一般財団法人 国際ビジネスコミュニケーション協会(IIBC)は、2026年10月19日に発表した調査で、多くの英語学習者が「実際のスピーキング力」と「話せるという自信」の間に大きなギャップを抱えていることを明らかにしました。学習者の多くは一定の会話能力を持ちながらも、心理的な壁がその一歩を阻んでいる実態が浮き彫りになっています。
調査で明らかになった「話せる」という自信のギャップ

- 調査対象:現在英語学習を行っている10〜60代の男女 1,024名
- 調査期間:2026年8月4日〜5日
- 主要発見:7割以上が日常会話可能と回答する一方、「話せる」と自信を持って言える人は2割未満にとどまる
この調査結果は、多くの学習者にとって「英語が話せる」とは、単に意思疎通ができるレベルを超えた、高いハードルであることを示しています。日常会話以上のコミュニケーションが可能な人が7割を超えているにもかかわらず、自信を持って「英語を話せます」と言える人はごく少数です。
7割は日常会話可能なのに、自信を持って言える人は2割未満
調査によれば、英語学習者の多くは「外国人と雑談などがスムーズにできる」以上のレベルを「話せる」人の基準として想定していることがわかりました。具体的には、全体の約7割がこのレベル以上をイメージしており、最も多かった回答は「海外で生活しても日常的に困らないレベルで会話できる」(25.0%)でした。
つまり、多くの学習者は「日常会話ができる」ことと、「自分が『話せる』と胸を張って言えるレベル」を明確に区別しているのです。この「話せる」という言葉に対する高い理想像が、自信のなさにつながる一因となっている可能性があります。
「話せない」理由の上位は心理的な壁
では、なぜ自信を持って「話せる」と言えないのでしょうか。調査では、その理由として主に心理的な要因が挙げられました。
- 1位:自分より話せる人が多いと感じるから
- 2位:間違えることが不安で話すことに抵抗があるから
この結果から、学習者の多くが「完璧主義」や「他者との比較」に囚われ、実際に使える力があるにもかかわらず、一歩を踏み出せずにいる様子がうかがえます。文法や発音の正確さへの過度なこだわり、あるいはネイティブスピーカーや上級者との比較が、心理的なハードルを高めているのです。
英語学習において、コミュニケーションの目的は「完璧な文章を話すこと」ではなく、「意図を伝えること」です。この調査は、学習者がこの根本的な目的を見失いがちであることを、改めて浮き彫りにしています。
新プロジェクト「英語で話す一歩を、もっと軽やかに。」とは



調査で浮き彫りになった「能力」と「自信」の大きなギャップ。この社会課題の解決に向けて、TOEIC Programの実施・運営団体である一般財団法人 国際ビジネスコミュニケーション協会(IIBC)は、2026年10月19日「TOEICの日」に新しいソーシャルプロジェクトを始動させました。「英語で話す一歩を、もっと軽やかに。」という名称が示す通り、今の自分の英語で相手に意図を伝えようとする一歩を肯定し、その後の継続的な学習・成長につなげる社会的な機運づくりを目指す取り組みです。
プロジェクトの核となるのは「心理的ハードルを下げる」という視点です。英語力の到達目標自体を下げるのではなく、「間違えることへの不安」や「自分より上手な話者との比較」といった心理的要因を和らげ、誰もが自分の目指すゴールに向かって一歩を踏み出しやすい未来をつくることを目指しています。これは、単なる学習支援ではなく、社会全体の「空気」を変えていこうとする試みといえるでしょう。
「英語で話すことへの壁を、感じなくなる社会」をビジョンとして掲げています。英語を特別なスキルではなく、自分の言葉で伝えようとする姿勢そのものを尊重する文化の醸成が目標です。
「心理的ハードル」を下げるための社会的な機運づくり
プロジェクトは同団体だけでは変えられない課題に対して、志を共にする様々な団体の力を借りて推進されます。賛同パートナーを広く募り、共に活動することで、より広範な社会的な機運を生み出そうとしています。これは、英語学習が個人の努力に委ねられがちだった従来のあり方から、社会全体で学びと挑戦を支えるエコシステムへと転換する重要な一歩かもしれません。
特設サイトの公開と賛同パートナーの募集開始
プロジェクト開始に合わせ、特設サイトが公開されました。サイトでは、先述の調査結果に加え、SNS上に投稿された「#英語話せますのハードル」というサブテーマに集まる生の声も紹介されています。これらは、学習者が感じるリアルな心理的障壁を理解する貴重な資料となるでしょう。
賛同パートナーには、プロジェクトの趣旨への賛同や情報発信への協力が求められます。その見返りとして、TOEIC Speaking Testと公式対策アプリ「TOEIC Pal」を特別価格で提供する特典も設けられています。これは、プロジェクトへの参加が、団体自体のグローバル人材育成にも直結するメリットがあることを示しています。
- 特設サイトでは調査結果とSNSの声を紹介
- 賛同パートナーを広く公募(2027年3月までに目標50団体)
- 2027年からは賛同パートナー間の情報交換会や、取り組み事例の紹介、関連する勉強会の開催を予定
なぜ日本人は英語を「話せない」と感じてしまうのか



多くの学習者が「話せる」と自信を持てない背景には、二つの大きな要因が調査から見えてきました。一つは、自分自身が「英語を話せる人」に求めている基準が非常に高いこと。もう一つは、話す実践の機会が不足し、現在の自分の力が客観的にわからないことです。
求められる「話せる」基準の高さ
調査では、学習者自身が「英語を話せる人」のイメージとして、「海外で生活しても日常的に困らないレベルで会話できる」を最も多く選択しました。この基準は、全体の4人に1人にあたる25.0%が支持していました。さらに、「外国人と雑談などのコミュニケーションがスムーズにできる」レベルまでを含めると、実に7割もの学習者がこれを「話せる」の前提としている計算になります。
- 海外で生活しても日常的に困らないレベルで会話できる (25.0%)
- 外国人と雑談などのコミュニケーションがスムーズにできる (45.0%前後)
- ビジネスで専門的な議論ができる
- ネイティブスピーカーとほぼ同等に話せる
この結果は、多くの学習者が「日常会話ができる」という事実と、「自分は話せる」という自信の間に大きな溝を作っていることを示唆しています。つまり、現実には「道案内ができる」「簡単な自己紹介ができる」といった日常会話レベルの能力があっても、自分の中の「話せる人」のハードルが「海外生活レベル」や「スムーズな雑談」にあるために、自信を持てずにいるのです。
機会不足とフィードバックの欠如
心理的なハードルを高めるもう一つの要因は、学習環境にあります。調査では、英語学習者の4割が「英語を用いた挑戦機会が不足している」と回答しています。これは、教室や独学では「読む」「聞く」「書く」に偏りがちで、実際に「話す」経験を積む場が限られていることを反映しているでしょう。
さらに深刻なのは、自分の現在のスピーキング力がわからないという問題です。発音や文法の正確さ、流暢さについて、学習者は常に不安を抱えていますが、その能力を客観的・定量的に測り、成長を実感する手段が身近にありません。これが「間違えることへの不安」を増幅させ、「自分より話せる人が多い」という比較意識を生み出していると考えられます。
このような状況において、客観的なスピーキング力の測定は重要な意味を持ちます。自分の現在地を数値やレベルで把握できれば、「どこができて、どこが課題なのか」が明確になり、学習の方向性が見えてきます。また、一定の基準で評価されることで、漠然とした「上手・下手」の比較ではなく、具体的な目標に向けた成長を実感できるようになります。これは、心理的なハードルを具体的な「次の一歩」へと変える有効な手段の一つと言えるでしょう。
英語学習者が「軽やかな一歩」を踏み出すためのヒント



調査により、多くの学習者が「自分の英語で話す一歩」を踏み出しにくい心理的なハードルを持っていることが明らかになりました。では、その壁を乗り越え、自信を持って会話を始めるにはどうすれば良いのでしょうか。ここでは、「伝えること」を最優先にしたマインドセットと、低リスクで始められる具体的なアクションをご紹介します。
「伝える」ことを第一の目標に置く
調査で「自信を持てない理由」の上位に、文法や発音の正確さへの不安が挙げられていました。ここで大切なのは、完璧な英語を話そうとするのではなく、まずは「相手に意図を伝えよう」とすることに集中する姿勢です。言語の本質はコミュニケーションであり、多少の間違いがあっても意思疎通ができれば、それは立派な「話せる」瞬間です。
このマインドセットを実践するには、具体的に何ができるでしょうか。以下に、日常生活に取り入れやすい練習法をステップで見ていきましょう。
まずは話す内容を準備することから始めます。難しい話題ではなく、自分自身のこと、今日の出来事、趣味など、身近なトピックについて日記のように短い英文を書いてみましょう。そしてそれを声に出して読む(音読)ことを習慣にします。自分の声で英語を発すること自体が、口と脳を「英語モード」に切り替える第一歩になります。
次に、誰かと実際に話す場面を想定します。対面での会話に抵抗がある場合は、オンライン英会話の短時間レッスンや言語交換アプリを利用するのがおすすめです。特に、「間違えても大丈夫」という明確なルールがあるサービスを選ぶことで、心理的ハードルを大きく下げることができます。最初の目標は「5分間、笑顔で会話を続けること」など、小さな成功体験を積み重ねることです。
調査では、自分の現在のスピーキング力がわからないことが不安の一因となっていました。定期的に自分の力を客観的に測ることは、漠然とした不安を解消し、成長を実感するために非常に有効です。スピーキング力を測定するテストを定期的に受けることで、「今の自分」の立ち位置を知り、次に目指すべき目標を明確にすることができます。
小さな成功体験を積み重ねる
大きな自信は、小さな成功の積み重ねから生まれます。一日一言でも、一週間に一度の短い会話でも構いません。大切なのは、「今の自分の英語で何かを伝えられた」という実感を得ることです。
プロジェクトが掲げる「英語で話す一歩を、もっと軽やかに。」というメッセージは、「完璧を求めないこと」「伝えようとする姿勢を肯定すること」の重要性を私たちに教えてくれています。文法や語彙の学習と並行して、この「実践と肯定」のサイクルを回すことが、自信を持って「英語話せます」と言える日につながっていくのです。
プロジェクトの今後と読者ができる関わり方
このプロジェクトは、社会全体の意識を変えていくための長期的な取り組みとして計画されています。発表によれば、2027年からは賛同パートナーとの交流や、具体的な活動の事例紹介などが本格的にスタートする予定です。では、この動きに私たち個人の学習者は、どう関わることができるのでしょうか。
2027年からの活動予定
プロジェクトを主導する国際ビジネスコミュニケーション協会(IIBC)は、今後、賛同パートナーとの情報交換会や勉強会の開催、各組織での取り組み事例の紹介などを進めていくとしています。これは、企業や教育機関が社内・校内で「英語で話す一歩」を後押しする仕組みを作ることで、学習環境そのものを変えていこうという試みです。
また、プロジェクトでは引き続き、趣旨に賛同する団体の募集を行っています。企業や学校などが公式に賛同パートナーとして参加することで、組織内の学習者に対して、「TOEIC Speaking Test」および公式対策アプリ「TOEIC Pal」を特別価格で提供するなどの特典も用意されています。
このプロジェクトを主催する国際ビジネスコミュニケーション協会(IIBC)は、TOEIC Programを実施・運営する組織です。プロジェクト内で提供される特典には、スピーキングに特化したテストやその公式対策アプリが含まれており、「話す力」を測り、伸ばすための具体的なツールとして位置づけられています。プロジェクトの理念は、テストのスコアアップだけではなく、その先にある実際のコミュニケーションへの一歩を促すものと言えるでしょう。
個人として意識を変えることから始めよう
企業や団体ではなく、個人の学習者として最も重要なのは、このプロジェクトが提唱するマインドセットを自分の学習に取り入れることです。つまり、「完璧を目指すのをやめ、今の自分の英語で伝えようとする一歩を肯定する」という考え方です。
- オンライン英会話や言語交換アプリで、最初の5分は「間違えてもいいから伝える」ことに集中してみる。
- 学習仲間と、お互いに間違いを指摘し合わない「ノーコレクション英会話」の時間を作る。
- 「英語を話せる人」の基準を、「ネイティブのように流暢」から「自分の意思を伝えられる」に下げてみる。
大規模な社会プロジェクトは、一人ひとりの意識が変わらなければ成果は生まれません。調査で明らかになった「話せる」という自信のギャップを埋める第一歩は、私たち学習者自身が心理的なハードルを自分で下げてみる決断をすることから始まります。
- 個人でもこのプロジェクトに「賛同」することはできますか?
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プロジェクトの賛同パートナー募集は、企業や教育機関などの団体を対象としています。個人の学習者は、公式に賛同パートナーとして登録するのではなく、プロジェクトの理念を学び、ご紹介したようなマインドセットを自分の学習に取り入れることで間接的に参加・貢献することができます。
- プロジェクトの特設サイトでは何を見ることができますか?
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特設サイトでは、プロジェクトの背景や概要に加え、2026年8月に実施された調査の詳細な結果や、SNS上で「#英語話せますのハードル」というタグとともに投稿された声などを閲覧することができます。プロジェクトの最新情報も随時更新されていく予定です。
- このプロジェクトはTOEICのスコアアップを目指すものではないのですか?
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プロジェクトの主眼は、英語で話すことへの心理的ハードルを下げ、誰もが「今の自分の英語で」一歩を踏み出しやすい環境を作ることです。TOEIC Speaking Testなどのツールは、その「話す力」を客観的に測り、成長を確認するための一つの手段として位置づけられています。最終的な目標は、テストのスコアそのものよりも、実際のコミュニケーションへの自信と意欲を育むことにあります。
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