企業活動のグローバル化が進む中、職場で予期せぬ英語での会話に直面するビジネスパーソンが増えています。オンライン英会話サービスを展開する株式会社レアジョブが2026年9月1日に発表した調査によると、経理や総務など、これまで英語が直接関係ないと思われていた職種でも、月に1回以上の「不意打ち英会話」が発生している実態が明らかになりました。
「不意打ち英会話」とは? 調査の背景と定義

調査を実施したレアジョブは、近年の人手不足や外国籍人材の採用拡大を背景に、職場での英語コミュニケーションの機会が広がっていると分析しています。その中で特に増えているのが、社内の外国人の同僚からの急な業務相談や問い合わせなど、事前に英文を準備する時間がなく、その場で即座に応答を求められるコミュニケーションです。同社はこのような状況を「不意打ち英会話」と定義し、その実態を探る調査を2026年8月に、20代から50代の社会人470名を対象に行いました。
「不意打ち英会話」とは、調査を実施したレアジョブが定義した用語です。メールや事前資料がある会議と異なり、以下のような特徴があります。
- 相手の発言内容が事前にわからない
- 英文を考える時間がほとんどない
- その場で自分の言葉で返答する必要がある
なぜ今、突発的な英会話が問題になるのか
調査結果によると、不意打ち英会話の8割以上が「社内の外国人メンバーとの会話」で発生しています。これは、英語が海外の顧客や支社と仕事をする一部の人だけのスキルではなく、国内の職場においても日常的に求められるコミュニケーション手段へと変わりつつあることを示しています。同じオフィスで働く同僚との日常的な連絡や雑談の中で、突然英語での対応を迫られるケースが増えているのです。
「不意打ち英会話」の具体的な定義
今回の調査で焦点が当てられたのは、単に「英語で話すこと」そのものではありません。重要なのは「事前準備ができない」という点です。英語のプレゼンや報告書の作成は、時間をかけて内容を練り、単語や表現を調べることができます。しかし、不意打ち英会話では、相手の言っていることを瞬時に理解し、自分で考えた内容を即座に英語で伝えなければなりません。これは、多くの英語学習者が苦手とする「リスニング」と「スピーキング」の総合力が試される、実践的なコミュニケーション能力そのものなのです。
調査結果1: 英語が無縁と思われる職種でも頻発



調査結果は、英語を使う部署という従来のイメージを大きく覆すものでした。海外との商談がある営業職(55.9%)よりも高い頻度で「不意打ち英会話」に直面している職種がいくつも見つかったのです。
最も頻度が高かったのは経理・財務職で、回答者の65.5%が月1回以上の経験があると答えました。これは、グローバルな財務報告や外国籍社員への給与説明など、数字を扱う業務の中でも英語でのコミュニケーションが必要な場面が増えていることを示唆しています。続いて企画職(56.3%)、エンジニア・プログラマー(49.4%)、総務・人事(49.2%)と、約半数の人が月に1回以上の頻度で経験していることがわかりました。
- 経理・財務: 65.5%
- 企画: 56.3%
- 営業: 55.9%
- エンジニア/プログラマー: 49.4%
- 総務・人事: 49.2%
この結果が意味するのは、英語学習は「海外勤務を目指す人」や「外資系で働く人」だけのものではなくなったということです。「経理や総務だから英語は必要ない」という考えは、現実のビジネス環境では通用しにくくなっています。自分の職種に関連する基本的な業務連絡や、頻出する質問への応答パターンを学んでおくことが、現代のビジネスパーソンには求められています。
調査を実施したレアジョブは、この背景には人手不足を背景とした外国籍人材の採用拡大があると分析しています。英語はもはや「海外の顧客や支社と仕事をする一部の人のスキル」ではなく、国内の職場においても日常的に求められるコミュニケーション手段へと変化しつつあると言えるでしょう。
調査結果2: 背景は職場の多国籍化、8割が社内での会話
なぜ、これほどまでに多くの部署で突発的な英語会話が発生しているのでしょうか。その背景には、職場の急速な多国籍化があることが調査で明らかになりました。
不意打ち英会話の発生場所は、社外の取引先よりも、同じ職場にいる外国籍の同僚とのコミュニケーションが圧倒的に多いのです。
調査では、業務上の不意打ち英会話がどのような場面で発生するかを尋ねています。
- 「社内の外国人メンバーとの業務上の会話」:46.6%
- 「社内の外国人メンバーとの日常会話や雑談」:36.0%
これらを合わせると、全体の82.6%が社内でのコミュニケーションによるものとなります。海外との会議や商談よりも、日々の業務連絡やちょっとした雑談の中で、英語での即応が求められている実態が浮かび上がります。
英語は「海外との仕事」から「国内職場のコミュニケーション手段」へ変化
この結果は、ビジネスパーソンにとっての英語の位置づけが変化していることを示唆しています。これまでは海外顧客や支社と仕事をする一部の人たちに求められるスキルでしたが、今では国内のオフィスの中での日常的なコミュニケーション手段へと変わりつつあります。
背景には、人手不足を補うための外国籍人材の積極的な採用があります。同じプロジェクトで働く同僚が外国人であることは、もはや特別なことではありません。給与や経費の説明(経理)、福利厚生や規則の確認(総務や人事)、仕様や進捗の相談(エンジニア)など、あらゆる業務で、英語での説明や雑談が突然必要になる場面が生まれているのです。
この傾向は、英語学習の目標設定にも影響を与えています。流暢なスピーチを目指すだけでなく、「目の前の仕事を確実にやり遂げる」ための実用的な英語力、いわば「サバイバルイングリッシュ」が、多くの職種で不可欠になってきているといえるでしょう。
調査結果3: 初級者でも半数が直面、2人に1人が苦戦



職場での突発的な英語コミュニケーションは、英語学習の初心者にとっても他人事ではありません。調査によると、英語力が初級レベル(CEFR* A1〜A2)に該当する人々の約半数(49.3%)が、月に1回以上の頻度で「不意打ち英会話」に直面していることがわかりました。これは、社内に外国籍の同僚が増える中で、経験やスキルの有無に関わらず、多くのビジネスパーソンが日常的に英語でのコミュニケーションを求められている現状を浮き彫りにしています。
さらに深刻なのは、そのような状況に対する対応力の不足です。月に1回以上不意打ち英会話を経験している初級者のうち、約2人に1人(47.9%)が「あまり対応できない」または「まったく対応できない」と回答しています。事前に準備する時間がなく、その場で相手の発言を理解し、即座に自分の言葉で返答する能力が求められる状況は、英語力が十分でない人にとって業務を円滑に進める上での大きな障壁となっているのです。
CEFR(Common European Framework of Reference for Languages)は、言語能力を評価する国際的な基準です。A1〜A2は「基礎段階の言語使用者」とされ、具体的な欲求を満たすための、よく使われる日常的表現と基本的な言い回しを理解し、使用できるレベルを指します。例えば、自己紹介や身近な話題についての簡単な質問ができる程度です。
不意打ち英会話で求められる「即座の理解と応答」は、この初級レベルをはるかに超える能力を必要とすることが多いのです。
調査結果4: 対策のギャップ インプット偏重、アウトプット不足



では、職場で突発的に英語を話さなければならなくなった時、多くのビジネスパーソンはどのような準備をしているのでしょうか。調査結果は、現場で求められる力と、個人が行っている対策の間に大きなギャップがあることを明らかにしています。
具体的な業務で使う場面を想定し、単語やフレーズを覚えることは、英語学習の第一歩として間違いではありません。しかし、「不意打ち英会話」の本質は、事前に用意した文章を読むことではなく、相手の言うことを即座に理解し、自分の言葉で瞬時に返答することにあります。
求められているのは「書かれた英文を読む力」ではなく、「その場で話す力」です。
にもかかわらず、初級レベルの学習者が実際に行っている対策を見ると、この本質的な要求に応える練習が圧倒的に不足していることが浮き彫りになりました。
| 現場で求められる力 | 実際に行われている主な対策 | 実施割合 (初級者) |
|---|---|---|
| その場で理解し、即座に応答する力 | 仕事で使いそうな英文や表現を覚える | 35.7% |
| 自らの言葉で発話する力 | 英単語やフレーズを覚える | 32.5% |
| 予期せぬ会話への対応力 | 英文法を学び直す | 19.5% |
| オンライン英会話等で実際に会話する練習 | 8.0% | |
| 想定場面での一人での発話・ロールプレイ | 1.0% |
表が示す通り、「覚える」インプット型の学習が対策の中心を占めている一方で、実際に「話す」アウトプット型の学習に取り組んでいる人は合わせて10%にも満たないという結果です。月に1回以上「話す」場面に直面しながら、その対策として「話す」練習をほとんどしていないという、深刻な乖離がここにあります。
単語や文法の知識は英語を「理解する」ための基盤ですが、それだけでは「話す」ことはできません。スポーツで言えば、ルールブックを読むことと、実際に体を動かしてプレーすることは全く別物です。不意打ち英会話という「実戦」に備えるには、知識の蓄積だけでなく、実際に口を動かし、反射神経を鍛える「実践練習」が不可欠なのです。
この対策の偏りは、学習者が「話す」ことへの心理的なハードルの高さや、効果的な練習方法を知らないことなどが背景にあると考えられます。しかし、職場の多国籍化が進む中で、このギャップを埋め、必要最低限のコミュニケーション力を身につけることは、ますます重要な課題となっています。
英語学習者への示唆: サバイバルイングリッシュと実践練習の重要性
調査結果から浮かび上がったのは、多くのビジネスパーソンが、現場で求められる「その場で話す力」と、個人が実施する「暗記中心の対策」との間に大きなギャップを抱えている現実です。このギャップを埋めるために、私たち英語学習者は何を考え、どのように学び方を変えていくべきでしょうか。
「完璧な英語」より「目の前の仕事をやり切る英語」
まず、心構えとして大切なのは、「完璧な英語」よりも「その場を乗り切るための実用的な英語」を優先する姿勢です。調査によれば、多くの「不意打ち英会話」は社内の外国人メンバーとの業務連絡や雑談であり、使われる表現や会話の流れにはある程度のパターンがあります。つまり、全ての英会話をマスターする必要はなく、自分の職場で頻繁に起こるシチュエーションに絞って準備すればよいのです。
目指すべきは、文法や発音の完璧さではなく、仕事を滞りなく進めるための「サバイバルイングリッシュ」です。
例えば、経理部門であれば「請求書の確認をお願いします」「この数字について説明できますか」、総務部門であれば「会議室の予約状況を教えてください」「申請書はこちらに提出してください」といったフレーズが頻出するでしょう。こうした「自分ごと」の会話パターンを先に把握し、練習することが、不安を減らし、実際の場面で役立つ第一歩です。
効果的な学習方法とは?
では、具体的にどのような学習が効果的なのでしょうか。調査で明らかになった「暗記偏重」の対策から一歩進むためには、知識のインプットだけでなく、実際に口を動かすアウトプット練習を意識的に取り入れることが不可欠です。
- 頻出場面と表現を特定する: 自分の部署や役職で起こりそうな「不意打ち英会話」のシチュエーションを想像し、必要な単語や決まり文句をリストアップします。
- 一人でもできるロールプレイ: 想定した場面で、自分が話すべきセリフを声に出して練習します。相手の質問も想定し、Q&Aの形で繰り返し発話練習しましょう。
- 対話練習で感覚を掴む: オンライン英会話などを活用し、講師とともに想定場面をロールプレイします。相手の反応が予想外でも、とっさに返答する「リアルな伝達感覚」を養います。
特に、オンライン英会話サービスを利用した実践練習は、自宅やオフィスから手軽に「不意打ち」の状況を再現できる強力なツールです。講師に「突然、業務の確認をしてきてください」と頼むことで、本番に近い緊張感の中で対応力を磨くことができます。
このような学習ニーズの高まりを受け、調査を実施した株式会社レアジョブでは、2026年9月3日に「サバイバルイングリッシュ」に特化した新プログラムの提供を開始することを発表しました。これは、多忙なビジネスパーソンが遠回りな学習に時間を割かず、現場の課題解決に直結する最低限の対話力を効率的に身につけられることを目指した取り組みです。
「不意打ち英会話」は、もはや一部の専門職だけの課題ではありません。誰もが直面しうる現代のビジネスシーンにおいて、従来の「テストのための英語」から「仕事を進めるための実践英語」へ、学びの焦点をシフトさせる時が来ていると言えるでしょう。
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