海外の大学や大学院への進学を目指す多くの人が、最初に挑戦するのがTOEFL iBTという英語の試験です。この試験は、留学を希望する人にとって避けて通れない重要な関門となっています。しかし、目標スコアを獲得すること自体が最終目的になってしまうケースも少なくありません。その結果、留学後に実際に求められる英語運用力や、現地での学び方・働き方との間にギャップを感じてしまうことがあります。こうした問題意識を背景に、TOEFLテストの開発元と、多くの学生・社会人を海外に送り出してきた留学支援会社が、「スコアの先」に求められる力について語り合う対談が公開されました。
なぜ今、「スコアの先」が問われるのか

留学を目指す人にとって、TOEFL iBTは重要な出発点です。スコアは、海外の教育機関に自分の英語力を示す客観的な指標となります。しかし、ここに一つの落とし穴があります。それは、試験対策に集中するあまり、スコアの獲得自体がゴールになってしまい、留学後に必要となる実践的な英語運用能力の育成がおろそかになる可能性があることです。
留学支援の現場では、目標スコアをクリアしたものの、実際の留学先で授業の内容についていけなかったり、現地でのインターンシップや日常生活でコミュニケーションに苦労したりするケースが報告されています。この「スコア」と「実践力」のギャップを埋めるためには何が必要なのか。その答えを探るために、試験の開発側と留学支援の実践側が意見を交わす場が設けられたのです。
この問題は、単に試験の難易度や範囲を超えた話です。留学は、異なる文化や価値観の中で、学問を探求し、時には働きながら自分自身を成長させる体験です。そのためには、試験で測られる英語力に加えて、授業を聴き、ディスカッションに参加し、レポートを書き、現地の人々と協力するための「生きた英語力」が不可欠です。対談では、こうしたスコアの先にある真の課題と、これからの時代に求められるグローバルな視点について、深く掘り下げられています。
TOEFLが世界的に信頼される理由と「健康診断」という考え方
ある英語の試験は、世界中で高い信頼を得ています。その試験とは、海外の大学や大学院に留学を希望する多くの人が受験するものです。この試験を開発・運営する団体の担当者は、自らの留学経験をふまえて、この試験を「健康診断」に例えています。これは一体どういう意味なのでしょうか。そこから見えてくるのは、スコアを獲得するだけでは不十分であるという現実です。
世界160カ国以上で採用される信頼性の源泉
この試験が世界中で評価され続ける理由は、その測定方法と目的にあります。開発元によれば、この試験は単なる知識の確認ではなく、学術的な場面で実際に必要とされる英語の「運用力」を測ることに特化している点が大きな特徴です。具体的には、世界中で多くの教育機関が入学審査の基準として採用しています。
ある英語試験の世界的な採用実績は、以下の通りです。
- 採用国・地域:160カ国以上
- 採用教育機関:13,500校以上
これほど多くの機関が一つの試験を共通の尺度として採用しているということは、そのスコアが「どの国のどの大学でも通用する客観的な指標」として機能していることを示しています。受験生は、このスコアを一つの目標として学習を進めることになります。
平氏が語る「TOEFLは健康診断」の意味
この試験の開発元である団体の担当者、平氏は、自身のアメリカ留学と現地での就業経験から、ユニークな比喩を提示しています。平氏は、この試験を「健康診断」と捉えるべきだと語ります。
「健康診断は、今の自分の状態を数値で示してくれます。血糖値が高い、コレステロール値に注意が必要、といった『現在地』を教えてくれるものです。あの試験も同じで、今の自分の英語力がどのレベルにあるのかを客観的に測定する『現在地確認のツール』なのです」
つまり、この試験のスコアは「目的地」ではなく、留学という長い旅路における「現在地」を示すものだということです。目標スコアを獲得したからといって、それで学習が終了するわけではありません。むしろ、そのスコアが示す「自分の英語力の状態」を理解し、留学先で必要とされる実際のコミュニケーション能力や学術的スキルをさらに伸ばしていくことが、真の目的となります。
スコア獲得は通過点で、ゴールではありません。その先にある「スコアでは測れない力」を養うことが、留学成功の鍵を握ります。
「グローバル人材=英語ができる人」ではない? 対談で示された新たな視点



留学を目指す人やグローバルキャリアを考える人の中には、英語さえできれば大丈夫と考えている人もいるかもしれません。しかし、SEKAIA株式会社の取締役副社長と、TOEFLテストを開発・運営するETS Japanの担当者との対談では、単なる語学力だけでは、留学後やグローバルな環境での成功は保証されないという見解が示されました。
不確実な時代に海外へ行く意味
対談の中で、SEKAIAの万出 恵取締役副社長は自身の高校時代のニュージーランド留学経験や、その後ブランドマネージャーやコンサルタントとしての多様なキャリアを踏まえて、現代における留学の意義について語りました。既存の答えが通用しない不確実性の高い時代だからこそ、海外で学ぶことの価値が再定義されています。
求められるのは、変化する環境で自ら学び、適応する力です。
つまり、試験で高得点を取るための英語力だけではなく、現地の大学の講義を理解し、ディスカッションに参加し、異なる文化背景を持つ人々と協働するための総合的な英語運用力が重要だということです。これは、事前に用意されたシナリオ通りに進むものではなく、予期せぬ課題に直面しながらも、その場で考え、対応していく力を含みます。
留学支援のプロが考える「その先」で求められる力
多くの学生や社会人を海外の大学やインターンシップに送り出してきた立場から、万出氏はスコアの先にある現実をよく理解しています。目標スコアの獲得は通過点にすぎず、その先にある留学先での学び方や、インターンシップ先での働き方をどのように身につけ、実践していくかが、真の課題となります。
対談で語られた視点を整理すると、以下のような違いが浮かび上がります。
- 従来のイメージ: グローバル人材は英語がペラペラな人。
- 新しい視点: 英語は手段。不確実な環境で学び、適応し、価値を生み出す力が重要。
- 従来のイメージ: 留学の目標は試験の目標スコア獲得。
- 新しい視点: スコアは健康診断。その先の現地での学び方、働き方の習得が本質。
- 従来のイメージ: 海外経験は語学力の向上。
- 新しい視点: 異文化理解、自己効力感、多様性への対応力など、総合的な人間的成長の場。
例えば、現地の大学では、日本の教育スタイルとは異なる積極的な授業参加や批判的思考が求められることがあります。また、インターンシップでは、語学力以上にコミュニケーションスキルやビジネスマナー、課題解決能力が試されます。試験対策で培った力を、こうした実践の場でどのように運用するかが、留学成功のカギを握ります。
この対談は、留学を志す人々に、短期的なスコアアップだけではなく、中長期的な視野で自身の成長とキャリアを考えるきっかけを提供しています。英語学習のゴールをテストの先に設定することで、より実践的で意味のある学びのプロセスが描けるでしょう。
対談の登壇者と関連プログラム
今回の対談では、ある国際的な英語能力試験の開発・運営団体の担当者と、海外への留学・インターンシップを幅広く支援する会社の副社長が、留学後の現実について率直な意見を交わしました。彼らの経験と見解が、試験対策の「その先」を考える上で貴重な視点となります。
ある試験開発団体の担当者と留学支援のプロフェッショナル
対談に登壇したのは、ある世界的な英語能力試験の開発・運営を行う団体の日本法人で、事業企画を担当する人物です。彼の役割は、試験の普及促進にとどまらず、大学や高校との連携、交換留学を支援するプログラムの企画・運営にまで及びます。具体的には、「TOP Program」や「TOEFL HACK」といった取り組みを通じて、日本の若者が世界で学び、活躍する機会を創出することに携わっています。
もう一人の登壇者は、留学支援会社の取締役副社長であり、ビジネス留学プログラムのディレクターを務める女性です。彼女自身、高校時代を海外で過ごし、大学卒業後はブランドマネージャーやコンサルタントとしてのキャリアを積み、現在はグローバル人材育成と特定の留学プログラムの設計・統括を担っています。
- ある試験開発団体 担当者: 日本での試験普及、教育機関との連携、留学支援プログラムの企画運営を担当。自身の留学・海外就業経験を持つ。
- 留学支援会社 副社長: 高校時代の留学経験者。ブランドマネージャー、コンサルタントを経て、現在はグローバル人材育成とビジネス留学プログラムを統括。
「学び」と「実践」を融合させる留学プログラム
対談を主催した留学支援会社が提供する「IBP」と呼ばれるプログラムは、単なる語学留学ではなく、ビジネスに特化した留学プログラムです。このプログラムは、大学生や社会人を対象としており、海外の提携大学での授業と、現地企業でのインターンシップを組み合わせた内容になっています。
提携先はアメリカ、オーストラリア、イギリス、マレーシアの大学に及び、特にアメリカのコースでは、留学生が卒業後に一定期間現地で働くことを許可する「OPT」という制度を利用したインターンシップが可能です。こうしたプログラムの存在は、試験でスコアを獲得した後の具体的なキャリアパスを考える上で、一つの具体的な選択肢を示しています。
留学・グローバルキャリアを目指す読者への具体的な示唆
ある国際的な英語能力試験の開発元と留学支援会社の対談では、スコア獲得の「その先」に焦点が当てられました。この議論は、留学やグローバルキャリアを目指すすべての人に、具体的な示唆を与えてくれます。
TOEFL学習の捉え方を変える
対談では、スコア獲得自体が目的化し、留学後に求められる実践的な英語運用力や現地での学習・生活との間にギャップが生じるケースが指摘されました。これは、試験対策を「合格点を取るための勉強」から「留学準備の一環」へと捉え直す必要性を示しています。
ある留学支援会社は、数多くの学生・社会人を海外へ送り出す経験から、「スコアの獲得そのものが目的になってしまい、留学後に求められる英語運用力や、現地での学び方・働き方とのギャップに直面するケースも少なくない」と指摘しています。スコアは、あくまで通過点です。
特に、試験のスピーキングやライティングセクションの対策は、単なる「解答テクニック」としてではなく、現地でのディスカッション参加やレポート作成など、「運用力」の基礎を築く機会と位置づけて学習することが重要です。
スコア獲得後のアクションをイメージする
では、試験対策と並行して、どのような準備を進めればよいのでしょうか。鍵は、目標を明確にし、その実現に必要な力を具体的にイメージすることです。
単に「〇〇大学に行きたい」ではなく、具体的な授業形式(講義型か演習型か)、評価方法(試験かレポートか)、課外活動やインターンシップの機会まで調べましょう。ある留学プログラムでは、海外大学での学びと現地でのインターンシップを組み合わせており、学習と実践の両面からスキルを磨くことができます。
対談では、「グローバル人材=英語ができる人」ではないという視点が示されました。日頃から以下のような力を意識して養いましょう。
- 異文化理解力:国際ニュースを多角的に分析したり、オンラインで海外の人と交流したりする。
- 主体性:自分の意見を論理的に組み立て、発信する練習を日常的に行う。
- 適応力:不確実な状況でも柔軟に対応する心構えを持つ。
このように、試験対策を単なる「壁」としてではなく、未来の自分を形作る「トレーニング」として捉え直すことが、スコアの先にある学びとキャリアへの第一歩となります。
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