ビジネス英会話で『想定外の感謝』をスマートに受け止める!予期せぬ称賛・感謝に動じず、関係性を深める返答フレーズ完全実践ガイド

突然、英語での会議やメールで、予想していなかった感謝や称賛を受けたことはありませんか。「こんなこと、当然のことをしただけなのに」「まだ不十分だったのに」と、一瞬で頭が真っ白になり、適切な返答が浮かばず、もじもじしてしまった経験があるのではないでしょうか。

目次

なぜ「想定外の感謝」は私たちを困らせるのか?文化的背景と心理的ハードル

「想定外の感謝」に動揺する背景には、日本文化とグローバルビジネスの場で多く見られる欧米文化との間にある、評価と謙遜に対する価値観の違いがあります。まずはこの文化的な違いと、私たち自身の心理的な癖を理解することが、スマートな対応への第一歩です。

日本と欧米における「評価」と「謙遜」の文化差

日本の職場や社会では、謙虚であることが美徳とされ、「いえいえ、とんでもない」「まだまだです」という返答は、相手への敬意やさらなる成長への意欲を示すものとして好まれる傾向があります。一方、欧米を中心とした多くのビジネス文化では、個人の成果や貢献を明確に認め、互いに評価し合うことが、健全な関係性と信頼の基盤とみなされます。感謝や称賛は、単なる社交辞令ではなく、あなたの仕事や存在価値そのものを承認する重要なコミュニケーションなのです。

文化比較のポイント
日本の傾向欧米の傾向
「謙遜」は美徳。控えめな態度が評価される。「自己主張」と「成果の承認」が誠実さの表れ。
成果はチーム全体のもの。個人を過度に立てない。個人の貢献を明確にし、責任と評価を紐づける。
感謝されると「照れる」「申し訳なく思う」感情が湧く。感謝されると「認められた」「評価された」と受け止める。

この違いを理解せずに、日本の感覚で「No, no, it was nothing.(いえいえ、大したことじゃありません)」と反射的に否定してしまうと、相手からは「私の評価を軽視している」「自分の仕事に自信がなさそう」と誤解されるリスクがあります。あなたの謙虚さが、相手の誠意を否定するメッセージに変換されてしまう可能性があるのです。

「自分は大したことしていない」と思い込む3つの落とし穴

文化的背景だけでなく、私たち自身の考え方の癖も、適切な受け答えを難しくしています。次のような心理的ハードルに心当たりはありませんか。

心理的ハードル自己診断
  • 過小評価の癖:自分がこなした仕事を、誰でもできる「当たり前」のことと捉え、その価値を客観的に評価できていない。
  • 内集団バイアス:チームの一員として当然のことをしただけだと考え、個人として評価されることに違和感を覚える。
  • 成果の客観視不足:与えられた課題を「こなした」だけで、その結果が相手やプロジェクトにどのような具体的な利益や安心をもたらしたかを意識していない。

これらのハードルは、あなたの謙虚さやチームプレー精神の表れでもあります。しかし、グローバルな環境では、「自分が提供した価値」を認識し、それを言葉にできることが、プロフェッショナルとしての信頼を築く鍵となります。感謝された時こそ、自分がしたことの「価値」を振り返る絶好の機会なのです。

適切に受け止めることがビジネス信頼に与える好影響

「想定外の感謝」をスマートに受け止め、適切に返答することは、単にその場をうまく切り抜ける以上の効果があります。それは、あなたと相手との関係性を深める強力なツールになります。

感謝の言葉を素直に受け入れることで、あなたは「相手の評価を尊重している」「自分の仕事に責任と誇りを持っている」というメッセージを送れます。これにより、評価者との心理的距離は一気に縮みます。相手は「この人はきちんと評価を理解し、次も期待できる人だ」と感じ、今後のコミュニケーションや協力関係がより円滑で生産的なものになるのです。

大切なのは、謙遜の美徳を捨てることではなく、異なる文化の「評価のルール」を理解し、その場にふさわしい振る舞いを選択できるようになることです。

次のセクションでは、具体的にどのようなフレーズで、自信を持って感謝を受け止め、関係性をさらに良いものに発展させていけるのか、実践的な表現を詳しく見ていきましょう。

受け止め方の基本原則:動じず、感謝を承認し、関係性を次につなげる

予期せぬ称賛に適切に対応するためには、まず心構えと基本動作を身につけることが大切です。ここでは、相手の好意を認め、前向きな関係性を築くための具体的な「受け止め方」を3段階で学びます。驚きを乗り越え、スマートに次のステップへと進む方法です。

想定外の評価に最初に取るべき3つのアクション(心構え編)

驚きや照れは自然な反応です。重要なのは、その感情に飲み込まれないための「体の使い方」を事前に知っておくことです。

STEP
一呼吸置く

心の中で「Thank you」と一言唱え、ほんの一瞬、間を取ります。焦って「え?」「いえいえ」と否定から入るのを防ぎ、思考を整理するクッションになります。

STEP
笑顔を保つ

驚いた顔や困った顔は、感謝を否定している印象を与えかねません。口元をほんの少し緩めて、相手の好意を受け止める準備ができていることを表情で示します。

STEP
相手の目を見る

目線をそらさずに、感謝を伝えてくれた相手とアイコンタクトを保ちます。これは「あなたの言葉に真剣に向き合っています」という非言語のメッセージです。

この3つの動作は、自信と落ち着きを相手に伝え、その後の会話をポジティブな方向へ導く土台となります。

避けるべきNG返答:謙遜のつもりが信頼を損なう言い方

日本語の感覚で反射的に出てしまう返答の中には、グローバルなビジネスシーンでは逆効果になるものがあります。最も避けるべきフレーズと、その理由を確認しましょう。

注意すべきNGフレーズ

以下のような返答は、相手の評価や感謝の気持ちを無意識に否定してしまう可能性があります。

  • 「It was nothing.」(大したことではありません)
    あなたが努力したことを「何でもない」と言うことは、相手がそれを評価する判断力を疑っているように聞こえます。
  • 「I just did my job.」(ただ仕事をしただけです)
    「当然のことをしただけ」という言葉は、相手の感謝を「的外れだ」と突き返している印象を与え、関係性を深める機会を逃します。
  • 「No, no, it’s not true.」(いえいえ、そんなことないです)
    直接的な否定は、相手を不快にさせ、今後の率直なフィードバックを遠のかせる恐れがあります。

これらのフレーズの共通点は、「相手の好意や評価」を素直に受け止めず、無意識に「自分の価値」を下げてしまうことです。謙遜するつもりが、結果的に信頼を築くチャンスを損なうことになりかねません。

理想的な返答の流れ「Acknowledge(承認)→ Share(共有)→ Forward(前進)」モデル

では、具体的にどのように返答すればよいのでしょうか。次の3ステップで構成される「ASFモデル」が効果的です。これは単なるお礼ではなく、感謝を起点に、関係性を一歩前進させるためのコミュニケーションモデルです。

ASFモデル
ステップ目的キーフレーズ例
Acknowledge
(承認)
相手の感謝・称賛を素直に認め、受け止める。「Thank you so much. That means a lot to me.」
(誠にありがとうございます。とても励みになります。)
Share
(共有)
感謝の背景やチームの貢献に軽く言及し、恩着せがましくない形で共有する。「I’m glad I could contribute to the project. It was a team effort.」
(プロジェクトに貢献できて嬉しいです。チームの力でした。)
Forward
(前進)
この良い関係性を、次なる協力や未来の仕事へとつなげる。「I look forward to our continued collaboration.」
(これからも引き続きご一緒できるのを楽しみにしています。)

このモデルの強みは、単に「Thank you」と言うだけではなく、会話に深みと方向性を与える点です。「承認」で相手の気持ちを受け止め、「共有」で謙虚さとチーム意識を示し、「前進」で将来への期待を表明します。

実際の会話では、状況に応じて各ステップを柔軟に組み合わせてください。例えば、メールでの短い返信であれば、「Thank you for your kind words. I’m happy to hear that and look forward to the next opportunity.(ご親切なお言葉ありがとうございます。嬉しく思います。次の機会を楽しみにしています。)」のように、2つのステップをまとめることもできます。

大切なのは、否定や過剰な謙遜ではなく、相手の好意を起点にして、ポジティブな未来へと会話を紡いでいく意識を持つことです。

シチュエーション別 実践フレーズ集:驚きの度合いと関係性で使い分ける

受け止め方の基本を学んだら、次は具体的な表現を身につけましょう。想定外の感謝への返答は、あなたの驚きの度合いと、相手との関係性によって適切なものを選ぶことが大切です。ここでは、カジュアルからフォーマルまで、状況に応じてスマートに使い分けられるフレーズを、具体例とともにご紹介します。

軽い驚きと喜びを表す「カジュアル寄り」の受け答え

同僚や気心の知れたチームメンバーから、突然お礼や称賛を言われた時などに適しています。自然な驚きと素直な喜びを、少しカジュアルなトーンで表現します。

シチュエーション使用例ニュアンス解説
さりげない感謝を口頭で受け取った時“Oh, wow! Thank you for saying that.”「わあ!そう言ってくれてありがとう」。一瞬の驚きと感謝をナチュラルに融合。
思わず笑顔がこぼれるような褒め言葉をもらった時“That’s so kind of you! I’m really glad to hear that.”「優しい言葉をありがとう!それを聞けてとても嬉しいです」。感謝と自分の喜びを素直に伝える。
メールでの感謝にすぐ返信したい時“Thanks so much for your kind words! They made my day.”「温かいお言葉、本当にありがとうございます。一日が明るくなりました」。短く、気持ちの良い返信。

ポイント:「Oh, wow!」や「That’s so kind!」といった感情表現を入れることで、想定外であることと喜びを同時に伝えられます。声のトーンと笑顔を忘れずに。

公式な場面や上司からの評価にふさわしい「プロフェッショナル」な表現

会議の場や、上司、クライアントなどからの感謝・評価に対しては、敬意を示しつつも自信を持って受け止める表現が求められます。成果を認め、関係性を前向きに進める言い回しを覚えましょう。

シチュエーション使用例ニュアンス解説
プロジェクトの成果を公式に評価された時“I truly appreciate you taking the time to recognize this effort.”「この取り組みをわざわざ評価してくださり、心より感謝いたします」。評価そのものと、その行為への感謝を伝える。
上司から公の場で称賛された時“Thank you for your feedback. It’s rewarding to see our work valued.”「ご評価をありがとうございます。私たちの仕事が高く評価されるのは励みになります」。感謝と、チームのモチベーション向上につながる旨を述べる。
クライアントからの予想外の感謝メールへの返信“I’m very grateful for your positive acknowledgment. It was a pleasure to collaborate on this project.”「前向きな評価に深く感謝します。このプロジェクトでご一緒できたことを嬉しく思います」。感謝と、協業への満足感をプロフェッショナルに表現。
表現の核心

フォーマルな表現では、「appreciate」「grateful」「acknowledgment」といった単語が鍵になります。これらの言葉は、感謝の深さと敬意を同時に示し、ビジネスシーンでの信頼感を高めます。単に「Thank you」と言うよりも、より洗練された印象を与えることができます。

感謝の大きさに圧倒された時こそ使いたい「謙虚さと感謝」のバランス表現

非常に大きな評価や、尊敬する人物からの感謝を受けて、ただ「ありがとう」と言うだけでは物足りないと感じる時があります。そんな時は、相手の評価を高く掲げつつ、自分の貢献も控えめに認める、高度なバランス表現が効果的です。

“That means a great deal coming from you. I’m grateful to have been able to contribute.”

このフレーズは二つの要素から成り立っています。前半の「That means a great deal coming from you.(あなたからそう言われると、とても大きな意味があります)」で、相手の評価を特別なものとして受け止める姿勢を示します。後半の「I’m grateful to have been able to contribute.(貢献できたことに感謝しています)」では、自分の努力を誇示するのではなく、貢献する機会を得られたことへの感謝に焦点を移します。これにより、傲慢にならずに評価を受け入れることができます。

「coming from you」という部分は、相手が誰であるかを強調する魔法のフレーズです。例えば、経験豊富な先輩や、業界で有名な人物からの評価に対して使うと、相手へのリスペクトが強く伝わります。

STEP
バランス表現を組み立てる
  • 1. 相手の評価を尊重する言葉で始める。(例: Your feedback is incredibly valuable. / あなたからのフィードバックは非常に貴重です。)
  • 2. 自分の感情や貢献を、控えめかつ前向きに表現する。(例: It motivates me to continue improving. / それは私が改善を続けるための励みになります。)
  • 3. 必要に応じて、チームや周囲への言及を加え、一人の成果ではないことを示す。(例: I couldn’t have done it without the team’s support. / チームのサポートなしには成し得ませんでした。)

最終的に、どのような表現を選ぶにせよ、最も重要なのは誠実さです。驚きのあまり言葉に詰まってしまったとしても、深呼吸をして、まずは「Thank you」と口にすることから始めてみてください。その一言が、その後の良好な関係性の礎となります。

上司からの予期せぬ感謝に、緊張して何も言えません。どうすればいいですか?

まずは「Thank you.」と一言伝えるだけで十分です。短くても誠実に言えば、相手には感謝が伝わります。慣れてきたら、「Thank you. I’m glad I could be of help.」のように、一言付け加えてみましょう。

「That’s so kind of you!」は、上司に使っても失礼になりませんか?

親しい上司やカジュアルな雰囲気の職場であれば問題ありません。しかし、非常にフォーマルな場面や、関係性が堅い場合は、「That’s very kind of you.」や「I appreciate your kind words.」の方が無難です。場の空気を読みながら使い分けましょう。

メールで感謝された時、返信はすぐにした方がいいですか?

すぐに返信できれば理想的ですが、焦る必要はありません。その日のうち、または翌営業日中に、丁寧な返信を送れば大丈夫です。本文は短くても構いませんが、感謝の言葉と相手の評価を喜んでいる気持ちを明確に書きましょう。

さらに関係性を深化させる「一言プラスα」の技術

基本の受け答えができるようになったら、次は一歩進んで関係性そのものを強化する「一言プラスα」を加えましょう。単に感謝を認めるだけでは終わらせず、会話を深め、相手との信頼を未来へとつなげる技術です。ここでは、予期せぬ感謝や称賛を、あなたの評価とポジションを高めるチャンスへと変える具体的な返答の型を紹介します。

感謝の受け答えに「具体的なフィードバック」を返す方法

「ありがとう」と返すだけでは、その場で会話が終わってしまうことがあります。相手の感謝をさらに掘り下げ、何が評価されたのかを具体的に確認することで、より深い対話が生まれます。相手は「自分の意図が正確に伝わった」と感じ、あなたへの信頼感が増します。

Before / After 比較:会話の深さが変わる

After (深掘りした返答)
相手: “Thank you for the thorough market analysis. It was exactly what I needed.”
あなた: “Thank you for saying that. I’m especially glad that the competitor comparison section was helpful to you. I spent extra time on that part.”

Before (一般的な返答)
相手: “Thank you for the thorough market analysis. It was exactly what I needed.”
あなた: “You’re welcome.”

Afterの例では、「何が」役に立ったのかを具体的に指摘しています。この「I’m especially glad that the [具体的な部分] was helpful to you.」という型は非常に強力です。相手の言葉を繰り返すだけでなく、あなた自身の努力や着眼点を自然にアピールする機会にもなります。

チームの功績を適切に称えることで自分も高く見せる言い方

プロジェクトの成果を一人で評価された時、謙遜するだけではもったいありません。自分を「効果的な協働者」として位置づけ、チーム全体への評価へと昇華させる返答が理想的です。

この技術の核心は、「成果は個人ではなく、協力の賜物である」という姿勢を示すことです。これにより、あなたは「自己中心的でない」「チームプレイヤーである」という印象を相手に与えられます。

  • 基本形: “I couldn’t have done it without the support from [チーム名/部署名].” ([チーム名]のサポートがなければ成し遂げられませんでした。)
  • 応用形: “That’s very kind of you. It was truly a team effort, especially with the great input from the marketing team.” (お言葉ありがとうございます。特にマーケティングチームからの優れた意見があってこその、チームの成果です。)
「一言プラスα」の発想法

感謝を受け取った瞬間、頭の中で次の3つのステップを素早く回してみましょう。

  1. 具体化: 相手は私の「何」を評価しているのか?(例:提案内容、迅速な対応、資料の見やすさ)
  2. 拡張: この成果に関わった他の人や要素はあるか?(例:チーム、参考にしたデータ、過去の経験)
  3. 未来志向: この評価を、次にどう活かせるか?(例:同じ手法を別プロジェクトで応用、関係を継続)

この思考プロセスに沿うことで、単純な「ありがとう」から、関係性を深化させる一言が自然に導き出せます。

次回への期待を自然に醸成する未来志向の一言

感謝の交換で会話を終わらせるのではなく、前向きな関係の継続をほのめかす一言で締めくくるのが上級者の技術です。これにより、単発の取引から継続的なパートナーシップへの道筋が見えてきます。

最も効果的なフレーズの一つが、「I’m looking forward to tackling the next challenge together.」です。この一言には、「今回の協力が良かった」「また一緒に仕事がしたい」という二重のメッセージが込められています。相手も自然に次回への期待を抱くでしょう。

状況に応じて、以下のようなバリエーションも使えます。

  • “I really enjoyed collaborating on this. Let’s keep in touch for future opportunities.” (今回の協働は楽しかったです。今後の機会にもぜひ。)
  • “Thank you. This feedback is invaluable for our next project.” (ありがとうございます。このフィードバックは次のプロジェクトにとって貴重です。)
  • “I appreciate you trusting me with this. I’m excited to see what we can achieve next.” (お任せいただき感謝します。次に何ができるか、楽しみです。)

これらの「一言プラスα」を身につけると、想定外の感謝は単なるハプニングではなく、あなたの人間性とプロフェッショナリズムを示す、かけがえのない機会へと変わります。基本を押さえた上で、ぜひこれらの深化技術にも挑戦してみてください。

実践トレーニング:架空のシナリオで瞬発力を鍛える

フレーズを知識として知っているだけでは、本番でとっさに口から出るとは限りません。ここでは、想定外の感謝をスマートに受け止める「思考プロセス」を、具体的なケーススタディを通じてトレーニングします。シナリオカードで状況を確認し、心理状態を分析した上で、最適な返答の一連の流れを追体験してみましょう。

トレーニングのポイント

各ケースで、まずはあなたの「驚きの度合い」と「相手との関係性」を分析します。その上で、適切なフレーズを選び、最初の一言から本論、締めの一言までを組み立てる練習をします。複数の選択肢を示すので、あなた自身の言葉でアレンジする余地もあります。

ケーススタディ1:取引先の重役から、プレゼンの細かい配慮を直接褒められる

シチュエーション

重要な取引先との会議後、あなたが担当したプレゼンが終わりました。同席していた取引先の重役が、あなたに近づいてこう言います。

“I was particularly impressed by how you organized the appendix. It made it so easy to follow up on the technical details. Thank you for your thorough preparation.”

プレゼン全体ではなく、資料の付録部分の「細かい配慮」に着目して褒められています。これは想定外の、深い観察眼からの感謝です。

心理状態の分析とフレーズ選択

  • 驚きの度合い:中〜高。直接的な称賛で、しかも細部への気付きに驚く。
  • 関係性:フォーマル。取引先の重役という立場上、丁寧で控えめな表現が求められる。
  • 最適な返答の方向性:驚きを示しつつも謙虚に受け止め、感謝を認めた上で、その気付き自体を褒め返す「ASFモデル」を活用する。

模擬返答フロー

  1. 最初の一言(驚きの表現): “Oh, thank you for saying that.”(ああ、そう言っていただきありがとうございます。)
  2. 本論(ASFモデルに沿って)Acknowledge: “I’m glad to hear the appendix was helpful.”(付録がお役に立てたようで嬉しいです。) Shift: “It was a team effort to make sure all supporting materials were clear.”(すべての補足資料を明確にするのはチームの努力でした。) Forward: “Your feedback is very valuable for our future presentations.”(今後のプレゼンのためにも、ご意見は大変貴重です。)
  3. 締めの一言: “I appreciate you taking the time to share that with me.”(わざわざお伝えくださり感謝します。)

別のパターンとして、よりシンプルに “That’s very kind of you to notice. I wanted to make sure everything was accessible.”(お気づきいただきありがたいです。すべてをアクセスしやすくしたいと思っていました。)という返答も適切です。

ケーススタディ2:グローバル上司が全社メールで、あなたの地道な調整作業を称賛

シチュエーション

複数の部署を跨ぐ大規模なプロジェクトが無事終了しました。グローバルチームを統括する上司から、関係者全員に送られた感謝メールの中に、あなたの名前が具体的に挙げられています。

“…special thanks to [Your Name] for the incredible coordination work behind the scenes. Your meticulous follow-ups ensured everything stayed on track.”

公開の場で、目立たない「舞台裏」の努力に焦点が当てられました。周囲の目もある中での称賛です。

心理状態の分析とフレーズ選択

  • 驚きの度合い:高。公の場でのサプライズ称賛は特に動揺する。
  • 関係性:フォーマル寄り(上司)。公の称賛に対しては、公の場(返信メールなど)で丁寧に受け止める必要がある。
  • 最適な返答の方向性:感謝を素直に喜び、チーム全体の成功に貢献できたことを強調する。個人的な手柄としてではなく、プロジェクトへの貢献として受け止める姿勢を見せる。

模擬返答フロー(返信メール想定)

  1. 最初の一言(驚きと感謝): “Thank you so much for the kind mention in your email. It was a very pleasant surprise.”(メールでお名前を挙げていただき、誠にありがとうございます。とても嬉しいサプライズでした。)
  2. 本論(ASFモデルに沿って)Acknowledge: “I’m truly happy to hear that the coordination efforts were appreciated.”(調整作業が評価されたと聞き、本当に嬉しく思います。) Shift: “The smooth progress was thanks to the excellent collaboration from all teams involved.”(順調な進捗は、関わっていただいたすべてのチームの素晴らしい協力のおかげです。) Forward: “It was a great learning experience, and I look forward to contributing to future projects.”(大変良い学びの機会であり、今後のプロジェクトにも貢献できることを楽しみにしています。)
  3. 締めの一言: “Once again, thank you for your leadership and encouragement.”(リーダーシップと励ましに、改めて感謝申し上げます。)

ケーススタディ3:同僚から、あなたが忘れていた些細な助言に対する深い感謝を受ける

シチュエーション

オフィスのキッチンで同僚とばったり会いました。その同僚が、何か月も前にあなたが軽く口にした一言が、彼女の大きなプロジェクトの突破口になったと、熱心に感謝してきます。

“Hey, I never got to thank you properly. Remember that tool you mentioned casually a while back? I tried it, and it completely solved my data analysis bottleneck! You saved me weeks of work.”

あなた自身はほとんど覚えていないような些細な会話が、相手にとっては重大な転機でした。カジュアルな場面での、心のこもった感謝です。

心理状態の分析とフレーズ選択

  • 驚きの度合い:中。内容自体に驚き、自分の発言がそこまで役立ったことに喜びを感じる。
  • 関係性:カジュアル(同僚)。堅苦しさは不要だが、相手の熱意に応じた温かい受け答えが理想。
  • 最適な返答の方向性:驚きを率直に表現し、相手の成功を心から喜ぶ。自分の貢献を過小評価せず、しかし誇示もせず、会話をポジティブに終わらせる。

模擬返答フロー

  1. 最初の一言(驚きと喜び): “Wow, really? I’m so glad to hear that!”(え、本当? そう聞けてすごく嬉しい!)
  2. 本論(ASFモデルに沿って)Acknowledge: “That’s amazing that it worked out so well for you.”(あなたにとってそんなにうまくいったなんて、素晴らしいですね。) Shift: “To be honest, I had almost forgotten about that conversation.”(正直なところ、その会話はほとんど忘れていました。) Forward: “I’m just happy I could help. Let me know if you come across any other cool tools!”(お役に立てたならそれだけで嬉しいです。他に何か良いツールを見つけたら、ぜひ教えてくださいね。)
  3. 締めの一言: “Thanks for telling me. That made my day.”(教えてくれてありがとう。今日のハイライトです。)

より短く “That’s fantastic! All the credit goes to you for putting it into action.”(それはすごい! それを実行に移したあなたの功績ですよ。)と返すこともできます。


練習問題:あなたならどう答える?

以下の空欄を、これまで学んだフレーズを参考に埋めてみましょう。正解は一つではありません。状況をイメージしながら、あなたなりの言葉を考えてください。

シナリオあなたの返答(草案)
チームメンバーが「あなたの進行のおかげで締切に間に合った」と感謝してきた。最初の一言:
本論(Acknowledge):
本論(Shift/Forward):
顧客から「提案書のデザインが非常に見やすかった」とメールで称賛された。最初の一言:
本論(Acknowledge):
本論(Shift/Forward):

このトレーニングを通じて、想定外の感謝への反応が「反射神経」に近づいていくはずです。大事なのは完璧な英語ではなく、相手の好意を誠実に受け止め、前向きな関係を築こうとする姿勢を伝えることです。

著者プロフィール

大学受験・英語資格試験塾講師。大学時代にアメリカへ1年間留学。卒業後は海外書籍を取り扱う出版社で編集職に6年間従事した後、英語教育の現場へ転身。大学受験生向けや、社会人の英語資格試験対策の講義を担当し、実践的で分かりやすい解説に定評がある。出版社時代に様々なジャンルの英語書籍を担当した経験から、法律から工学まで業界特有の英語表現やビジネス英語に関する幅広い知識を持つ。また、二児の母という立場から、実体験に基づいた子どもの英語教育に関する発信も行っている。

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