和訳と使用例
主張・一般化It is widely accepted that……は広く受け入れられている。
対比・対立On the one hand,… On the other hand,…一方では…、他方では…。
Despite these findings, …これらの知見にもかかわらず、…。
批判・限界の指摘A key limitation of this approach is…このアプローチの主な限界は…である。
統合・要約In summary, the existing literature suggests…まとめると、既存の文献は…を示唆している。
ギャップの提示To date, no study has investigated…現在までに、…を調査した研究はない。
ポイント

これらの表現は「接着剤」のようなものです。個々の先行研究という「レンガ」を、あなたの研究の必然性を示す「論理的な壁」へと組み上げる役割を果たします。自分が書こうとしている文脈に最も適した表現を選び、過度に繰り返さないように注意しましょう。

これらのフレーズを覚える必要はありますか?

すべてを暗記する必要はありません。まずは自分がよく使う機能(例:対比、ギャップの提示)に絞って、いくつかの表現を実際に書きながら使ってみることがおすすめです。慣れてくると自然に表現のバリエーションが増えていきます。

同じ表現を何度も使ってしまいがちです。どうすればよいですか?

例えば「しかし」を表す表現なら、「However」だけでなく、「Nevertheless」や「In contrast」など、意味合いが少し異なる表現を使い分けると良いでしょう。執筆後、見直しの段階で同じ表現が連続していないかチェックし、必要に応じて言い換える習慣をつけましょう。

先行研究の批判は、どの程度まで踏み込んで書いてよいのでしょうか?

批判は、自研究の必然性を論理的に示すための手段であり、感情的な非難ではありません。先行研究の貢献を認めた上で、「特定の状況では適用が難しい」「別の観点からの検討が不足している」など、客観的で建設的な指摘に留めることが重要です。

著者プロフィール

大学受験・英語資格試験塾講師。大学時代にアメリカへ1年間留学。卒業後は海外書籍を取り扱う出版社で編集職に6年間従事した後、英語教育の現場へ転身。大学受験生向けや、社会人の英語資格試験対策の講義を担当し、実践的で分かりやすい解説に定評がある。出版社時代に様々なジャンルの英語書籍を担当した経験から、法律から工学まで業界特有の英語表現やビジネス英語に関する幅広い知識を持つ。また、二児の母という立場から、実体験に基づいた子どもの英語教育に関する発信も行っている。

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